第9期介護保険事業計画(2024~2026年度)の介護サービス見込み量等にもとづく推計によると、2040年には約272万人の介護職員が必要とされている。一方で、有効求人倍率は全職業平均1.20倍に対して、介護関係職種は3.24倍(2025年1月時点)と、高い水準で推移しており、依然として介護を担う人材不足が課題となっている。
その要因の一つに、全産業の月平均36.9万円に対し、介護職員は30.0万円と賃金格差があることがあげられている。さらに、医療・福祉の賃金改定額と改定率は全産業と比較しても低い水準であり(25ページ図2)、介護職員等処遇改善加算を取得した事業所における改善状況は、月平均給与額で13,960円(諸手当や賞与・一時金の月換算額を含む)にとどまっている(厚生労働省「2024年度介護従事者処遇状況等調査結果」)。
また、介護職員の年齢構成は、施設等では30~59歳、訪問介護員については40~59歳が多く(図1)、高齢化が進んでいる。特に介護支援専門員(ケアマネジャー)は平均年齢が52.6歳で、介護職員等処遇改善加算の対象サービスからも除外されていることなどの課題もある。
これからの介護ニーズに対応する質の高いサービスを維持するためには、人材の確保が急務である。2024年度の政府補正予算では、常勤の介護職員一人あたり約5.4万円の一時金を支給できる緊急措置などが講じられているものの、決して十分とは言えず、さらなる処遇改善施策を実行する必要がある。
また、人手不足の影響も相まって、業務負担の軽減も課題であり、多くの介護職員が介護ロボットやICT機器等の導入を希望している(図2)。しかし、人員配置の削減を同時に実施した事業所では「負担が増加した」「疲弊した」との声もあり、業務負担軽減とケアの質の向上の観点から、人員配置を削減することなく、ICTやAIなどの新技術の活用促進を支援することが重要である。
6 すべての世代が安心できる社会保障制度の確立
