- (1)長時間労働の是正に向けて、労働時間短縮や年次有給休暇の完全取得など、労働者の健康・安全およびワーク・ライフ・バランスの確保に向けた施策を推進する。(「雇用・労働政策」より再掲)
①時間外労働の法定割増率を時間外50%、休日労働100%、深夜労働50%に引き上げる。特に、休日労働の割増率は35%から50%以上に早期に引き上げる。
②労働基準法第40条の特例措置(週44時間労働制)は早急に廃止する。
③フルタイム労働者のあるべき労働時間として「年間総実労働時間1,800時間」など、数値目標を示す。
④「ワーク・ライフ・バランス憲章」に盛り込まれた「消費者の一人として、サービスを提供する労働者の働き方に配慮する」との趣旨の周知をはかるなど、深夜化するライフスタイルや長時間労働を是正し、平日のゆとり時間の確保を重視した環境整備を行う。
⑤多くの労働時間規制の適用が除外されている管理監督者については、その定義を法律で明確に定める。なお、管理監督者性の判断基準に関する昭和63年の通達等にもとづく厳格な監督指導は直ちに徹底する。
⑥すべての労働者を対象に「休息時間(勤務間インターバル)規制(原則11時間)」を導入する。
⑦男女ともに限度時間「150時間」を目標として、限度時間「360時間」以内の徹底をはかる。
⑧「自動車の運転の業務」「医師」については、2024年4月より適用される規制水準の実効性確保に向けた周知、施行後の遵守徹底とともに、着実な労働時間縮減に取り組む。その上で、引き続き一般則の速やかな適用に向けた議論を行う。
⑨すべての自動車運転者の長時間労働の是正および安全輸送や公正競争の確保のために、労働環境や賃金体系等が適正なものとなるよう関連法規の周知徹底をはかり、厳格に運用する。
a)長時間労働による過労死等の発生や事故の防止をはかるため、2024年4月より適用される労働時間の上限規制および改正「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(告示)の施行に向けた周知および監督指導を徹底する。また、施行後の告示の運用状況を検証し、最大拘束時間の見直しをはかるとともに、事業者に連続休息期間の確保を義務づける。
b)過当競争や賃金体系における過度な歩合制が低賃金・長時間労働の原因であるため、安全輸送の観点から、いわゆる「オール歩合」「累進歩合」の禁止を法律に明記し、不適切な事業者を排除する制度を構築する。
⑩労働基準法第41条第1号の農業および畜産・水産業従事者に関する労働時間・休憩・休日規制等の適用除外は、労働実態の把握を行い、事業場単位で行われている適用のあり方などについて検討する。
⑪厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」については、改正労働安全衛生規則における労働時間の適正な把握方法と同様に、使用者に求める措置を労働基準法上の義務として法文化する。
⑫時間外労働・休日・深夜労働等の削減に向けて、「所定外労働削減要綱」、「賃金不払残業総合対策要綱」、「労働時間等設定改善指針」の周知徹底をはかる。
⑬公務における超過勤務の実態を把握するとともに、実効性ある超過勤務規制をはかる。
⑭教員にも労働基準法第37条を適用し、長時間労働の是正をはかる。
⑮「医師の働き方改革の推進に関する検討会」の中間とりまとめを踏まえ、地域において医療機関による労働時間短縮の取り組みを推進すべく、医療機関勤務環境評価センターによる評価体制の整備と、医療勤務環境改善支援センターによる相談支援の強化をはかる。また、医師の労働時間の実態把握と、取り組みの改善を定期的に行うとともに、医療を受ける側の国民の理解を得ながら国・都道府県が一体となり、医療現場で働くすべての労働者の長時間労働を是正する。
⑯ICTの進化・普及により生じている、退社後・休日の待機・呼び出しや行動範囲の限定という実態を調査するとともに、このような働き方/働かせ方に対する規制・ルールを検討する。
⑰高度プロフェッショナル制度は、施行後の状況を検証し、対象労働者の働き方や健康確保、対象業務の運用などに問題がみられる場合は、廃止も含めて制度の見直しを行う。
⑱裁量労働制の対象業務拡大は行わない。
⑲企画業務型裁量労働制の導入手続きは、2003年の労働基準法改正前の手続きに戻すことを原則とし、(a)労使委員会の労働者側委員については、過半数労働組合がある場合を除いては、労働者からの信任手続きを必要とし、(b)労使委員会の決議要件は全員一致とする。また、専門業務型にも労使委員会の設置を義務づけた上で、同様の手続きを課す。
