コロナ禍を契機としてわが国のセーフティネットのぜい弱性が改めて浮き彫りとなり、さらには物価上昇に賃上げが追い付かない状況が続く中で、低所得者など真に支援を必要とする層への迅速かつ適切な支援の必要性が一層高まっている。
連合は、効果的・効率的な低所得者への支援策として、マイナンバーを活用した「給付付き税額控除」の仕組みを構築し、その具体的な制度として「就労支援給付制度」と「消費税還付制度」を導入すべきだと考える。「就労支援給付制度」とは、社会保険料・雇用保険料(労働者負担分)の半額相当分を所得税から控除し、控除できない部分は還付する仕組みである(図1)。この制度によって、低所得被雇用者の税負担のみならず、保険料負担の軽減も可能となる。加えて、いわゆる「年収の壁」問題の解消にも一定の効果が見込まれる。
「消費税還付制度」とは、飲食料品や光熱費など基礎的消費にかかる消費税負担相当分を給付する、つまり「税をバックする」仕組みである(図2)。消費税には、低所得者ほど負担割合が高くなる「逆進性」という課題がある。加えて、2019 年の消費税率引き上げと同時に導入された軽減税率制度には、高所得者ほど恩恵を受ける構造であることや、対象範囲が曖昧であることなど多くの問題がある。
なお、「給付付き税額控除」の仕組みを実現するには、マイナンバーによる正確な所得捕捉が欠かせない。英米などではすでに導入事例があり、正確な所得捕捉と必要な給付の連携が、困窮に直面する人々に対するセーフティネットの提供に資することは明らかである。マイナンバー制度の理解促進とあわせて、「給付付き税額控除」の導入に向けた議論を早期に進めるべきである。
2 「公平・連帯・納得」の税制改革の実現


