東日本大震災から14年が経過したが、食品の風評被害は、被災地産を中心に根強く残る。三菱総研の調査では、「福島県産食品を、他県産と品質・値段に変わりがなければ食べるか」との質問に、家族・子どもが食べる場合は「放射線が気になるのでためらう」とした東京都民は21.0%に及ぶ(図1)。加えて、近隣諸国は輸入規制を継続している。
こうした風評が続く背景には、放射能検査で基準値を超えた食品は出荷されない体制が整えられていることや、処理水はWHOの飲料水基準を満たすまで処理されるといった事実がよく知られていないことがある。政府は、食品の安全証明や販路拡大の支援を徹底するとともに、食品の安全性や処理水に関する科学的で正確な情報の発信を徹底する必要がある。
また、震災から14年が経った今も、避難者数は2.8万人にのぼり(2025年3月現在、復興庁調べ)、精神的負担を抱える人の心のケアが必要である。
福島県の県民健康調査によると、気分障害や不安障害のリスクが高い人の割合は5.8%と、全国平均の3%を上回っており、なかでも16~39歳は10.0%と、特に高い(図2)。福島県で心のケアにあたる専門家は、「子どもの頃に被災した若年層は避難のために転居を繰り返すなど、様々な精神的負担を抱えて成長しており、現在でもケアを必要とする人が多い」と指摘する。
政府と自治体は、若年層を中心に、被災のために心のケアを必要とする人が、今後、中長期にわたって必要な支援を継続的に受けられるよう、心のケアセンターや各自治体の心のケア事業の予算を確保するとともに、体制の維持・拡充をはかる必要がある。
8 東日本大震災からの復興・再生と防災・減災対策の充実
