5.くらしの安心・安全の構築|環境政策

2-17-8.化学物質対策を強化し、環境への影響を最小化する。

  1. (1)国は、国民の健康や環境を守るという視点から、「持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)」の2020年目標であったSAICM(国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ)後の新たな国内実施計画(ポストSAICM)を進めるとともに、SDGsの目標にもとづき、製造・使用から廃棄に至るまでの化学物質のライフサイクル全体を通じたリスクの低減を促進しつつ、廃棄物を含む化学物質の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
  2. (2)国は、化学物質の安全性に対する国民の不安への対処や、リスク評価・管理における取り組みのさらなる連携・強化をはかる。また、QSAR(Quantitative Structure Activity  Relationship:構造活性相関)やカテゴリーアプローチなどの非動物試験による推計手法の精度の向上および適用場面の拡大、利用に耐える非GLP(non Good Laboratory Practice:優良試験所基準に適合しない)データの活用に加え、現行法の運用では拾いきれないリスクについても、適切評価する方法について検討を行う。
  3. (3)国・地方自治体は、災害などの異常事態の発生の際に、企業の保有する化学物質による健康被害・環境被害低減と消火・救援活動が円滑に実施できるよう、化学物質の保管に関する法令・条例の順守に加え、災害対策の観点から保有する化学物質の有害性や物理化学的特性を労働者や取引先へ周知させる。また、事業場の規模に関係なく立地や建屋構造などの環境的要因を加味した対策マニュアルの作成を促進する。
  4. (4)国は、「公害健康被害補償法」などの補償制度を見直すとともに、公害に関する苦情・紛争の円滑な解消を進める。また、環境・健康への複合的な影響を調査し、新たな認定と救済の制度を確立する。
  5. (5)国・地方自治体は、複雑な化学物質に関する法律・制度を解りやすく周知・広報するとともに、化学物質の許容摂取量以下(低用量)の長期ばく露影響や、環境における低濃度複合ばく露影響、製品中に混在する構成成分の間で発生しうる相互作用や相加性などの調査・研究体制を充実させ、化学物質の複雑なシナリオのリスクについても、感受性が高い集団への対応を強化する。
  6. (6)国・地方自治体は、化学物質の生態系への影響に着目した管理・審査体制を強化する。また、生態毒性試験の信頼性向上の観点から、慢性毒性値の標本数を引き上げるとともに、特に感受性が高いと考えられる試験生物を複数選定する。
  7. (7)国・地方自治体は、狩猟の装弾(散弾)や釣りの錘などへの鉛の使用について、周辺環境への影響を軽減するために、代替物質への転換を促進するとともに、必要な支援を行う。
  8. (8)国は、有害とされた化学物質の代替にあたり、代替前の物質と代替後の物質の総合的なリスク比較を行うとともに、易分解性物質の環境影響評価手法を構築し、有害な化学物質の代替とされた物質についても、分解過程および分解中間物質の有害性の有無を解明する。
  9. (9)国は、水銀の供給・使用、排出・廃棄を地球規模での規制、市場取引量削減や環境への排出削減に貢献する。特に、「水銀に関する水俣条約」発効後に発足した締約国会議(COP)において、主導的な役割を果たす。また、退蔵品対策とともに、これまで有価で取引されていた水銀の回収に対するインセンティブの低下が、違法投棄につながらないよう必要な対策を行う。
  10. (10)国は、ナノ粒子の計測技術、安全性試験法、ばく露低減機器や環境への流出抑制、排出シナリオや環境中挙動モデル・体内動態モデル構築などの研究・開発を促進するとともに、健康影響・環境影響の調査を強化する。また、ナノ粒子のリスク評価を化学物質のリスク管理の中に体系的に組み込むとともに、化学物質以外のリスクも考慮して規制や自主管理を行う。
  11. (11)国・地方自治体は、化学物質の管理・取り扱いを行う専門性の高い人材を計画的に育成する。

 

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