2025年度重点政策|4 雇用の安定と公正労働条件の確保

4 雇用の安定と公正労働条件の確保

外国人労働者の権利保護と共生社会の実現に向けた環境整備を

2024年6月14日、技能実習制度を労働者保護強化などの観点から見直した育成就労制度の創設と、特定技能制度の適正化を主な内容とする「入管難民法及び技能実習法改正法」が成立した。改正法の施行に向け、政府は労使などが参画する「有識者会議」などを設置し、基本方針の策定や政省令の整備などを進めているが、悪質な法令違反や人権侵害を根絶するとともに、外国人労働者の安易な受け入れ手段にしてはならないという決意のもと、十分な準備・対策を講じることが重要だ。特に、産業分野ごとの人手不足の状況や賃金水準の動向といった受け入れの必要性を判断するための基礎データの充実化や、外国人労働者の支援などを担う外国人育成就労機構の抜本的な体制強化と十分な予算確保は重要である。加えて、外国人労働者の能力向上に伴う適正な待遇確保も不可欠だ。内閣府によれば、日本人労働者の賃金水準に比して、「特定技能」では約8割、「技能実習」では約7割の水準にとどまっていることから(図1)、習得した技能の見える化を含めて適正な処遇が担保される方策を講じるべきである。
改正法の施行は、公布から3年以内とされている。その間は技能実習制度による受け入れが続くが、法令違反の状況は依然高止まりし、直近では微増傾向にもある(図2)。制度の適正な運用確保のため、実習実施者や監理団体への監督指導を強化するとともに、労働法などの理解促進をはかるべきである。
また、外国人労働者は日本で暮らす「生活者」でもあり、そうした観点からの支援の充実も必要だ。特に、生活のみならず仕事の場面でも日本語によるコミュニケーションは不可欠であるため、日本語教育を強化することは重要である。日本語教育だけでなく社会保障や公共サービス、多文化理解なども含め共生社会の実現に向けた環境整備を、受け入れ企業は当然のことながら、国や自治体などが一体となって推進していくことが求められる。

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