- (1)企業のCSR(企業の社会的責任)への取り組みを強化させるとともに、地域や消費者も含めたすべてのステークホルダーに対して情報を公開させる。なお、取り組みにあたっては、雇用・労働・人権・環境分野を重視するとともに、重要なステークホルダーである労働組合や従業員の意見反映や利益確保が十分に行われるものとする。
- (2)CSR調達の取り組み促進に向けて、2025年日本国際博覧会協会は、「持続可能性に配慮した調達コード」に則り、全ての物品・サービスの受注者(サプライヤーおよびライセンシー)がILO中核的労働基準をはじめとする労働に関する国際的な基準を遵守するよう周知徹底をはかる。調達コードの不遵守またはその疑いが生じた場合の通報受付窓口については、効果的なものとなるよう整備する。国・地方自治体は同コードを採用する。
- (3)多様なステークホルダーの利益への配慮を含む企業統治や企業再編時の労働者保護を実現するために、事業譲渡における雇用や労働条件の保護に関する法律を整備する。また、企業の不祥事や法令違反を抑止するために、監査役・監査委員会の構成員に労働組合代表あるいは従業員代表を含めるなど、監査の機能および権限の強化をはかる。なお、現行の株主代表訴訟制度については、ガバナンスを効かせるために維持する。
- (4)企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、多様なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを企業に認識させるとともに、ESG(環境、社会、統治)問題への対応を含め、労働組合への情報提供や協議など、ステークホルダーとの積極的な協働を促進するよう取り組みを進める。
- (5)上場企業における財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスにかかる情報等の非財務情報について、法令にもとづく開示を適切に行わせるとともに、法令にもとづく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むよう徹底をはかる。また、非上場企業における決算公告制度の運用についても徹底をはかる。
- (6)国際財務報告基準(IFRS)への対応方針は、労働者など多様な「利用者」の理解と納得の上に検討し、日本の産業構造や企業活動の実態に即した、成長と雇用の維持・創出に寄与するものとする。また、当面は、上場企業の連結財務諸表に対してIFRSを強制適用するべきではなく、任意適用を継続する。
- (7)投資ファンドや信託口を介した株式保有の増加に対応するため、上場企業が真の株主を調査することのできる権利を創設する。
- (8)上場企業の買収に関する規律を策定し、企業買収時における交渉過程・内容の透明化をはかるとともに、被買収企業の労働者代表に対して、買付文書に関する意見表明機会を担保する。また、この運用機関として、法的根拠を持った企業買収規制専門機関を設置し、構成員については、政府、金融機関、民間企業、弁護士、労働組合等から受け入れる。
- (9)国は、事業者内部の労働者からの通報が阻害されないよう、「公益通報者保護制度」について政府のガイドラインの活用や労使協議の促進などを通じて、制度の周知と普及、および適切な運用を徹底させる。また、通報者に不利益取扱い(報復)を行った企業に対する行政措置や刑事罰の導入、通報を理由とすることの立証責任の事業者側への転換など、通報者の保護・救済の強化につながる法改正を行う。
- (10)個人情報の保護をはかる際には以下の点に留意する。
①国、地方自治体は、個人情報取扱事業者等における実効ある個人情報保護を支援するとともに、個人情報保護状況の把握に努め、事業者に対し、適切な指導・支援を行う。ただし、就業規則等の改定を求める場合には、労使の十分な協議が前提であることに留意する。
②各省庁は、事業者に対する監督、指導等に関して、事業分野によって内容に過度な差異が生じないよう連携・調整を行う。特に高度な安全管理措置が求められている分野については、現場の従業員に過剰な負荷がかかることのないよう、守るべき基準の明確化と不断の見直しを行う。
- (11)建設工事の適正な工期の確保をするための「工期に関する基準」につき、丁寧な実態把握を行うとともに、適切な運営がなされるよう徹底する。
1.持続可能で健全な経済の発展|産業政策