2024年度重点政策|4 雇用の安定と公正労働条件の確保

4 雇用の安定と公正労働条件の確保

雇用形態や企業規模によらない、公平な能力開発の機会を

政府は、成長と分配の好循環に向けた「人への投資」の一環として、在職者へのリスキリングなどの能力開発を強化する取り組みを進めている。
しかし、厚生労働省の能力開発基本調査(令和4年度)によると、雇用形態や企業規模によって能力開発機会に差があることが示されている。「正社員以外」に対するOJTやOFF-JTの実施率・受講率は、「正社員」と比べ半数以下にとどまっている。また、企業規模別で見ると、従業員数が少ない企業ほど、能力開発機会は少なくなっている(図1、2)。
DX化などの社会変化に適切に対応していくには、能力開発を希望する者すべてに対して、公平に機会を提供することが重要である。正社員のみならず、非正規雇用で働く者に対しても、労働者個人への直接支援の拡充だけでなく、雇用する企業の責任による主体的な取り組みを一層促すことが求められる。
また、労働者が能力開発にもとづき、成果を発揮していくためには、企業が人材ビジョンを明確化し、従業員へ共有することが大前提となる。しかし、JILPTが実施した労働者調査によれば、能力を高めるうえでの課題として、「時間確保の難しさ」や「必要な能力を会社が考えていない・明示していない」、「人材育成に関する方針がない」ことが上位にあがっており、能力開発に関する時間の確保と企業による育成方針等の明示・明確化は喫緊の課題である(図3)。
JILPT が実施した企業調査においては、人材育成の課題について、「指導人材の不足」、「人材育成の方法がわからない」といった回答も一定数あり、特に中小企業においてこれらの課題が顕著となっている。中小企業に対しては、助成金の活用促進や拡充などの財政的支援とあわせて、指導人材の育成やノウハウの提供、相談援助機能の強化など、能力開発全体の底上げに資する政策を強力に推進する必要がある。

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