2023年10月末時点の外国人労働者数は約205万人と過去最高を記録(図1)し、いまや外国人労働者はともに「日本を支える」仲間である。しかし、外国人労働者に対する労働法令違反や人権侵害等の問題は後を絶たず、特に技能実習制度では、監督指導を行った実習実施者のうち7割で法令違反(図2)が認められている。
そうした中、政府は、技能実習制度に代わる新たな育成就労制度の創設と特定技能制度の見直しに関する改正法案(2024年3月15日閣議決定)を国会に提出した。法案には、新たな外国人育成就労機構の機能・体制強化などが盛り込まれた一方、受入れ分野の設定基準など、制度の適正化に重要な点が曖昧となっている。育成就労制度の受入れ分野について、法案では現行の技能実習制度より幅広い特定技能制度の分野に合わせつつ、その中で設定すると示されている。特定技能制度の分野は「即戦力」人材の受入れを前提に設定されていることを考えれば、育成就労制度の分野設定にあたっては、労働者の人材育成と安全の確保という観点から、厳格に設定することが不可欠である。また、特定技能制度でも賃金の未払いや強制帰国などの問題が顕在化している。登録支援機関などの要件厳格化や、技能や知識を測るための試験内容の適正化などの見直しが不可欠である。加えて、現行制度では政府が受入れ分野や人数、人材基準などを決定するが、その検討プロセスは不透明で問題がある。育成就労制度を含め、労使などが参画する会議体を設け、公の場での議論を通じて決定する仕組みの整備も必要である。今回の見直しを「看板の掛け替え」に終わらせることなく、外国人労働者の権利が守られ、安心して働くことのできる制度に、着実に適正化をはからなくてはならない。
4 雇用の安定と公正労働条件の確保
