1.持続可能で健全な経済の発展|税制改革

2-2-1.政府は、納税者の理解・関心・納得に資する税制を実現する。

  1. (1)納税者の権利と義務をわかりやすく明示した「納税者権利憲章(仮称)」をつくるとともに、給与所得者に対しても、申告納税制度と年末調整制度との選択を認める。
  2. (2)行政手続きのデジタル化と税・社会保障の連携をはかるべく、マイナポータルを活用した「記入済み申告制度」の普及など、確定申告手続きの簡素化と利便性向上をはかる。
  3. (3)税のもつ意義・目的や主権者たる納税者の権利・義務についての租税教育を充実させ、学校教育の場で広く実施する。
  4. (4)税の使途に関する情報、中央・地方の財務の実態(債務残高など)、審議会や政党(とくに与党)における税制改正にかかわる議論経過の公開など、国民・納税者が税の使途を理解するのに必要な情報の開示を徹底する。
  5. (5)納税者の立場に立ち、裁判所への直接訴訟を認めるなど、不服申し立て制度を見直す。
  6. (6)税務通達を極力法令化するなど、通達行政の不透明性を是正する。
  7. (7)低所得者対策および有事における迅速かつ適切な給付のためのインフラとして、マイナンバー制度の活用により制度設計が可能となる給付付き税額控除を導入する。(注1)
  8. (8)「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」と全自治体での「地方税ポータルシステム(eLTAX)」の一層の普及と利便性向上をはかるとともに、税制上のメリットを与える。
  9. (9)適正な税務執行をはかるため、ICTやAIの活用を進めることで所得把握や徴税業務の効率化をはかるとともに、必要な税務職員の人員数を確保し、その専門能力を高める。
  10. (10)報酬、料金等の支払調書について、本人への交付を義務づける。
  11. (11)公平な納税義務を確保するため、総収入申告義務の強化、脱税等の違反に対する罰則強化など、申告納税の環境を整備する。
  12. (12)各国と租税条約を締結し、租税に関する国際的な情報交換・監視体制を整備し、租税回避を防止するとともに、司法・警察と連携し、マネーロンダリングなどの犯罪撲滅にも役立てる。
  13. (13)デジタル経済における個人間取引やプラットフォームビジネスが進展する中、フリーランス等曖昧な雇用で働く労働者に対するセーフティーネットの提供に向け、マイナンバー制度を活用し、プラットフォーム事業者から税務当局への情報提供制度など、適切な所得把握と課税制度を構築する。
  14. (14)所得捕捉の適正化に向けて、所得捕捉率の実態調査を定期的に実施し、その結果を公表する。
  1. (注1)給付付き税額控除~給付付き税額控除とは、個人所得課税において税額控除を導入し、その控除額が引ききれなかった場合に「負の所得税」を給付する仕組みである。「負の所得税」を給付することで、課税最低限以下の層を含めた所得再分配が可能となる。
  • 「就労支援給付制度」のイメージ
    給与収入55~250万円で社会保険料・雇用保険料を負担している雇用労働者(約2100万人)に対し、社会保険料・雇用保険料(給与の約15.2%)の半額に相当する金額を所得税から控除する。給与収入200万円から徐々に逓減し、250万円で消失する措置もあわせて講じる(対象者約600万人)。必要財源は1.5~2兆円程度を想定。
  • 「消費税還付制度」のイメージ
    合計所得が課税最低限の人(4000万人程度)に対し、扶養者数に応じて、最低限の基礎的消費にかかる消費税負担相当分を定額で給付する。課税最低限の水準から徐々に低減し、消失する措置もあわせて講じる。必要財源は、消費税に換算した場合で税収の1割弱程度を想定。

 

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