2025年度重点政策|7 脱炭素社会実現に向けた「公正な移行」の具体化と予算措置

7 脱炭素社会実現に向けた「公正な移行」の具体化と予算措置

GX実現と「公正な移行」の具体化

政府は、2025年2月「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」を改訂し、「GX2040ビジョン(以下、ビジョン)」を閣議決定した。ビジョンはGX実現に向けた投資の予見可能性を高めるため、GX産業立地やGX産業構造などについて方向性を定めるとともに、「公正な移行」については、「新たに生まれる産業への労働移動など必要な取組を進める」としている(図1)。
連合は、GX施策の推進にあたっては、「公正な移行」の実現やS+3Eの確保を念頭に、関係産業や地域の労働組合を含む関係当事者との積極的な社会対話を基本に進め、丁寧な国民合意形成をはかる必要があると考える。あわせて、「公正な移行」を具体化するにあたっては、「グリーンな雇用創出」「失業なき労働移動」と重層的なセーフティネットの検討に早期に着手し、ロードマップの作成と必要な予算措置を求めている(図2)。
特に、地域の経済・雇用を担う中堅・中小企業については、ビジョンにおいて「脱炭素への取組が自社の売上に直結しない、GXを推進する人材・ノウハウや資金が足りていない等の課題から、取組が進みづらい傾向にある」ことが指摘されている。とりわけ中小・零細企業の雇用については、サプライチェーン任せにするのではなく、国の目配りと強力な支援が不可欠である。
また、ビジョンは、「成長志向型カーボンプライシング構想」の制度的措置として排出量取引制度や化石燃料賦課金について定めている。排出量取引制度は運用によってはカーボンリーケージ(*)を引き起こす懸念があるため、既存制度との重複回避や、脱炭素移行にかかるコストを特定の産業だけで負担するのではなく、便益を享受する国民全体で広く負担する必要があることを、国が前面に立って周知に努めていく必要がある。
連合は、今後も具体的方策の検討や実施など脱炭素の動きに応じて、重要なステークホルダーの一員として、排出削減への貢献はもとより対話や意思決定に積極的に参画していく。

* カーボンリーケージ:国内の厳しい排出規制により、①海外から緩い基準で作られた製品が流入すること、②製造拠点が海外に移転することで、国内生産が減少すること

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