政府は「成長と分配の好循環」に向け、人への投資の一環としてリスキリングを含む能力開発を推進している。
しかし、厚生労働省の能力開発基本調査によると、OJTやOFF-JTを実施した事業所割合は10年以上前からほぼ横ばいで推移している。また、正社員以外への実施割合は、正社員の半数以下にとどまるほか、従業員規模が小さい企業ほど実施割合が低いなど、雇用形態や企業規模によって能力開発機会に差がある(図1)。
社会変化に適切に対応し、労働者の雇用の安定やキャリアの向上を図るためには、非正規雇用で働く者を含め、希望するすべての者に公平に能力開発機会を提供するとともに、能力開発の成果を適切に評価し、処遇改善につなげる仕組みの整備が求められる。
JILPTの調査(2025年)によれば、労働者が能力向上に取り組む上での課題として、教育訓練のための時間確保や費用負担のほか、企業に人材育成の方針がないことや、従業員に必要な能力が十分に示されていないことなどがあげられている(図2)。労働者が能力開発に意欲的に取り組むためにも、人材育成方針の明確化とともに、能力開発のための時間確保に向けた環境整備が求められる。とりわけ中小企業に対しては、助成金の活用促進等の財政支援の拡充や、ノウハウの提供や相談援助機能の強化、制度の周知徹底を図ることが重要である。
こうした課題も踏まえ、就職氷河期世代への支援については、①就労・処遇改善、②社会参加、③高齢期を見据えた支援の三本柱からなる新たなプログラムに沿い、2026年度から約3年間集中的に取り組む方向性が示されている。各世代のニーズに応じ、すべての世代で良質な雇用を実現するためには、職業訓練や就職支援に加え、職場定着への支援が重要であり、伴走型支援を行うハローワークなどの支援機関の強化が求められる。
