- (1)政府は、所得税を再構築し、所得再分配機能と財源調達機能を高める。
①利子・配当、株式等譲渡益の分離課税制度を廃止し、資産性所得を含めて所得課税を総合課税化する。「金融所得課税の一体化」は、総合課税化を条件とする。それまでの間は、金融所得にかかる税率を30%に引き上げるとともに、税率構造を段階化する。あわせて、租税回避措置を講じる。
②将来的な総合課税化実現の前提となる金融所得を含めた正確な所得捕捉の実現に向け、国民が開設する全ての預貯金口座とマイナンバーの紐付けを行う。
③人的控除は、できるだけ社会保障給付や各種支援施策等に振り替える。残すものは高所得者ほど税負担の軽減効果が大きくなる所得控除から税額控除に変えることを基本とする。
a)基礎控除は、基礎税額控除に変える(所得税4.8万円/人、住民税4.3万円/人)。
b)配偶者控除は、扶養税額控除に整理統合する。
c)成年扶養控除は、扶養税額控除(所得税3.8万円/人、住民税3.3万円/人。平均所得(給与所得400万円程度)以下に対象を限定)に変える。税収の増加分は、就労支援や子育て支援等の財源とする。同居特別障害者加算は、障害者福祉手当の増額に振り替える。
d)特定扶養控除は、扶養税額控除と教育費税額控除(新設:所得税:2.5万円/人、住民税:1.2万円/人)に分割する。新設する教育費税額控除は、大学、専門学校等に通う扶養者がいる場合、所得制限、年齢制限を設けずに適用する。
e)平均所得以下の層に限定して、被扶養者が扶養から外れる際に生じる世帯での「手取りの逆転現象」を調整するため、現状の配偶者特別控除に準じた措置を講じる。
f)勤労学生控除、老人扶養親族控除(70歳以上)、同居老親等加算、障害者控除、寡婦・寡夫控除、ひとり親控除は税額控除に変える。
④所得税の税率を5%ずつ、最高税率から段階的に引き上げる。当面、現行税率45%ブラケットを50%に、40%ブラケットを45%に、33%ブラケットを38%に引き上げる。
⑤大幅なインフレによって名目所得が上昇した際は、それに見合う諸控除とブラケット幅(税率適用区分)の見直しを行う。
⑥低所得雇用者の社会保険料・雇用保険料(労働者負担分)の半額に相当する金額を所得税から控除する仕組み(就労支援給付制度)を導入する。(注1)
⑦課税最低限以下の層を中心に消費税の逆進性対策として、最低限の基礎的消費にかかる消費税負担分を給付する制度(消費税還付制度)を導入する。(注1)
⑧特定支出控除の控除対象基準(給与所得控除額の2分の1)を引き下げて申告納税の機会を拡大するとともに、給与所得者の必要経費の実情およびテレワーク等の進展に合わせて、職務上の慶弔費・自動車関係費、能力開発のための費用、周辺機器を含めたパソコン購入費、通信費、書籍購入費、労働組合費等を対象項目として追加・拡大する。
⑨テレワークにかかる費用を一旦労働者が負担し、後日手当で支払われる場合、通勤手当のように非課税にするなど、税制上の取り扱いについて検討する。
⑩単身赴任者の帰宅旅費については、本人の必要経費であり、通勤手当と合算のうえ、通勤費の非課税限度額(月額15万円)までは非課税とする。
⑪年俸制や派遣労働の通勤にかかる交通費実費は、納税者の申告にもとづき非課税とする。
⑫退職金控除は、働き方によって不利が生じないよう、勤続1年あたりの控除額を一律(年60万円)とする。
⑬医療費控除は、適用の下限額(10万円または総所得額の5%のいずれか低い方)を堅持する。
⑭日本国内に住所を有しているが、職業上の理由により、1年の大半を日本で居住していない者を「準居住者」とし、所得税・住民税の軽減をはかる。
⑮医師の社会保険診療報酬の特例(概算経費率による必要経費の計算特例)は廃止する。
- (2)政府は、資産課税を強化し、資産の再分配機能を回復・強化する。
