- (1)診療報酬と薬価等は、医療および医薬品等それぞれが果たすべき役割や機能を担保する価格とすることを基本とする。
- (2)診療報酬制度については、項目を簡素化して誰もが分かりやすい診療報酬体系とするとともに、信頼できる保険医療へのアクセスを保障する。また、医療の質の向上や治療方法の標準化、医療の透明化をはかるため、医療機関による患者の逆選択が生じないことを前提に、出来高払いから「包括・定額化」への転換を進める。
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(3)看護職員など医療従事者の継続的な賃金改善につながるよう報酬等のさらなる仕組みを構築する。医療現場で働く者全体の労働時間短縮の取り組みを前進させ、離職防止や復職促進につなげるため、業務負担の軽減につながる人員配置を評価する。医療安全を確保した上で、多職種によるチーム医療の推進を評価する。
- (4)入院・外来医療の機能分化と連携の推進、医療と介護の連携の強化に資する診療報酬とする。
- (5)病院については、患者の状態に応じた入院医療の評価を進めるとともに、急性期入院医療を対象とする診療報酬の包括評価制度(DPC)の検証を継続しつつ、DPC準備病院および対象病院をさらに拡大する。
- (6)診療所については、定額方式を原則とするとともに将来的には家庭医登録制度の採用と登録患者の数に応じた医療費支払方式である人頭払い制度の導入も検討する。
- (7)全国いずれの地域であっても安全で質の高いがん医療を受けることができ、また、がんに罹患した労働者が離職することなく通院しながら働き続けられるよう、がん医療の均てん化や専門医療機関との連携の推進、緩和ケアの充実に資する診療報酬上の評価を行う。
- (8)中央社会保険医療協議会(中医協)委員は、現行の三者構成(支払側、診療側、公益委員)の維持を基本とし、患者・被保険者代表が必ず参画できる仕組みとする。また、医師以外の医療従事者代表などを加える。
- (9)患者申出療養や再生医療をはじめとする保険外併用療養費制度は、患者の安全性の確保を最優先するとともに、保険収載を前提に検討を進め、安易な拡大を行わない。保険収載を前提としない「混合診療」は導入しない。
①保険外併用療養費制度の対象となる医療技術の安全性・有効性などの審査や評価の情報公開を行い、透明性ひいては公平性を確保する。
②実施においては、患者の安全な選択に資するよう、費用も含めた十分な情報提供と院外掲示・広告、本人同意、自費部分を含めた明細書発行などを義務づける。
③患者申出療養の医療を行う医療機関は、高度かつ専門的な医療を提供できる医療機関に限定する。また、実施に関与する関係医療機関の役割と施設基準を明確化する。また、広範な副作用被害や医療事故などの有害事象が発生した場合に、責任の多くが患者に負わせられることのない仕組みを確立する。
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(10)市販品類似の医薬品(OTC類似薬)など保険給付範囲を縮小する考え方については、市販薬の過剰摂取や飲み合わせのリスクを踏まえ、慎重に検討する。
- (11)薬価改定および保険医療材料価格改定は、医薬品の安定供給確保の観点から、患者の利益につながるイノベーションの促進やドラッグラグ・ドラッグロスの縮小に向けて、革新的新薬や希少疾病用医薬品等を積極的に評価する。また、薬価算定過程の透明性・信頼性を高める検討を進めるとともに、安定的な医薬品の流通に必要な経費を「調整幅」として薬価に算入する。あわせて、医薬品の公正な価格形成を進めるため、単品単価取引を推進するなど公正競争の確保を徹底し、中間年改定を含め薬価制度のあり方について検討を行う。
- (12)良質な後発医薬品の普及促進のため、情報提供、品質管理、トレーサビリティの確保、安定的な供給体制などを含めた評価システムを確立する。また、統一名収載を推進するとともに、後発医薬品の普及状況に応じて一般名処方加算は縮小する。
- (13)医薬品・医療機器等に対する費用対効果評価については、患者の利益を損なうような価格反映が行われない運用とする。
- (14)薬剤1日分の薬価合計額が175円以下の場合にレセプトへの傷病名、薬剤名、投与量の記載を省略できるルールを廃止する。
- (15)医療機器・材料の開発・輸入の促進や安定供給の確保のため、保険償還価格の算定は、機能区分別から銘柄別への見直しを検討する。また、保険償還価格の算定における外国価格調整のあり方に関する調査・研究を進め、内外価格差を縮小する。
- (16)「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の実効性を確保するため、医療機関や関係業界に対し同ガイドラインの周知・取り組みを徹底する。
- (17)高額療養費制度ならびに高額介護合算療養費について以下の見直しを行う。
①年齢区分を廃止するとともに、外来特例の支給範囲の縮小に向けて検討する。
②各所得区分における家計への影響を分析した上で丁寧に検討を行い、見直し後においても必要な医療へのアクセスが阻害されないよう、とりわけ長期に継続的な治療が必要な患者へ配慮する。
③各所得区分における自己負担上限額は、社会保険への加入に対する信頼や納得性を損なうことがないよう、応能負担を強めないようにする。
④1ヵ月単位となっている算定期間の柔軟化や、保険者が変わっても通算可能な多数回該当の仕組みとすること、同一保険者である場合は自己負担額が21,000円未満であっても合算を可能とする。 - (18)子育て支援と、安全・安心な出産のため、出産にかかる費用については、正常分娩も含めて健康保険の適用(現物給付)とし、窓口自己負担が増加することのないよう、公費から別途負担軽減措置を講じ、現行の出産育児一時金は廃止する。具体的な診療報酬の設定などに向けて、医療機関から保険者や患者への分娩費用含む提供内容と費用内訳が分かる明細書の無料発行を義務づけるなど、正常分娩と異常分娩それぞれの実態や費用内訳を把握・検証するとともに、産科医療の標準化と質の向上を進める。
- (19)不妊治療については、当事者の意思を尊重することを前提に、患者の安全性の確保と医療の標準化を重視し、保険適用による影響の検証調査を踏まえ、可能な限り広く治療法の選択が可能となるよう見直しを行う。また、医療アクセスへの公平性の確保を重視し、保険収載を前提としない「混合診療」の導入につながらない仕組みとする。
- (20)傷病手当金の支給額は、標準報酬月額の平均額の7割以上を確保する。
- (21)出産手当金の支給額は、標準報酬月額の平均額の7割以上を確保し、少子化対策の観点から、賃金との併給の場合の限度額を雇用保険法の育児休業給付の限度である80%(標準報酬日額の80/100)まで引き上げる。
3.安心できる社会保障制度の確立|医療政策