2025年度重点政策|4 雇用の安定と公正労働条件の確保

4 雇用の安定と公正労働条件の確保

希望するすべての者の能力開発機会の確保と「能力開発と処遇改善の好循環」の実現を

政府は、成長と分配の好循環に向けた「人への投資」の一環として、リスキリングなどの能力開発を強化する取り組みを進めている。
しかし、厚生労働省の能力開発基本調査によると、OJTやOFF-JTを実施した事業所割合を経年で見ても、10年以上前からほぼ横ばいとなっており、正社員以外に対して実施した事業所割合はむしろ低下している。令和5年度では、正社員以外に実施した事業所割合は正社員に実施した事業所割合と比べて、半数から3分の1程度の割合にとどまっている(図1)。また、労働者の能力開発を処遇改善に反映させている事業所割合は合計約7割となっているが、正社員・正社員以外の両方に反映させている事業所は約4割にとどまる。
労働者が社会変化に適切に対応し、雇用の安定やキャリアの向上をはかるためには、希望するすべての者に公平に能力開発機会を確保することに加え、能力開発が処遇向上につながる「能力開発と処遇改善の好循環」を実現していくことが重要である。
また、前述の令和5年度調査によると、8割の事業所が人材育成に関して何らかの問題があるとしており、その内訳は、「指導する人材が不足している」「人材育成を行う時間がない」などが上位にあがる(図2)。企業に対しては、財政的支援の拡充だけでなく、指導人材の育成やノウハウの提供などの支援が求められる。
加えて、労働者個々人が能力開発を行うにはそのための時間が確保される必要があるが、令和5年度調査によれば、教育訓練休暇制度等を利用したことがある人は2%にも満たない。こうした教育訓練休暇等の付与とともに、長時間労働の是正など、労働者が能力開発に取り組みやすい環境整備が重要である。
希望するすべての労働者の能力開発機会の確保とその後の処遇改善を実現するためにも、政府による労働者個人への直接支援の拡充だけでなく、雇用する企業の責任による取り組みを促していくことが必要である。

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