フリーランスはいまや209万人※にものぼり、急速な広がりを見せる中、報酬の支払いや契約条件の明示、ハラスメントといった発注事業者との取引上のトラブルも顕在化している。
こうした状況を踏まえ、フリーランスと発注事業者間の取引の適正化および就業環境の整備を柱とする、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス新法」)が2023年4月28日に成立した(図1)。今後、法の実効性を高めるためには、発注事業者をはじめ関係者が法令の内容を十分に理解し、適正な運用が確保されることが重要である。加えて、フリーランス新法には盛り込まれなかった仲介事業者への業規制や最低報酬の設定などの法整備についても検討を進めることが必要である。
また、建設アスベスト訴訟最高裁判決においては、事業者が危険有害作業を個人事業者に請け負わせる場合には労働者と同様に保護する旨判示された。2023年4月からの労働災害防止計画では、最高裁判決や個人事業者の業務上災害が相当数あることなどを踏まえ、「個人事業者等に対する安全衛生対策の推進」を重点事項に位置づけた(図2)。
2024年4月に、個人事業者等の健康管理に関するガイドラインが制定されるなど、個人事業者に対する災害防止の取り組みは緒に就いたばかりである。今後、個人事業者の災害を抜本的に減らしていくには、災害報告制度の構築を含め、個人事業者が安心して就業できるよう法整備を進めることが不可欠である。
一方、働き方が多様化する中、「労働者」概念の見直し・拡充は喫緊の課題であり、早急に着手する必要がある。
※「令和4年就業構造基本調査」より総務省統計局調べ。有業者のうち本業がフリーランスの数