誰もが住み慣れた地域で安心してくらし続けるためには、患者・利用者本位で切れ目のない良質で効率的な医療提供体制の構築が欠かせない。人口減少・超少子高齢化が地域ごとに異なった態様やスピードで進行している中、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年に向けて、医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとに推計された「地域医療構想」にもとづく医療機関の機能分化・連携強化をはかる取り組みが進められてきた。しかし、コロナ禍で医療提供体制のひっ迫など課題が顕在化した中、感染症のまん延下でも医療の質を低下させず、安心して医療を受けられるよう、公立・公的か民間かを問わずあらゆる設置主体の医療機関が参画するもとで、外来も含め「地域医療構想」の再検討が求められる。医療機能別病床数の推移(図1)を踏まえ、2024年4月から開始の都道府県医療計画(第8次)にもとづき、機能分化・連携強化が推進されるよう、引き続き注視する必要がある。
同時に、将来にわたり安心・安全で質の高い医療を受けられるようにするためには、人材確保に向けてさらなる賃金・労働条件の継続的な改善が欠かせない。2024年度診療報酬改定では、診療報酬全体の改定率+0.88%のうち0.61%は「看護職員や病院薬剤師などの処遇改善」対応分として評価料が新設された。また0.28%は「40歳未満の勤務医師・勤務薬剤師、事務職員等の賃上げに資する措置分」とされ、入院基本料などが引き上げられた(図2)。これらがすべての医療従事者の処遇改善につながるよう医療機関への取り組み支援はもちろんのこと、働き方改革や業務負担軽減などにより、医療現場の労働者が安心して働き続けられる職場環境づくりに向けて、さらなる施策が求められる。
介護離職のない社会の実現へ、訪問介護など在宅ケアの充実と介護人材の処遇改善を
人口減少と高齢化が進行する中、働く人が介護を理由に離職することのないよう、処遇改善を通じて、将来にわたり介護サービスを担う人材の確保が不可欠である。2024年度介護報酬改定では、「介護職員の処遇改善分」として+0.98%、「賃上げ税制を活用しつつ、介護職員以外の処遇改善を実現できる水準」として+0.61%の改定率とされた。処遇改善に関係する加算が一本化されるなど事務負担の軽減策も講じられた。
しかし、居宅介護支援などが加算対象外とされたことは問題であり、他産業との賃金格差を踏まえると、すべての介護労働者の継続的な処遇改善のため、さらなる施策を実行すべきである(図1)。同時に、国としても事業所に加算取得支援を行い、煩雑な事務作業などを理由とする加算取得控えが今後生じないようにすることが求められる。
また、介護サービス事業所の人手不足は深刻さを増しており、とりわけ訪問介護員ではそれが顕著となっている(図2)。処遇改善を通じて人材を確保し、在宅ケアを支えるサービスの充実が求められる状況下、2024年度改定では訪問介護の基本報酬が引き下げられた。介護職員等処遇改善加算では他サービスに比べ最も高い24.5%の加算率とされたものの、報酬の大きな割合を占める基本報酬の引き下げにより、住み慣れた地域でのくらしを支える訪問介護サービスの事業継続が危ぶまれる。
介護離職のない社会の実現に向けて、国は施行後の状況を注視するとともに、加算取得と処遇改善への支援や、地域の在宅ケアに影響が生じた場合には直ちに必要な対策を講じるなど、介護を必要とする人が今後も質の高いサービスを利用できるようにすべきである。