誰もが住み慣れた地域で安心してくらし続けるためには、患者本位で切れ目のない良質で効率的な医療提供体制を再構築していくことが不可欠である。
2040年頃の医療提供体制に向けた「新たな地域医療構想」の策定にあたっては、急増する高齢者の救急搬送やリハビリ・退院調整・介護との連携など在宅復帰を見据えた医療機能への転換をはじめ、外来・在宅医療を含めた医療機関の機能分化・連携、医療・介護のさらなる連携強化が求められる(図1)。公立・公的か民間かなど設置主体を問わず公平・公正な協議のもとで、すべての医療機関それぞれが果たすべき機能の役割分担について合意形成をはかり、着実に取り組みを推進することが重要である。あわせて、地域間・診療科目間における医師の偏在是正に向けて、地域で不足している医療を担うよう医療機関に要請できる仕組みの創設や、地域ごとに必要な医師数の目安を踏まえた保険医療機関への規制なども検討が必要である。
同時に、将来にわたり安全・安心で質の高い医療を受けられるよう、人材確保に向けてさらなる賃金・労働条件の継続的な改善が欠かせない。2024 年度診療報酬改定では、ベースアップ評価料が新設されるなど、賃上げに重点を置いた改定が行われた。しかし厚生労働省「2024 年賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、医療・福祉分野の2024年改定率は2.5%と、全産業平均4.1%に比べて低い状況である(図2)。すべての医療従事者の処遇改善に向けて、医療機関に対しベースアップ評価料の算定などの取り組み支援を行うとともに、2026年度診療報酬改定などを通じて、さらなる処遇改善が求められる。また、医療現場の労働者が安心して働き続けられる職場環境づくりに向けて、地域医療介護総合確保基金なども活用し、働き方改革や業務負担軽減などもさらに推し進めていくことが重要である。
6 すべての世代が安心できる社会保障制度の確立
