2024年度重点政策|4 雇用の安定と公正労働条件の確保

4 雇用の安定と公正労働条件の確保

ILO第190号条約の批准に向けたあらゆる差別・ハラスメントの根絶

 厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」(2020年)によると、過去3年間でハラスメントを経験した人の割合は、パワハラが31.4%、次いで「顧客等からの著しい迷惑行為」、いわゆるカスハラが15.0%、セクハラが10.2%となっている(図1)。2021年6月に発効した「仕事の世界における暴力およびハラスメントの撤廃に関する条約」(以下、ILO第190号条約)は、批准国に対してあらゆる暴力・ハラスメントの法的な禁止を求めている。日本は本条約の採択に賛成はしたものの、未だに批准していない。
 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案の成立に際して、衆参両院の厚生労働委員会において「条約成立後は批准に向けて検討を行うこと」との附帯決議が附された。附帯決議を踏まえ、厚労省は、2024年2月に「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」を設置し、法的に整備がされていないカスハラを含む「ハラスメントの現状と対応の方向性」などについて議論を行っている。
 連合が実施した「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」によると、カスハラを受けたことによる生活上の変化として、「出勤が憂鬱になった」、「心身に不調をきたした」、「仕事をやめた・変えた」などが挙げられており、カスハラは受けた人の生活に影響を及ぼしている(図2)。
 カスハラの問題が深刻化しているとして東京都や北海道がカスハラ防止条例の制定に向けて検討を行っている。政府はこうした国内の機運の高まりを踏まえ、あらゆるハラスメントの根絶に向けて、ハラスメント行為そのものを禁止する規定を創設し、ILO第190号条約の批准につなげるべきである。
 なお、2023年6月に成立・施行された「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」はあくまで理解増進のための法律に過ぎない。性的指向・性自認(SOGI)に関する差別・偏見をなくし、すべての人の対等・平等、人権の尊重のために、性的指向・性自認に関する差別を禁止する法律を制定することが必要である。

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