2023年度重点政策|4 雇用の安定と公正労働条件の確保

4 雇用の安定と公正労働条件の確保

事業再編・倒産時等における労働者保護ルールの整備・見直しを ~担保法制の見直しにあたって~

グローバル化の進展などによる事業環境の急激な変化を受け、企業の事業再編等が増加している。企業の倒産や事業再編は労働者の雇用や労働条件に大きな影響を及ぼすが、その際の労働者保護ルールについては、2000 年以降、法整備に向けた検討がなされていない。
そのような中、政府では、企業の資金調達をしやすくするため、動産・債権を担保とする譲渡担保ルールの明確化や、労働契約を含む企業の総財産を担保とする制度の創設に向けた検討がすすめられている(図1)。
現状でも、倒産時においては金融機関等(担保権者)の担保が法的に優先され(図2)、労働債権回収に充てられる財産がほとんど残っていない実態だ。労働者保護ルールの整備が進まない一方で、担保取引のみが活性化すれば、従前からの課題である倒産時における賃金や退職金等の労働債権の回収が一層困難になる懸念がある。
労働者の生活の糧である賃金等の十分な保護をはかるためには、倒産時に労働債権を抵当権や担保権よりも優先させる制度を早期に整備することが必要だ。
また、企業の総財産を担保とする制度について、金融庁における検討では、企業が返済不能に陥り総財産を売却する手続にあたって優先的に労働債権の弁済に充てる枠組みや、原則として事業譲渡時に事業を解体しないまま承継することが盛り込まれた。しかし、今後具体的な制度化にあたっては、さらなる労働者保護策の拡充が必須である。
事業の維持・発展には、労働者の理解と労働による寄与が不可欠である。単なる資金調達の円滑化だけでなく、あらゆる事業再編において、労働組合等への事前の情報提供や協議の義務づけなど、労働者および労働債権保護ルールの法制化に向けた検討を早急に行うべきである。

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