DXやGXの進展は、新たな産業価値の創造や持続可能な社会の実現につながることが期待される。2023年5月にはGX推進法が成立し、カーボンニュートラルの実現に向けた動きは今後加速していくこととなる。一方で、DXやGXは産業構造や労働市場へ広範囲にわたり影響を及ぼすことが想定され、労働需給の変化による雇用喪失や大規模な労働移動などが懸念される。こうした産業構造の大きな転換においては、雇用など社会・経済への負の影響を最小限にとどめる「公正な移行」を実現する必要がある。政府には、その実現に向けて具体的な対応策を検討するための政労使を含む関係当事者が参画する枠組みを早急に構築し、社会対話を促進することが求められる。
また、産業構造の変化に対応するためには、人的投資、設備投資、研究開発などが不可欠である。特に人的投資の重要性が一層高まる中、働く者の学び直しや職業能力開発は企業が主体となり取り組むべきであるが、企業の教育訓練費は減少の一途をたどっており、先進諸国と比較して非常に低い水準にある(図2、3)。
企業においては、人材育成やシステムの導入・運用などデジタル化に対応するためのコストが増大しており、デジタル化に対応できる企業とそうでない企業のデジタル環境の格差はさらに拡大しかねない。政府には、経営基盤の弱い中小企業や立場の弱い労働者が産業構造の変化に取り残されないよう、雇用形態や企業規模にかかわらず、変化に対応した働く者の学び直しや企業の職業能力開発に対する支援の強化が求められる。
1 デジタル社会インフラの整備促進と産業構造の変化への対応および中小企業への支援強化

