1.持続可能で健全な経済の発展|産業政策

2-3-1.政府は、新規産業・雇用を創出する経済構造改革を進めるとともに、グローバル成長の取り込みをはかり、産業政策と雇用政策を一体的に推進する。

  1. (1)新規産業・雇用を創出するために、将来にわたり特に発展が求められる分野(ICT、グリーン、医療・ヘルスケア、観光、サービス、農林漁業の6次産業化等)と、それぞれの分野を有機的につなぐコンサルティングなどの分野において、人材育成、技術開発、規制改革、予算・税制措置等官民の資源を集中投資する。また、カーボンニュートラルの実現をはじめとした世界が直面する課題解決のための技術・システムなどの確立に向けて投資を行うとともに、新たな外需の獲得に向けた海外展開を支援する。
  2. (2)雇用創出を新規産業の育成策の目標に据えるとともに、産業や事業の再生にあたっては、雇用の確保を第一義に政策を展開する。また、産業政策や関連する法律案の策定にあたっては、経済合理性の視点に加え、雇用安定や労使協議を前提とした良好な労使関係を活用できる内容とし、雇用保険財源によらない職業訓練の充実、企業における人的投資の支援、労働者が教育機関にアクセスしやすい環境の整備などセーフティネットを強化する。
  3. (3)今後すべての産業に起こり得る様々な変化への対応について検討するための、労使が参画する枠組みを早急に構築する。その際には、失業なき労働移動を可能にするとともに、格差の拡大が助長されることの無いよう、ディーセント・ワークを維持しながら全体の底上げをはかるなど「公正な移行」が実現するよう検討を進める。

    ①政府は、社会基盤やあらゆる産業におけるDXの実現に向けた環境整備を積極的に支援する。とりわけ、すべての産業におけるデジタル化の実態把握をはじめ、すべての産業・企業に対するIT人材育成を含めたデジタル化の導入促進の強化、中小企業におけるDXの支援を充実する。

    ②国・地方自治体は、イノベーションへの対応など企業の環境対策を促進するため、環境対策に関連した技術・事業・産業の育成・支援を強化する。(「環境政策2.(7)」より再掲)

    ③企業における人的投資、テレワーク環境の整備をはじめとする設備投資、研究開発等に対する支援を着実に実施する。特に、産業構造の変化に対応した働く者の学び直しや企業の職業能力開発に対する支援を強化する。その際には、雇用形態や企業規模による格差が生じることのないよう、特に弱い立場の労働者や、中小企業に対する支援策を講じる。

    ④政府は、IoT/ビッグデータ・AI等の活用によるデジタル化の健全な進展と安心・安全で信頼性のあるAIの社会実装に向け、研究・開発環境整備への支援のみならず倫理的課題への対応を強化する。

  4. (4)雇用創出量が大きく、経済波及効果も見込める観光産業について、観光案内所の増設、交通機関等での多言語表記、ICTを活用した多言語情報の提供等の環境整備を進めるとともに、通訳案内士の養成等多言語人材の育成を推進し、地域と連携した推進体制で取り組む。
  5. (5)超少子高齢化に伴う労働人口の減少、労働力の高齢化に対応するため、ロボット技術の開発や導入・普及の促進など、作業負荷の軽減や省力化に向けた整備を進める。
  6. (6)海外需要の取り込みをわが国経済の活性化に繋げるため、国内企業の海外展開を支援するとともに、社会インフラシステムの輸出促進のための環境整備等を行う。
  7. (7)知的財産・標準化戦略にもとづき知的財産を有効活用し、技術立国としての地位確立をはかる。また、わが国の産業を保護・強化するべく、知的財産制度の一層の強化を図る。

    ①ソフトウェアも含め、知的財産の評価・権利を確立し、不正使用の防止を徹底する。

    ②特許市場の整備、特許審査期間の短縮化のための審査体制強化、裁判所の知的財産権紛争処理体制の強化など、知的財産権制度の整備を行う。

    ③金型をはじめとする中小企業の技術が、特許・実用新案・著作権等知的財産権の枠組みで保護されるよう法整備を進め、外国への特許出願に対する支援策を強化する。

    ④外国出願特許については、早期権利化を実現するために、知的財産権制度の国際的な共通化をはかる。

  8. (8)わが国産業の競争力強化のために、企業の国際標準獲得を支援する。

    ①多様化する国際標準化活動に的確に対処できる仕組み作りを推進する。

    ②国際標準の策定にあたっては、技術優位の確保に向けたイニシアチブを得るため、基礎段階から産学との連携強化を積極的に推進する。

    ③認証の戦略的活用の促進に繋がる支援策を講じる。

    ④各国で異なる国際標準・規格については調和を図る。

  9. (9)営業秘密の流出防止のための制度整備を行う。

    ①不正競争防止法の適正な運用をはかるとともに、労使協議における情報開示や労働者の権利が影響を受けることの無いよう、従業員と事業者に対し営業秘密管理指針の周知・徹底を行う。

    ②企業における知的財産戦略が多様化する中で、研究者の発明に対するインセンティブの整備に向けた取り組みを進める。

  10. (10)地震・津波・火山噴火・台風・集中豪雨などの自然災害、新型コロナウイルス感染症などのパンデミック、大規模停電、大規模システム障害、テロなど災害や事故の発生時における事業継続や事業復旧に関する企業等のリスクマネジメント(事業継続管理:BCM)の普及・促進を支援する。また、風水災など予測できるものによる人的被害、帰宅困難者などの発生を防ぐため、政府は、企業に対し、事前の業務停止などに関するマニュアルの設置に係る支援策を進めていく。
  11. (11)経済安全保障の確保の推進にあたっては、民間事業者の自由な経済活動を阻害しない範囲に規制措置をとどめるとともに、WTO協定などの国際ルールとの整合性を十分にはかる。
     また、サプライチェーンの強靭化の対象となる特定重要物資、基幹インフラ役務の安定的な提供に資する対象分野の対象事業者や事前審査の対象となる重要設備の省令指針などの策定にあたっては、労働者の意見が十分に反映されるよう求めていく。

 

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