- (1)既存発電設備の有効活用によるエネルギー供給の確保をはかる。
【自家発電設備等の最大限の活用】
①公的な政策的支援によって事業者が自家発電設備等の活用にメリットを感じ、主体的に活用をはかるように環境整備を行う。具体的には、補助金によるコージェネレーションシステムの普及促進、燃料費用の補填、ピーク時間帯において自家発余剰電力が適正価格で買い取られる仕組みの導入、需要家が節電する電力を入札で買い取る「ネガワット取引」の普及拡大などの政策的支援を行う。
②系統制約の問題については、電力品質を確保するための系統連系技術要件の緩和や送配電事業者と新電力間の連系協議の簡素化などをはかる。
【定期点検等による停止中原子力発電所の活用】
③定期点検等で停止中の原子力発電所を再稼働する際には、安全性の強化・確認を国の責任において行うことと、周辺自治体を含めた地元住民の合意と国民の理解を得ることを前提とする。
④安全性の強化・確認と周辺自治体を含めた地元住民の合意と国民の理解については、以下の内容を基本とする。その上で、停止中原子力発電所の再稼働については、国民生活や産業・雇用に与える影響などを勘案し、国が責任を持って判断する。
<安全性の強化・確認について>
原子力規制組織、原子力安全規制(事故を踏まえた新たな規制基準を含む)、原子力防災体制という視点から、安全性の強化を行う。a)原子力規制委員会は、規制機関として信頼されるために、その目的が「確立された国際的な基準を踏まえた原子力利用における安全の確保(設置法第一条)」であることを踏まえ、強い権限と原子力に関する高度な知見を持ち、政治および行政からの独立性の高い組織とする。
b)原子力安全規制については、以下の点について見直し・強化をはかる。
ア)原子力安全規制は、国内外の幅広い専門家等の意見やIAEA(国際原子力機関)による指摘、福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、科学的・技術的知見を基本に、国際的な基準や先行する海外事例との整合を図りつつ、原子力安全規制の実効性を高めるよう、更なる原子力安全の向上に不断の見直しをはかる。
イ)原子力規制委員会は、新規制基準の適合検査について、審査体制の強化をはかるとともに、規制機関として行った評価や判断について、原子力規制に関する理解と信頼をより一層高めるため、周辺自治体を含めた地元住民や国民に分かりやすく、十分かつ丁寧に説明責任を果たす。
ウ)長期間の運転に伴って生じる原子炉等の劣化状況を踏まえた稼働上限を導入する。(注1)
エ)事業者自らも安全性向上に取り組む責任を明確化する。
c)原子力防災体制については、少なくとも以下の点について見直し・強化をはかる。
ア)原子力規制委員会により策定された原子力災害対策指針については、新たに得られた知見、地方自治体の取組状況や意見、防災訓練の結果等を踏まえ、実効性向上のため継続的に見直し・強化をはかる。
イ)災害発生時等に国民の生命・健康が確保される措置を導入する。
ウ)国は、地方自治体の実施する避難計画や地域防災計画の策定と運用など地域の実情に応じた原子力防災対策の強化等に対し、各自治体に任せるだけでなく、主体性を持ち積極的に関与するとともに、その責任を果たす。(注2)
<周辺自治体を含めた地元住民の合意と国民の理解について>
a)国は、自らの責任において安全性の強化・確認を行ったことを丁寧に説明し、周辺自治体を含めた地元住民の合意と国民の理解を得る。
b)国は、説明にあたっては、国民が正確・透明・公正であると判断できる情報および、その根拠となるデータを含めて公開する。
c)周辺自治体を含めた地元住民や国民に対する説明は、専門用語だけではなく、一般に理解しやすい平易な用語を使って行う。
d)周辺自治体の範囲としては、政府が法定化を検討している防災指針において、避難や屋内退避等の準備が求められることになる「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)」とすることも考えられる。
- (2)無理のない省エネによるエネルギー需要の抑制をはかる。
①東日本大震災によるエネルギー供給制約の教訓を踏まえ、需要を効率的に管理・制御することで省エネをはかるとともに、その経験を中長期な省エネの取り組みにつなげる。
②省エネ製品買替支援の補助金、購入・改築した住宅が省エネ型(高断熱性能など)である場合の補助金や税制優遇措置、HEMS(家庭内エネルギー管理システム)・BEMS(ビルエネルギー管理システム)導入のための補助金などの政策的支援を行い、省エネ製品、ZEH・ZEB(年間に消費するエネルギー量が概ねゼロになる建物)などの導入を促進すべき。
③貯蔵が困難である特性を持つ電力については、ピーク時の需給調整に応じる代わりに割引を行うなど価格メカニズムを活用してピーク需要が抑制される料金体系の導入・普及を促進することや、コージェネレーションシステム、家庭用燃料電池や電気自動車などを含む蓄電池、ガス・灯油空調導入のための補助金などの政策的支援を行い、ピークに着目して需要を抑制する。
④家庭部門やオフィス等においては、照明の抑制、冷蔵庫や空調設備の温度設定を無理のない範囲で控えめにするなど、一人ひとりの省エネ意識の醸成や取り組みの周知拡大と意識付けを粘り強く行う。その際には、エネルギー需給の見える化をはかる。
⑤電気事業者には、電力需要の状況や揚水発電所を含む既存発電設備の稼働状況について情報公開・情報提供を求め、節電行動につなげる。
⑥産業用部門における、操業調整などによるピークカット、ピークシフトは、育児・介護環境などの周辺分野での対応が必要となるなど、労働者への影響が極めて大きいことから、可能な限り回避する。やむを得ず行う場合には、労働者の負担にならない形で行うように、育児・介護環境などの周辺分野も含めて対応する。
- (3)政府は、原子力施設のみならず、火力発電所、送変電設備、ガス施設、製油所、再生可能エネルギー発電設備等の主要なエネルギーインフラ施設の安全対策および大規模災害時におけるライフライン確保・国民生活の安定化策を強化する。
- (注1)改正原子炉等規制法(2012年6月20日可決成立)では、発電用原子炉を運転できる期間は原則として40年とされた。ただし、法の施行状況を勘案して速やかに検討を行い、必要に応じて見直すとしている。
- (注2)政府の防災指針の見直しについて、原子力規制委員会は、2012年10月に原子力災害対策指針を策定し、「予防的防護措置を準備する区域(PAZ:原子力施設から概ね5kmが当面の目安)」、「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ:原子力施設から概ね30kmが当面の目安)」を設定した。これに伴い全国にある原発の半径30km圏の自治体に地域防災計画の策定が義務づけられた。