①相続税の基礎控除を引き下げ、2,000万円+400万円×法定相続人数とする。なお、基礎控除の引き下げによる相続税の課税対象者の拡大を注視しつつ、必要に応じて死亡保険金の現行の相続税非課税限度額の拡充を検討する。
②相続税および贈与税の最高税率の引上げなど、累進性を高める税率構造の見直しを行う。
③直系尊属から子・孫に対する住宅、教育、結婚・子育て資金の一括贈与を非課税とする贈与税の特例措置については、資産を有する者ほど有利な制度であることから、制度廃止を基本とし、家族内の承継ではなく寄付の促進など社会への還元を促す方策を検討する。
④小規模宅地等の課税特例(相続した住居に引き続き住み続ける場合、330㎡まで評価額を80%減額する措置)は継続する。事業承継税制は、現行制度を維持する。
⑤現行の相続時精算課税制度は、将来的には一生累積課税方式(生前贈与を一生にわたって累積課税し、最終的には相続時に相続税と合わせて課税する方法)とする。
⑥土地基本法の理念に沿って、保有段階の安定的な課税を基軸に、経済状況に応じた譲渡・取得段階の課税を弾力的に組み合わせることで、地方税収の安定化と土地の有効活用促進をはかる。
⑦地価税は、性格・役割(資産課税や土地政策面)を踏まえて、その基本的枠組みを維持し、地価の上昇率が2桁を超えるまで凍結を維持する。
⑧土地等の譲渡に関する税制の簡素化や国税、地方税等の課税標準となる土地の評価のあり方について検討する。コンパクトシティづくりの促進や市街化調整区域内の土地利用のあり方等に留意しつつ、租税特別措置を総点検し、課税ベースを拡大する。また、住宅にかかる登録免許税と不動産取得税のあり方について簡素化、地方財源化する方向で検討する。
- (3)政府は、消費税の逆進性対策として「給付付き税額控除」の仕組みを導入するとともに、持続可能で包摂的な社会保障制度・教育制度の構築に向けた財源として、将来的な消費税率のあり方を明確に示す。
①軽減税率制度の政策効果・運用状況につき、不断の検証を行うとともに、真に効果的・効率的な逆進性対策、および、有事における迅速かつ適切な給付のためのインフラ構築に向け、マイナンバー制度を活用した「給付付き税額控除」(消費税還付制度(注1))を導入する。
②持続可能で包摂的な社会保障制度・教育制度等の構築のための必要財源確保に向け、将来的には、「給付付き税額控除」など効果的・効率的かつ徹底した低所得者対策の導入を条件とした上で、消費税率を段階的に引き上げる。
③「期間を限定した消費税減税」について、有事の際は、一律の減税よりも真に支援を必要とする層に焦点を当てた施策が優先されるべき。
④次の世代が安心できる社会と健全な財政運営の実現に向け、国債の継続的な大量発行にもとづく財政運営や、それらに依存した消費税減税は行わない。
⑤適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されたことに伴い、免税事業者から課税事業者へ移行する中小企業、個人事業主、フリーランスなどに向けた円滑で適切な導入支援策を引き続き講じる。また、免税事業者への取引排除や不当な値下げ要請などが発生しないよう、監督行政機関による継続的な注意喚起に加え、消費税分も含めた適切な価格転嫁が行われるための環境整備の取り組みを強化する。
⑥簡易課税制度・法人の免税点は、廃止する。
⑦消費税の滞納防止のため、公共工事入札、備品調達の際にも納税証明書の添付を求める。
⑧ガソリン、酒、たばこ等の消費税における二重課税は、解消する。
⑨電子取引の増加等商慣行の変化に対応し、印紙税の課税対象を抜本的に見直す。
⑩納税者の消費税負担の理解浸透および滞納防止のため、消費税の小売り段階での表示は外税方式を原則とする。また、内税方式の場合は、価格表示や領収書に税額を明記する。
⑪消費税納税額の圧縮を目的とした正規雇用から派遣・請負への置き換えを防止するため、派遣労働、請負労働などの対価にかかる「消費税の仕入税額控除」について、そのあり方を見直す。