⑳裁量労働制の適用後に、本人が希望した場合には一定の予告期間後には通常の労働時間管理への復帰を保障することを明文化する。また、前年度の休暇取得率を踏まえた特別の休日労働規制など、健康・福祉確保措置の最低基準を法律に規定し、複数措置(「事業場における制度的な措置」と「個々の対象労働者に対する措置」より各1つずつ以上)の実施を義務づける。
㉑すべての労働者を対象に「連続勤務日数の規制」の導入を検討する。
㉒長時間労働につながる商慣行の見直しと取引の適正化をはかるため、事業主が取引上必要な配慮をする努力義務を定めた「労働時間等設定改善法」および「労働時間等設定改善指針」の周知徹底をはかる。
- (2)年次有給休暇取得促進に向けた施策を促進する。(「雇用・労働政策」より再掲)
①法定年次有給休暇の最高付与日数を25日に引き上げるとともに、最低付与日数20日に引き上げる。また、6ヶ月の継続勤務要件は廃止する。
②本人・家族の病気・看護休暇、配偶者出産休暇(5日間)などの新設をはかる。
③年次有給休暇の取得促進につながる具体的施策(取得促進に向けた計画などの提出義務の企業への賦課、取得率良好企業の認定制度の創設、ポジティブ・オフ運動の推進など)の展開や、ILO第132号条約を踏まえた長期連続休暇の取得、年間休日確保に向けた施策の整備とその推進をはかる。
④年次有給休暇の取得による不利益取扱いの禁止を労働基準法上明確化する。
⑤国民のゆとり確保の観点から、国民生活などに欠かせない分野を除き、正月三が日、特に「元日」については、特別な日として休業の制度化をはかる。
⑥5月1日を国民の祝日とし、4月29日の「昭和の日」から5月5日の「こどもの日」までを連休とする「太陽と緑の週」を制定する。
- (3)雇用型テレワークについて、使用者が労働関係法令を遵守し、制度が適正に導入・運用されるよう、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」に示されている労働条件の明示、各種労働時間制度の厳格な適用、労働時間の把握・管理、安全衛生管理の徹底、通信費・情報通信機器等の費用負担、労働災害への対応などに関して、周知・徹底をはかる。また、テレワークにおける作業環境整備のため、助成金の支給対象の拡大など支援の拡充を行う。(「雇用・労働政策」より再掲)
- (4)「過労死ゼロ」の実現に向け、実効ある長時間労働是正策とともに、過労死等の事案の企業名公表など、労働者が安心して働けるよう、総合的な過労死等防止対策を講ずる。(「雇用・労働政策」より再掲)
①「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を踏まえ、長時間労働の是正の取り組みやメンタルヘルス対策・ハラスメント対策などを強化し、大綱で設定されている数値目標等の着実な達成をはかる。また、現行の数値目標の達成状況を評価するとともに、「過労死等ゼロ」にむけた取り組みを強力に進めるべく、PDCAサイクルの構築をはかる。
②教員など公務職場における過重労働の実態を早急に把握し、抜本的な過重労働対策を講ずる。 - (5)国は、男女がともに仕事と生活を調和できる環境を整備するため、育児・介護休業法を以下のように改正し、「両立支援法」とする。
①育児・介護休業制度の制度利用による不利益取り扱いの禁止について、周知・徹底をはかる。また、不利益取り扱い禁止の実効性を高めるため、法律に違反した企業について、企業名を公表し、過料などの罰則を課す。
②実労働時間の短縮をはかるため、時間外労働の規制強化(年間150時間)と年次有給休暇取得促進のための措置を講ずる。
③育児・介護休業法第23条にかかる指針において、労使協定により短時間勤務制度の適用を排除できる例として示されている「流れ作業方式による製造業務等」等は削除する。
④介護休業については、その期間を現行の93日から少なくとも1年に延長し、分割回数は制限を設けず、柔軟に対応できる制度とする。
⑤子が3歳以降小学校就学前まで利用できる育児に関する柔軟な働き方を実現するための措置(始業時刻等の変更、テレワーク等、保育施設の設置運営等、養育両立支援休暇の付与、短時間勤務)については、子が中学校就学の始期に達するまで利用できる制度とする。また、介護のための選択的措置義務のうち、短時間勤務制度を単独措置とする。
