- (1)国は、企業年金の原資が賃金の後払いとしての性格を持つ退職給付であることを踏まえ、労使合意の尊重を前提に、長期にわたり確実に給付が保障される企業年金制度を確立する。
①企業年金の運営や重要事項の決定にあたり、労働組合が積極的に関与できるよう条件整備を行う。また、過半数労働組合がない場合を含め、加入者等の意思を尊重した運営がなされるよう、労使合同の委員会の設置など体制の構築を促す。
②すべての制度間の移換が可能となるようポータビリティを拡充する。また、確定給付企業年金(DB)間や、個人型DCからの受換のための基金等の規約の整備を促進する。
③受給権保護の強化をはかるため「企業年金基本法(仮称)」を制定し、企業年金の受給要件、受託者責任、情報開示の明確化、税制措置等に関する包括的な法整備をはかる。将来的には企業年金と退職一時金を包括する退職給付保護制度を確立する。
- (2)国は、企業年金が公的年金の補完機能を確実に果たすことができるよう、中小・零細企業の労働者や短時間・有期等労働者に対する制度の普及促進を抜本的に強化する。
①中小・零細企業に対しては受給権が確立された企業年金の導入にかかる支援を強化する。また、中小企業退職金共済(中退共)制度や総合型DBの普及をはかる。
②短時間・有期等労働者に対する企業年金制度の普及に向け、短時間・有期等労働者に対するモデル年金規約を整備し周知する。
③安定的な退職給付を確保し、企業年金のさらなる普及を促進するため、特別法人税は撤廃する。
- (3)国は、受給権保護の整ったDB制度のさらなる充実をはかる。
①代議員会や加入者による関与を強化するため、「運用の基本方針」の厚生局への届出を法令で義務づける。
②受給権保護のため、積立不足を防止する仕組みと支払保証制度を検討する。
③DBの財政基盤の強化のためリスク対応掛金の普及に向けて周知の強化をはかる。
④国は、DB併用の企業型DCの拠出限度額を「DCの拠出限度額からDBごとの仮想掛金額(掛金相当額)を控除した額」とする見直しが、既存の企業年金の縮小や廃止など労働条件の変更を強いることにならないよう、労使自治を尊重する。
⑤国は、リスク分担型企業年金の規約の承認にあたり、労使合意の内容や経過について審査を厳格に行う。
⑥リスク分担型企業年金について、資産運用に関する意思決定に加入者等の意思を反映させるため、労働組合等が参画する委員会の設置を法令で義務づけるとともに、以下内容の周知・徹底をはかる。
a)DBからリスク分担型企業年金への移行にあたり、運用結果による加入者および受給者の給付減額の可能性について、すべての加入者および受給者へ事前に十分な説明を行う必要があること。また、給付原資が基準ラインを下回る場合においては加入者等の3分の2以上の個別同意(加入者の3分の2以上で組織する労働組合の同意にて代替可能)を要すること。
b)再計算の結果にもとづく給付額への影響の可能性について、加入者および受給者へ説明する必要があること。
c)給付改善等の制度設計に関する新たな労使合意があれば、リスク分担型企業年金掛金額の変更が可能であること。
d)リスク分担型企業年金掛金額の設定にあたっては、労使による十分な議論を踏まえなければならないこと。
e)労働組合等が参画する委員会の設置を通じて、リスク分担型企業年金の運用の基本方針や資産構成割合など、資産運用に関する意思決定に加入者等の意思を反映させる必要があること。
f)給付額の改定に用いる調整率の算出方法や算出根拠となったデータなどを業務概況で周知する必要があること。
⑦企業型DCのマッチング拠出について、企業年金制度は退職給付であって事業主による拠出が基本であることの周知をはかる。また、企業型DCのマッチング拠出を導入している場合は、個人型DCとの違いや選択にあたっての留意点について、事業主による加入者への周知を徹底する。
- (4)国は、DC制度について、DBや企業型DCから個人型DCへの安易な移行を防ぐとともに、企業型DCの制度の充実をはかる。
①労働者の責によらずに生活困窮に陥った場合など明確な制約を設けた上で、運用指図者である場合を含め中途引き出しができるようにする。
②想定利回りや商品構成等について、設定後に定期的な見直しを行う際に、運用商品の利回りや手数料、従業員の運用見直し状況などについてモニタリングし、加入者の意思を尊重させるための労使合同の委員会の設置や労使協議等の定期的な開催と、加入者への情報提供を徹底する。
③運営管理機関の業務撤退や企業再編など、労働者の責によらない事由に伴い発生する資産移管手数料や必要な情報提供、手続きについては、運営管理機関や事業主が責任を持って負担・対処する。
④企業型DCについて、デフォルト商品を含め、商品提供のあり方については労使の判断を尊重しつつ、過度な収益確保に走らないようリスク・リターン特性を十分に検討して決定するよう周知をはかる。また、加入者の納得性を確保する前提で、実効性のある商品除外規定を整備する。
⑤企業型DCについて、事業主が導入時および導入後の継続的な投資教育を行い、その上で加入者本人が納得して商品選択を行うよう指導を強化する。
⑥従業員にDCの掛金として拠出するか、給与・賞与などとして支払われるかを選択させるDC(選択型DC)については、労働条件の不利益変更となること、企業拠出型に比べ公的年金や傷病手当金などの給付額が減額する可能性があることについての事業主による正確な説明の有無、労使協議の経過や内容等について厚生局での確認を徹底する。
⑦企業型DCのマッチング拠出について、企業年金制度は退職給付であって事業主による拠出が基本であるため、事業主拠出を超えない範囲で加入者拠出を認めるという現行の仕組みを維持する。また、企業型DCのマッチング拠出を導入している場合は、個人型DCとの違いや選択にあたっての留意点について、事業主による加入者への周知を徹底する。