1
デジタル社会インフラの整備促進と産業構造の変化への対応および中小企業への支援強化
- ○経済や産業の構造変革に対応するため、社会基盤やあらゆる産業において、AI・IoTなどのさらなる活用をはじめ、DXの実現に向けた環境整備を積極的に支援する。また、「デジタル・ガバメント」を実現し、国民生活の利便性向上や非常時におけるセーフティネットの構築につなげる。その際、政府の情報システムの安全性を強化する観点で、機密性の高い情報から国産クラウドサービスの採用を進める。
- ○DXやGXなどの進展により起こり得る、産業・経済・社会への様々な変化について、具体的な対応策を検討するための労使が参画する枠組みを早急に構築する。また、企業における人的投資、設備投資、研究開発に対する支援を着実に実施する。特に、雇用形態や企業規模にかかわらず、変化に対応した働く者の学び直しや企業主体の職業能力開発に対する支援を強化する。
- ○サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正な分配の実現に向けて、「働き方」も含めた取引の適正化を進めるため、「パートナーシップ構築宣言」の取り組みを推進・拡大する。あわせて、関係法令遵守の徹底、公正取引委員会および中小企業庁の体制・権限を強化しつつ中小企業への支援策を拡充周知する。そのうえで2023年11月に公表された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の周知徹底、および業種別マニュアルの整備を行い、適正な取引に向けた実効性を高める。
2
「公平・連帯・納得」の税制改革の実現
- ○低所得者の負担軽減と就労支援に向けて「給付付き税額控除」の仕組みを構築し、社会保険料・雇用保険料(労働者負担分)の半額相当分を所得税から控除する「就労支援給付制度」や、基礎的消費にかかる消費税負担分を給付する「消費税還付制度」を導入する。
- ○税による所得再分配機能の強化に向けて、金融所得課税を抜本的に強化するとともに、将来的な所得税の総合課税化を検討する。また、所得税や相続税の累進性の強化に加えて、人的控除はできるだけ社会保障給付や各種支援策等に振り替え、残すものは高所得者ほど税負担の軽減効果が大きくなる所得控除から税額控除に変えることを基本とする。
- ○自動車関係諸税について課税根拠を総合的に整理し、自動車重量税の廃止など税の軽減・簡素化をはかる。その際、地方財政に配慮し、必要な税財源を確保する。
3
マイナンバー制度の理解促進と一層の活用
- ○マイナンバー制度の活用によってめざす社会の国民への理解を深めつつ、公正・公平な税制と安心・信頼の社会保障制度を実現するため、正確な所得捕捉による真に支援を必要とする層へのプッシュ型支援制度の構築と、金融所得課税を含む所得税の総合課税化の実現に向けて、マイナンバーとすべての預貯金口座のひも付けを行う。
- ○マイナンバー制度に対する国民の信頼回復に向けて、誤登録などの再発防止を徹底するとともに、個人情報管理体制をより一層強化する。そのうえで、マイナンバーカードの普及促進をはかる。あわせて、デジタル行政の促進による国民の利便性の周知を徹底するとともに、さらなる利便性向上をはかるため、行政手続きのデジタル化やマイナポータルの活用を促進する。
4
雇用の安定と公正労働条件の確保
- ○外国人技能実習制度に代わる「育成就労制度」および特定技能制度の実効性確保に向けては、制度所管省庁および業所管省庁において十分な予算を確保し、外国人労働者の適正な受入れに関する指導・監督を強化する。また、特定産業分野における人手不足の状況や賃金水準の動向、日本人の就業率等についての調査および統計整備や、評価試験の適正化などを行い、安易な受入れ拡大は認めない。
- ○雇用労働に近い働き方をしているにもかかわらず労働法の保護を受けることができない者について、フリーランス新法にもとづく契約ルールの適正化やハラスメント防止などの実効性を確保するとともに、最低報酬の設定、仲介業者に対する法規制など法的保護の実現をはかる。あわせて、労働者と類似の作業に従事する個人事業者等に対して労働者と同様の安全衛生水準を確保する。また、早急に「労働者概念」の見直し・拡大に着手する。
- ○不当な解雇を拡大しかねない解雇の金銭解決制度は導入しない。
- ○「就職氷河期世代」の良質な雇用・就労機会の実現に向け、当事者の個別の事情や希望を踏まえつつ、将来を見据えた中長期的な能力開発を実施し、適切な就職支援・定着支援を行う。また、そのために、ハローワークなどの支援機関の相談体制の強化をはかる。
