2.雇用の安定と公正労働条件の確保|雇用・労働政策

2-6-6.長時間労働を是正し、ワーク・ライフ・バランスを実現する。

  1. (1)長時間労働の是正に向けて、労働時間短縮や年次有給休暇の完全取得など、労働者の健康・安全およびワーク・ライフ・バランスの確保に向けた施策を推進する。

    ①時間外労働の法定割増率を時間外50%、休日労働100%、深夜労働50%に引き上げる。特に、休日労働の割増率は35%から50%以上に早期に引き上げる。

    ②労働基準法第40条の特例措置(週44時間労働制)は早急に廃止する。

    ③フルタイム労働者のあるべき労働時間として「年間総実労働時間1,800時間」など、数値目標を示す。

    ④「ワーク・ライフ・バランス憲章」に盛り込まれた「消費者の一人として、サービスを提供する労働者の働き方に配慮する」との趣旨の周知をはかるなど、深夜化するライフスタイルや長時間労働を是正し、平日のゆとり時間の確保を重視した環境整備を行う。

    ⑤多くの労働時間規制の適用が除外されている管理監督者については、その定義を法律で明確に定める。なお、管理監督者性の判断基準に関する昭和63年の通達等にもとづく厳格な監督指導は直ちに徹底する。

    ⑥すべての労働者を対象に「休息時間(勤務間インターバル)規制(原則11時間)」を導入する。

    ⑦男女ともに限度時間「150時間」を目標として、限度時間「360時間」以内の徹底をはかる。

    ⑧「自動車の運転の業務」「医師」については、2024年4月より適用される規制水準の実効性確保に向けた周知、施行後の遵守徹底とともに、着実な労働時間縮減に取り組む。その上で、引き続き一般則の速やかな適用に向けた議論を行う。

    ⑨すべての自動車運転者の長時間労働の是正および安全輸送や公正競争の確保のために、労働環境や賃金体系等が適正なものとなるよう関連法規の周知徹底をはかり、厳格に運用する。

    a)長時間労働による過労死等の発生や事故の防止をはかるため、2024年4月より適用される労働時間の上限規制および改正「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(告示)の施行に向けた周知および監督指導を徹底する。また、施行後の告示の運用状況を検証し、最大拘束時間の見直しをはかるとともに、事業者に連続休息期間の確保を義務づける。

    b)過当競争や賃金体系における過度な歩合制が低賃金・長時間労働の原因であるため、安全輸送の観点から、いわゆる「オール歩合」「累進歩合」の禁止を法律に明記し、不適切な事業者を排除する制度を構築する。

    ⑩労働基準法第41条第1号の農業および畜産・水産業従事者に関する労働時間・休憩・休日規制等の適用除外は、労働実態の把握を行い、事業場単位で行われている適用のあり方などについて検討する。

    ⑪厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」については、改正労働安全衛生規則における労働時間の適正な把握方法と同様に、使用者に求める措置を労働基準法上の義務として法文化する。

    ⑫時間外労働・休日・深夜労働等の削減に向けて、「所定外労働削減要綱」、「賃金不払残業総合対策要綱」、「労働時間等設定改善指針」の周知徹底をはかる。

    ⑬公務における超過勤務の実態を把握するとともに、実効性ある超過勤務規制をはかる。

    ⑭教員にも労働基準法第37条を適用し、長時間労働の是正をはかる。

    ⑮「医師の働き方改革の推進に関する検討会」の中間とりまとめを踏まえ、地域において医療機関による労働時間短縮の取り組みを推進すべく、医療機関勤務環境評価センターによる評価体制の整備と、医療勤務環境改善支援センターによる相談支援の強化をはかる。また、医師の労働時間の実態把握と、取り組みの改善を定期的に行うとともに、医療を受ける側の国民の理解を得ながら国・都道府県が一体となり、医療現場で働くすべての労働者の長時間労働を是正する。

