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雇用の安定と公正労働条件の確保
- ○外国人技能実習制度に代わる「育成就労制度」および特定技能制度の実効性確保に向けては、制度所管省庁および業所管省庁において十分な予算を確保し、外国人労働者の適正な受入れに関する指導・監督を強化する。また、特定産業分野における人手不足の状況や賃金水準の動向、日本人の就業率等についての調査および統計整備や、評価試験の適正化などを行い、安易な受入れ拡大は認めない。
- ○雇用労働に近い働き方をしているにもかかわらず労働法の保護を受けることができない者について、フリーランス新法にもとづく契約ルールの適正化やハラスメント防止などの実効性を確保するとともに、最低報酬の設定、仲介業者に対する法規制など法的保護の実現をはかる。あわせて、労働者と類似の作業に従事する個人事業者等に対して労働者と同様の安全衛生水準を確保する。また、早急に「労働者概念」の見直し・拡大に着手する。
- ○不当な解雇を拡大しかねない解雇の金銭解決制度は導入しない。
- ○「就職氷河期世代」の良質な雇用・就労機会の実現に向け、当事者の個別の事情や希望を踏まえつつ、将来を見据えた中長期的な能力開発を実施し、適切な就職支援・定着支援を行う。また、そのために、ハローワークなどの支援機関の相談体制の強化をはかる。
- ○担保法制の見直しに際し、労働債権および労働者保護を確実にはかるため、ILO第173 号条約(労働債権の保護)の趣旨を踏まえ、担保権より労働債権を優先させる制度を新たに創設する。また、事業譲渡、合併など、あらゆる事業再編において、労働組合などへの事前の情報提供・協議を義務づけるなど、労働者保護をはかるための法制化を行う。
- ○今後の雇用失業情勢の変動などに対応し得るよう、雇用調整助成金などに必要な予算措置を講じるとともに、労働保険特別会計への一般会計からの機動的な繰り入れなどを通じて財政の安定化をはかる。また、雇用保険制度の国庫負担割合の引き上げとともに、雇用の維持・安定など雇用保険が本来果たすべき機能を強化する。
- ○地域における産業・雇用を維持する観点から、国・地方自治体による雇用創出事業を強化するとともに、ハローワークなどによる求人の開拓、職業訓練、相談・マッチング機能を強化する。
- ○働く者の技術・技能やキャリア向上に向けて、非正規雇用で働く者や障がい者などを含め、誰もが希望する能力開発等の機会を確保されるよう、「人への投資」に関する財政支援を拡充するとともに、中小企業等へのノウハウの提供や相談援助の強化、制度の周知徹底をはかる。
- ○自動車運転業務、医師、建設事業等を含め時間外労働の上限規制が確実に遵守されるよう監督・指導を徹底し、長時間労働の是正をはかる。働き方改革関連法の附則の検討規定にもとづき、法律の施行状況を検証し、労働者保護の強化とともに、制度の実効性を高める観点から必要な措置を講じる。
- ○最低賃金について、中期的に国際標準を意識した一般労働者の賃金中央値の6割水準をめざし、早期の実現に向けた一層の引き上げと環境整備をはかる。あわせて、監督体制の強化などを通じ、履行確保を徹底する。
- ○ILOの「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関する条約の批准に向け、ハラスメント対策関連法を改正し、ハラスメントそのものを禁止する規定を創設する。あわせて、性的指向・性自認に関する差別・偏見をなくし、すべての人の対等・平等、人権の尊重のために、性的指向・性自認(Sexual Orientation and Gender Identity:SOGI)に関する差別を禁止する法律を制定する。