2023年度重点政策|11 未批准のILO中核条約の批准を通じたディーセント・ワーク実現

11 未批准のILO中核条約の批准を通じたディーセント・ワーク実現

未批准となっているILO中核的労働基準 第111号(差別待遇(雇用・職業))の早期批准

「仕事の世界」で守られるべき最低限の基準である国際労働機関(ILO)の10の中核的労働基準(中核条約)の位置づけは、世界的に高まっている。しかしながら、10条約のうち、日本は第111号(差別待遇(雇用・職業))および第155号(職業上の安全及び健康)を批准していない。
とりわけ、第111号条約については、ILO加盟国のほとんどが条約を批准している中、未批准のままでは世界から日本は人権尊重などに後ろ向きであるとの評価を受けかねない。また、国際的な貿易やビジネスの展開においても、障壁となる可能性が極めて高い。 
この間、「ILO創設100周年決議」(2019年6月、衆参両院にて全会一致で採択)のほか、日・EU経済連携協定第16章「貿易及び持続可能な開発」や「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020年10月)にも中核条約の批准に努力する項目が盛り込まれるなど、国際的な圧力も強まっている。
昨今、欧米諸国を中心に、中核条約未批准国や、これに違反する国や企業の行動に対して厳しい視線が注がれ、生産過程で人権侵害を助長する原材料・産品の調達・貿易を規制する動きが広がりつつある。これに伴い、人権デュー・ディリジェンスにかかる動きが加速しており、米・英・仏・独・蘭・豪・EUなどが既に法制化している。日本でも政府の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(2022年9月)が策定・公表され、尊重すべき人権の範囲に中核条約が含まれた。このような中、日本の経済界からも日本企業が人権を尊重する経営を国内外で推進していることの証左として、未批准の中核条約を批准すべきとの声が高まっている。
第111号条約については、日本では性にもとづく区別を設ける規定や公務員の政治的行為を一律的に制限する規定などが批准の課題となっている。
政府は、憲法第14条に「法の下の平等」が明記されていることを踏まえ、日本が差別や人権の軽視を許さない国であることを国内外に示す意味でも、第111 号条約の早期批准に向け、課題となっている法令の改正に着手するなど具体的な取り組みを加速させなければならない。

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