    ⑯ICTの進化・普及により生じている、退社後・休日の待機・呼び出しや行動範囲の限定という実態を調査するとともに、このような働き方/働かせ方に対する規制・ルールを検討する。

    ⑰高度プロフェッショナル制度は、施行後の状況を検証し、対象労働者の働き方や健康確保、対象業務の運用などに問題がみられる場合は、廃止も含めて制度の見直しを行う。

    ⑱裁量労働制の対象業務拡大は行わない。

    ⑲企画業務型裁量労働制の導入手続きは、2003年の労働基準法改正前の手続きに戻すことを原則とし、(a)労使委員会の労働者側委員については、過半数労働組合がある場合を除いては、労働者からの信任手続きを必要とし、(b)労使委員会の決議要件は全員一致とする。また、専門業務型にも労使委員会の設置を義務づけた上で、同様の手続きを課す。

    ⑳裁量労働制の適用後に、本人が希望した場合には一定の予告期間後には通常の労働時間管理への復帰を保障することを明文化する。また、前年度の休暇取得率を踏まえた特別の休日労働規制など、健康・福祉確保措置の最低基準を法律に規定し、複数措置(「事業場における制度的な措置」と「個々の対象労働者に対する措置」より各1つずつ以上)の実施を義務づける。

    ㉑すべての労働者を対象に「連続勤務日数の規制」の導入を検討する。

    ㉒長時間労働につながる商慣行の見直しと取引の適正化をはかるため、事業主が取引上必要な配慮をする努力義務を定めた「労働時間等設定改善法」および「労働時間等設定改善指針」の周知徹底をはかる。

  2. (2)年次有給休暇取得促進に向けた施策を促進する。

    ①法定年次有給休暇の最高付与日数を25日に引き上げるとともに、最低付与日数20日に引き上げる。また、6ヶ月の継続勤務要件は廃止する。

    ②本人・家族の病気・看護休暇、配偶者出産休暇(5日間)などの新設をはかる。

    ③年次有給休暇の取得促進につながる具体的施策(取得促進に向けた計画などの提出義務の企業への賦課、取得率良好企業の認定制度の創設、ポジティブ・オフ運動の推進など)の展開や、ILO第132号条約を踏まえた長期連続休暇の取得、年間休日確保に向けた施策の整備とその推進をはかる。

    ④年次有給休暇の取得による不利益取扱いの禁止を労働基準法上明確化する。

    ⑤国民のゆとり確保の観点から、国民生活などに欠かせない分野を除き、正月三が日、特に「元日」については、特別な日として休業の制度化をはかる。

    ⑥5月1日を国民の祝日とし、4月29日の「昭和の日」から5月5日の「こどもの日」までを連休とする「太陽と緑の週」を制定する。

  3. (3)雇用型テレワークについて、使用者が労働関係法令を遵守し、制度が適正に導入・運用されるよう、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」に示されている労働条件の明示、各種労働時間制度の厳格な適用、労働時間の把握・管理、安全衛生管理の徹底、通信費・情報通信機器等の費用負担、労働災害への対応などに関して、周知・徹底をはかる。また、テレワークにおける作業環境整備のため、助成金の支給対象の拡大など支援の拡充を行う。
  4. (4)「過労死ゼロ」の実現に向け、実効ある長時間労働是正策とともに、過労死等の事案の企業名公表など、労働者が安心して働けるよう、総合的な過労死等防止対策を講ずる。

    ①「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を踏まえ、長時間労働の是正の取り組みやメンタルヘルス対策・ハラスメント対策などを強化し、大綱で設定されている数値目標等の着実な達成をはかる。また、現行の数値目標の達成状況を評価するとともに、「過労死等ゼロ」にむけた取り組みを強力に進めるべく、PDCAサイクルの構築をはかる。

    ②教員など公務職場における過重労働の実態を早急に把握し、抜本的な過重労働対策を講ずる。

 

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