- (1)被用者保険と地域保険の2本立てによる皆保険を堅持し、保険者それぞれが自律的に保険者機能を発揮できる医療保険制度を確立する。
- (2)年齢別から支払能力に応じた負担のあり方へ転換し、負担の公平化をはかる。負担が増える者の日常生活への支障や受診控えによる健康悪化などの影響を検証し、必要な措置を講じる。同時に、すべての未就学児が、必要な医療や健康診査を受けられるよう、低所得者の負担軽減を行う。
- (3)2002年健康保険法改正法附則第2条にもとづき、被保険者および被扶養者の医療に係る給付の割合については、将来にわたり100分の70を維持する。また、医療費の総額管理制は導入しない。
- (4)保険者は、AIを活用したレセプト審査の強化と審査体制の拡充をはかる。被保険者への情報提供の充実、AI・ビッグデータを活用した医療費通知の内容充実、本人・家族申請によるレセプトの開示などを積極的に進める。また、医師・医療機関等に対する評価能力を高め、評価結果を加入者に対し積極的に公表する。
- (5)医療事故や医療費の不正請求に関する保険者の苦情処理機能と被害者委任による代理交渉権や、医師・医療機関などとの直接契約、費用総額をめぐる交渉権を確立する。
- (6)保険者は、レセプト減額査定により患者の一部負担に過払いが生じた際、1万円以下であっても医療費通知で被保険者に通知する。また、払い過ぎた患者一部負担の返還を代行する。
- (7)レセプトの審査支払機関による厳正かつ効率的な審査が促進されるよう、患者・被保険者代表の参画の下でICTの積極的な活用を進め、審査基準の標準化をはかるなど、社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険団体連合会による審査機能を抜本的に強化する。
- (8)マイナンバーカード等を用いたオンライン資格確認システムの導入に際しては、本格運用後も運用状況の検証を継続し、データの正確性とシステムの安定性の確保を徹底する。同システムの導入により、患者の不便や負担を生じないよう対応するとともに、被保険者に対しては十分な周知・啓発を行う。
- (9)医療DXの進展による医療情報の閲覧管理等にあたっては、以下のとおり対応する。
①情報の機微性に鑑み、被保険者の同意にもとづく運用を徹底する。
②自らの情報をコントロールする権利に十分留意し、情報の提供を受ける保険者等に情報収集の目的、範囲、活用方法、情報提供の不同意の申し出方法等を周知徹底させるとともに、委託先を含め適正利用を遵守させる。
③国は、不適正な第三者提供を防止し個人情報保護が徹底されるよう、保険者等を指導監督する。
- (10)全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)の運営について以下の支援を行う。
①被用者保険のセーフティネットとして、中長期的に安定した運営の下で保険者機能を十分に発揮できるよう、国庫補助率は少なくとも現在の水準を維持し、財政基盤の安定化をはかる。
②保険給付費等の支払に備えるために積み立てが義務づけられている準備金の上限について、超少子高齢化に伴う保険料収入や保険給付費の見通しを踏まえ、被用者保険のセーフティネット機能を果たし続けられるよう、国庫補助の在り方を含め、労使参画の下で検討する。
③運営委員会、都道府県支部評議会のみならず、加入者の意見を反映しながら、地域特性に応じた保健事業や医療費適正化事業の積極的な取り組みを支援する。
④都道府県単位の保険料率は、現行の仕組みを基本としつつ、保険者機能を発揮した支部の努力が反映される仕組みとする。インセンティブ制度については、加入者が納得できるよう、エビデンスに基づき評価指標の妥当性を検証する。
⑤船員保険事業については、船員労働の特殊性、独自性に鑑み、自主自立を基本とした管理・運営とする。
- (11)組合管掌健康保険(健保組合)のあり方について以下の見直しを行う。
①適正な保険者規模に関する検証を行い、地域総合型健保の設立などを含めて必要に応じた再編・統合を進める。
②保険者機能がより発揮されるように、体制整備や人材育成を含め、健保財政の改善に向けた支援を講ずる。
③健保組合が保険医療機関および患者などに行う立入調査権の付与のあり方を検討し、当面は国・都道府県の保険医療機関などへの調査に保険者を参画させる。
④事業主側の事情による安易な解散を防止するため、健保組合解散の認可にかかる審査は慎重に行う。その上で、指定健康保険組合に対する財政的支援を強化し、健康保険組合の解散数を減少させる。
⑤企業再編などにともなう被用者保険間の被保険者の移動に対応するため、必要な法定準備金の確保を前提に、準備金の取り崩しなどによる被用者保険間の財産移管を可能とする。
⑥夫婦が子などを共同扶養する場合の健康保険の被扶養認定では、年間収入の多少により画一的に判断せず、家庭の実態などに即して判断すべきことを通知などで周知徹底する。
- (12)国民健康保険のあり方について以下の見直しを行う。
①国は国民健康保険の財政主体が都道府県に移行した後の状況を把握し、保険者機能を発揮できる運営に向けて適切な支援を行う。
②20歳以上の無就業・無収入者の国民健康保険加入については、国民健康保険加入による各医療保険制度への財政的な影響に配慮しつつ、低所得者への減免措置などを含め検討し、働き方などに中立的な社会保険制度をめざしていく。その際、被扶養者の範囲は20歳未満の子に限る。
③国は都道府県内の保険料負担の平準化を進めるにあたっては、医療サービスの水準に地域格差がある現状を踏まえ、受けられる医療サービスに見合わない保険料負担とならないよう配慮のうえ、都道府県を支援する。
④医療機関と市町村、福祉事務所の連携により、医療費の支払いが困難な生活困窮者が速やかに生活保護申請の手続きなどにつなげられる仕組みを構築する。
⑤財政基盤の安定化および低所得者への医療を保障する観点から公費負担を拡充し、保険料滞納者、無保険者が生じないよう保険料軽減措置を講じる。将来的には、生活保護受給者を国民健康保険の被保険者とし、低所得者を含め保険料(税)と自己負担分を手当てするものとする。
⑥国保組合については、被用者保険との役割の違いを明確化し、被保険者の多くが高額所得者である場合などの実態や財政状況に応じて国庫補助のあり方を見直す。
- (13)負担能力に応じた負担の徹底と高齢者医療制度の抜本改革による、持続可能な保険制度の再構築のため、以下のとおり対応する。
①窓口負担について、就学前は無料、その他は年齢にかかわらず原則3割とし、応能負担とする。
②現行の高齢者医療制度は廃止し、保険者機能が十分に発揮される仕組みとするため、被用者保険全体で退職者を共同で支える「退職者健康保険制度(仮称)」を創設する。
③負担能力に配慮しつつ、給付と負担のあり方は被用者保険と共通のルール適用を原則とする。
④拠出金を負担する現役世代が加入する保険者および被保険者による参画を保障し、所得再分配機能の強化、公費の拡充などを通じて、保険者機能を発揮できる保険運営を支援する。
⑤任意継続被保険者制度や特例退職者被保険者制度を利用しやすくするための要件緩和をはかる。
- (14)働き続ける高齢者は被用者保険に加入し続けるほか、退職者については、以下から選択できるようにする。なお、「退職者健康保険(仮称)」に退職者を加入させることが各保険者にとって財政上の負担とならず、また、高齢者医療費を支える現役世代の負担が過重になることがないよう、公費の充実をはかり、各保険者からの拠出は負担能力に応じたものとする。
①被用者保険グループが支える「退職者健康保険(仮称)」に加入する。
②地域の国民健康保険に加入する。
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