1.はじめに 2.今後の復興・再生に向けた政策の柱

1.はじめに

(1)復興・再生の進捗状況

 東日本大震災から8 年あまりが経過した。国は、「東日本大震災からの復興の基本方針」(2011年7 月)において復興期間を10 年間と定め、復興需要の高まる当初5 年間を「集中復興期間」、2016 年度からの後半5 年間は、被災地の自立につなげる「復興・創生期間」とし、取り組みを進めている。また、復興財源については、復興特別所得税等により広く国民全体の負担を求める中で、補正予算の編成や復興特別会計の創設を通じて財源確保を行いつつ、その規模も「集中復興期間」の5 年間で19 兆円程度から25.5 兆円程度まで拡大した上で、10 年間の復興財源を32 兆円(うち「復興・創生期間」は6.5 兆円程度)と見込み、復旧・復興の加速に向けて取り組んできた。
 被災地においては、災害廃棄物処理の完了(帰還困難区域除く)はもとより、基幹インフラの本格復旧が進み、公営住宅の建設は2019 年度に完了する見込みである。一方、最大47 万人にのぼった避難生活者は、減少はしているものの、いまだに4.8 万人(2019 年4 月時点)の被災者が避難生活を余儀なくされている。また、被災地における雇用者数は、震災後の緊急雇用創出事業等の実施や復興需要等による有効求人数の増加により震災前の水準まで回復しているが、その一方で、沿岸部を中心に雇用のミスマッチなどの課題が生じている。
 福島においては、原子力災害の影響が復興の大きな足かせとなってきたが、除染の進捗により、帰還困難区域を除くほとんどの地域で避難指示が解除され、帰還困難区域についても「特定復興再生拠点区域」として6 つの町村が再生計画を認定されるなど、本格的な復興に向けた取り組みが進みつつある。一方で、住民の帰還が十分に進まないことなど、いまだに復興・再生への課題は山積している。
 今後もとぎれのない震災復興をはかるべく、政策面・財政面における国の強力なバックアップと、「復興・創生期間」終了後の復興財源や、2020 年度末の復興庁廃止後に設置することが示された後継組織のあり方などについて、早急かつ具体的な検討が求められる。

(2)産業・雇用の復興・再生に求められるもの

 被災地では、時間の経過とともに被災者のニーズは多様になり、課題も変化している。住まいとまちの復興・再生においては、住宅再建が着実に進捗し、自主再建も進んでいる。その一方で、避難が長期化する中、要介護者の重度化や孤立死の増加が懸念されるなど、避難先における対応を含めコミュニティ形成への支援、住宅・生活再建に関する相談支援体制の整備等、医療・介護・福祉サービスなどの充実・強化が求められる。
 産業の復興・再生については、「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」等を通じて、地域経済の核となる中小企業の再建・復興を支援する取り組みが行われてきた。津波で被災した農地や漁港は約9 割が機能を回復しているが、水産加工業においては震災により失われた販路確保等の課題が依然存在するなど、売上げの回復は道半ばである。また、インバウンドを中心とした観光振興に向け、政府が主体となった広報活動の推進など風評被害等の払拭への取り組みが引き続き求められる。
 雇用の面についてみると、被災3 県の有効求人倍率は1.5 倍前後の水準で推移しているが、沿岸部の一部では、有効求人倍率は高いものの人口減少の影響や復興・復旧の遅れなどにより、雇用者数が震災前の水準まで回復していない地域や産業もあり、長期安定的な雇用の創出に向けた支援が引き続き必要である。
 また、医療・介護は復興に欠くことのできない生活基盤の1つであり、被災地へ医療・介護人材を派遣する取り組みが継続されているが、とくに福島県沿岸部ではぎりぎりの人員体制でサービスを提供している実態があり、人材確保対策の継続・強化が必要である。さらに、持続可能な地域づくりの観点では、震災以前から存在する人口減少・超少子高齢化の進行への対応も欠かすことができない課題である。この間の復興の遅れから若年ファミリー層が転出し、高齢化に一層拍車をかけているとの報告もある中、子ども・子育て支援にとどまらず、若年雇用の創出など、取り組むべき課題の重要性は高い。

(3)福島の復興状況とさらなる取り組みの必要性

 福島県は、福島第一原子力発電所事故により深刻な被害を受け、現在もその影響が復興の大きな足かせとなっている。この間、国は、避難指示解除区域への帰還に向けた避難者への生活支援等の総合的な対策を講ずるとともに、「福島再生加速化交付金」を新設し、長期避難者の生活支援から、早期帰還のための生活拠点形成などまで一括で支援する体制を整えた。しかしながら、小売店などの日常を支える生活インフラが十分に整っていないことなどから、住民の帰還は十分に進んでいないのが現状である。
 産業の再生・活性化に向けては、福島相双復興官民合同チームによる個別訪問を通じたきめ細やかな支援が実施されている。また、原子力災害による風評被害対策として「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」が策定され、多方面への情報発信により、被災地産品の利用促進や観光業の促進に向けた取り組みが進められている。しかしながら、風評被害は国内外に根強く残っており、また、原材料の調達や流通のサプライチェーンがまだ完全な状態ではないことなどから、生産が本格軌道に乗り切れていない産業も存在する。
 福島に住む人々が将来にわたって安心・安全に生活を営むことができるよう、帰還に向けた各種環境整備や生活再建・自立に向けた支援に引き続き取り組むとともに、風評被害の払拭や産業の再生・活性化、モニタリングポスト周辺や生活する家屋周辺での放射線線量に関する情報提供や定期的な健康診断など、多岐にわたる課題に的確に対応していく必要がある。

(4)震災からの復興・再生はわが国の最重要課題

 連合は、東日本大震災からの復興・再生をわが国の最重要課題と位置づけ、2011 年からの8年間、様々な機会を通じて取り組みを進めるとともに、政府、関係機関への要請を行ってきた。今後も同様の認識のもとで、連合本部、構成組織、地方連合会が一体となって震災からの復興・再生に取り組んでいく。

2.今後の復興再生に向けた政策の柱

 引き続き、東日本大震災からの復興・再生をわが国の最重要課題と認識する中、被災者の生活再建、被災地の産業再生と雇用創出の取り組みを一層強化するとともに、福島における除染実施後のフォローアップを含めた環境の回復と安心・安全のまちづくりを加速する必要がある。また、女性、障がい者、高齢者等、生活者の多様な意見を反映させた防災・復興は欠かせない。そのために、以下の6 項目を柱に東日本大震災からの復興・再生の着実な推進をはかる。

  1. 復興財源の確保および被災自治体への継続的支援
  2. 被災地域の雇用のミスマッチ解消につながる職業訓練の充実と雇用の確保、復興事業における労働安全衛生対策の強化
  3. 防災性が高く、社会保障サービスの提供体制が確保された「ひとが中心のまちづくり」の実現
  4. 放射性物質により汚染された廃棄物・表土の迅速な処理と除染実施後のフォローアップ
  5. 放射性物質の影響が懸念される地域・産地で生産された農水産物・加工食品に関する安心・安全の確保
  6. 安心して学び遊べる教育環境の整備

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