⑥所定外労働の免除は、対象となる子の年齢を「中学校就学の始期に達するまで」へ引き上げる。
⑦有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件を撤廃する。
⑧深夜業が免除される者の子の対象年齢は、小学校就学の始期に達するまでから「中学校就学の始期に達するまで」へ拡大する。
⑨育児・介護を行う者が請求したとき、休日労働・変形労働を免除する措置を設ける。
⑩介護サービスを利用できない場合や看取り介護を行う場合などは、介護休業期間を延長できる特例を設ける。
⑪育児・介護など、多様な労働者のニーズに応じて、フルタイムの正社員と転換可能な短時間正社員制度の導入が進むよう支援を拡充する。
⑫介護休業中の社会保険料について労働者負担分の掛け金を免除する。
⑬子の看護休暇・介護休暇について、現行の2人以上年10日の日数制限をなくし、子1人につき年5日とする。
⑭国は、仕事と介護の両立支援を強化する観点から、職場における介護に関する従業員からの相談対応や法定および社内の両立支援制度の周知、介護保険制度に関する情報提供を徹底するため、事業主に対して「職業家庭両立推進者」の活用を促進する。
⑮仕事と不妊治療の両立に必要な支援制度を法制化する。
⑯差別救済制度を設け、以下のようにする。
a)政府から独立した雇用平等委員会を設置し、都道府県単位で支部を設置する。
b)救済の対象は、雇用の全ステージおよび賃金等の労働条件に関する性差別(性的指向・性自認に関する差別を含む)、仕事と育児・介護に関する両立支援、パート・有期労働者等の均等・均衡待遇等、その他の労働条件に関する法違反および差別的取り扱いや不利益取り扱いの他、ハラスメントがあるときとする。
c)救済申し立てを理由とする不利益取り扱いを禁止する。
d)格差の合理的根拠を示す証拠およびその裏づけ資料の提出義務は事業主にあるものとする。
e)資料の提出がない場合、あるいは資料の提出があっても合理的根拠が認められない場合には、差別を認定して是正を勧告できるようにする。また、委員会は差別の認定に関して調査する権限を持つものとする。
f)事業主がこの勧告にしたがわない場合は刑罰を科す。
- (6)国は、「雇用均等基本調査」で男女別の育児休業取得期間を毎年調査し、公表する。
- (7)仕事と子育てが両立できる環境整備を促進する。
①次世代育成支援対策推進法について、一般事業主行動計画および特定事業主行動計画の策定を推進するとともに、子育てサポート企業認定(くるみん、プラチナくるみん、トライくるみん)と、不妊治療と仕事との両立に関する認定制度(くるみんプラス認定)の普及・拡大をはかるため、税制優遇の拡充などにより企業に積極的インセンティブを与える。
②次世代育成支援対策推進法にもとづく認定に際しては、基準の適合確認の徹底と厳格化をはかり、認定後において基準に適合しなくなった場合は速やかに認定の取消を行う。
③男性の育児休業取得を促進するとともに、男女が共に育児と仕事を両立しながら、キャリア形成をはかるため、育児休業中の代替要員の確保、職場復帰後のキャリア形成支援などの企業の取り組みを支援する。
- (8)妊娠・出産や育児などを経ながら男女がともに就業継続できる環境の整備に向けて、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法等の周知・徹底とともに、企業における両立支援制度等の充実、働き方の見直しを含めたワーク・ライフ・バランスの取り組みの促進・支援など、施策の拡充をはかる。
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(9)事業主に対し、男女の更年期、生理休暇など、性差に応じた健康課題を点検・把握し、健康支援のための制度の導入を促すとともに、労働者に対するヘルスリテラシー向上に向けた取り組みを支援する。
- (10)マザーズハローワークの拡充、求人開拓、能力開発の促進、保育・介護サービスの拡充など、妊娠・出産・育児、介護などにより退職した女性の再就職を支援する施策を行う。
- (11)ひとり親家庭の経済的自立を支援するため、「母子家庭等就業・自立支援センター」を「ひとり親家庭等就業・自立支援センター」へと名称変更の上、支援事業の拡充、職業能力開発支援など、福祉行政と労働行政の連携を強化し、個々の世帯態様に応じた総合的な施策を行う。
横断的な項目|男女平等政策