人口減少と高齢化が進行する中、働く人が介護を理由に離職することのないよう、処遇改善を通じて、将来にわたり介護サービスを担う人材の確保が不可欠である。2024年度介護報酬改定では、「介護職員の処遇改善分」として+0.98%、「賃上げ税制を活用しつつ、介護職員以外の処遇改善を実現できる水準」として+0.61%の改定率とされた。処遇改善に関係する加算が一本化されるなど事務負担の軽減策も講じられた。
しかし、居宅介護支援などが加算対象外とされたことは問題であり、他産業との賃金格差を踏まえると、すべての介護労働者の継続的な処遇改善のため、さらなる施策を実行すべきである(図1)。同時に、国としても事業所に加算取得支援を行い、煩雑な事務作業などを理由とする加算取得控えが今後生じないようにすることが求められる。
また、介護サービス事業所の人手不足は深刻さを増しており、とりわけ訪問介護員ではそれが顕著となっている(図2)。処遇改善を通じて人材を確保し、在宅ケアを支えるサービスの充実が求められる状況下、2024年度改定では訪問介護の基本報酬が引き下げられた。介護職員等処遇改善加算では他サービスに比べ最も高い24.5%の加算率とされたものの、報酬の大きな割合を占める基本報酬の引き下げにより、住み慣れた地域でのくらしを支える訪問介護サービスの事業継続が危ぶまれる。
介護離職のない社会の実現に向けて、国は施行後の状況を注視するとともに、加算取得と処遇改善への支援や、地域の在宅ケアに影響が生じた場合には直ちに必要な対策を講じるなど、介護を必要とする人が今後も質の高いサービスを利用できるようにすべきである。
6 すべての世代が安心できる社会保障制度の確立
