1.持続可能で健全な経済の発展|税制改革

2-2-3.政府は、企業の社会的責任に見合った税負担の実現をはかる。

  1. (1)法人税率の引下げを行う場合には、引下げ分が企業における国内投資や雇用・所得の拡大に充てられることおよび代替財源の確保を大前提とする。また、過去に実施済の減税措置の政策効果を検証・公表する。
  2. (2)法人税の租税特別措置等は、政策手段として適切か、不断の見直しをはかる。また、租特透明化法にそって情報公開を行う。公表範囲について拡大する方向で検討する。
  3. (3)多国籍企業への国際課税について、課税対象や最低税率などを定めた「経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対する合意」を踏まえ、多国間条約の批准や国内法(法人税法)の改正などを行う。(注2)
  4. (4)いわゆる「法人成り」の問題等について、課税の適正化に向けた対策を強化する。(注3)
  5. (5)法人事業税については、外形標準課税(付加価値割)の法人事業税全体に占める割合を縮小させる。外形標準課税の適用範囲の拡大、税率、実施時期については、雇用や所得に与える影響および中小企業の業績回復の状況などを見極め、慎重に検討する。中小企業については、雇用安定控除を拡大する。そのうえで、外形標準による課税の考え方を維持しつつ、法人住民税などとの整理・統合を検討する。
  6. (6)欠損金の繰越控除については、現行の控除限度(控除前所得の5割)および控除可能期間(10年)を維持することを基本としつつ、コロナ禍による企業業績の落ち込みによる雇用への影響が長期化する恐れがあることも踏まえ、期間を限定し控除上限を緩和する。
  7. (7)中小企業の支援やディーセント・ワークを後押しする税制改革を行う。

    ①税法や各種制度ごとに異なる中小企業の定義について、対象範囲を拡大する方向で見直す。

    ②中小法人に対する法人税の軽減税率を基本税率の1/2の水準とする。

    ③「人材確保等促進税制」「中小企業向け『賃上げ促進税制』」の適用要件判定などで使用される「給与等支給総額」から、時間外・休日労働による支給額を除外する。

    ④中小企業に対する人材投資促進税制を復活させる。

    ⑤法定雇用率を上回って障がい者を雇用する企業、重度障がい者などを多数雇用している企業、障がい者の雇用促進と職場定着に資する設備投資を行う企業に対して法人事業税を減税する。

    ⑥事業拡大に伴い税制優遇措置の対象外となる場合、一定の猶予期間を設ける。

  1. (注2)2021年10月に「経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対する合意」が140カ国・地域が参加するBEPS(税源浸食と利益移転)包摂的枠組にて実現し、課税対象(全世界売上が200億ユーロ超、かつ、利益率が10%超のグローバル企業)や最低税率(実効税率ベースで15%)などが定められた。今後は合意にもとづき多国間条約の批准や国内法(法人税法)の改正などを行う必要がある。
  2. (注3)いわゆる「法人成り」の問題~個人事業者が所定の手続きを行い、株式会社等の法人に成り代わること。法人化により節税メリットが生じる場合が多いことから、個人事業者との間の課税不均衡の問題が指摘されている。

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