- ○担保法制の見直しに際し、労働債権および労働者保護を確実にはかるため、ILO第173 号条約(労働債権の保護)の趣旨を踏まえ、担保権より労働債権を優先させる制度を新たに創設する。また、事業譲渡、合併など、あらゆる事業再編において、労働組合などへの事前の情報提供・協議を義務づけるなど、労働者保護をはかるための法制化を行う。
- ○今後の雇用失業情勢の変動などに対応し得るよう、雇用調整助成金などに必要な予算措置を講じるとともに、労働保険特別会計への一般会計からの機動的な繰り入れなどを通じて財政の安定化をはかる。また、雇用保険制度の国庫負担割合の引き上げとともに、雇用の維持・安定など雇用保険が本来果たすべき機能を強化する。
- ○地域における産業・雇用を維持する観点から、国・地方自治体による雇用創出事業を強化するとともに、ハローワークなどによる求人の開拓、職業訓練、相談・マッチング機能を強化する。
- ○働く者の技術・技能やキャリア向上に向けて、非正規雇用で働く者や障がい者などを含め、誰もが希望する能力開発等の機会を確保されるよう、「人への投資」に関する財政支援を拡充するとともに、中小企業等へのノウハウの提供や相談援助の強化、制度の周知徹底をはかる。
- ○自動車運転業務、医師、建設事業等を含め時間外労働の上限規制が確実に遵守されるよう監督・指導を徹底し、長時間労働の是正をはかる。働き方改革関連法の附則の検討規定にもとづき、法律の施行状況を検証し、労働者保護の強化とともに、制度の実効性を高める観点から必要な措置を講じる。
- ○最低賃金について、中期的に国際標準を意識した一般労働者の賃金中央値の6割水準をめざし、早期の実現に向けた一層の引き上げと環境整備をはかる。あわせて、監督体制の強化などを通じ、履行確保を徹底する。
- ○ILOの「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関する条約の批准に向け、ハラスメント対策関連法を改正し、ハラスメントそのものを禁止する規定を創設する。あわせて、性的指向・性自認に関する差別・偏見をなくし、すべての人の対等・平等、人権の尊重のために、性的指向・性自認(Sexual Orientation and Gender Identity:SOGI)に関する差別を禁止する法律を制定する。
5
ジェンダー平等で多様性を認め合う社会の実現
- ○性的な被害、家庭の状況などにより日常生活または社会生活を円滑に営む上で困難を抱える女性およびその恐れのある女性に対し、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(2024年4月1日施行)にもとづき、多様な支援を包括的に提供する体制を整備する。その際、NPOなどの民間団体に対する支援を強化するとともに、関係機関と民間団体との緊密な連携により支援の実効性を確保する。あわせて、支援を受ける女性のプライバシーをはじめとする権利擁護のため、支援を評価する仕組みや官民の連携のあり方について継続して検討を行う。
- ○政府は「第5 次男女共同参画基本計画」において「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取組を進める」との目標を掲げているが、世界の潮流が2030年までの完全なジェンダー平等の実現(いわゆる203050)であることを踏まえ、女性の参画拡大を喫緊の課題とし、さらに踏み込んだポジティブ・アクションの実行などを通じた早期の目標達成をめざす。
- ○結婚により姓を変更している圧倒的多数は女性であり、その不利益や負担が著しく偏っていること、および旧姓の通称使用に限界が来ていることを踏まえ、男女不平等を是正し、人権の尊重、個人の尊厳を基底に置いた社会実現のため、選択的夫婦別氏制度を早期に導入する。
6
すべての世代が安心できる社会保障制度の確立
- ○生活困窮者自立支援制度の相談・就労支援など実施体制の強化を着実に推進するため、現場を担う人材や財源を確保する。また、ひとり親世帯やヤングケアラーなど多様で複合的な課題を抱える世帯や人を支援するため、重層的支援体制整備事業や住居確保の取り組みを強化する。
- ○2024年度開始の医療、介護、障がい福祉の各計画や診療報酬、介護報酬、障がい福祉サービス等同時改定による患者・利用者への影響を検証し、良質で切れ目のない提供体制を構築するとともに、とりわけ在宅ケアを支えるサービスの充実をはかる。同時に、現場を担う労働者の賃金・労働条件を継続的に改善する取り組みを進める。
- ○社会保険の適用拡大を着実に進めるとともに、すべての労働者への完全適用に向けて、適用要件を撤廃するなど制度の見直しをはかる。また、次期財政検証結果を踏まえ、将来的な基礎年金の給付水準の底上げを実現する。
- ○希望するすべての子どもが利用でき、安全で質の担保された子ども・子育て支援サービスの提供体制の確保に向けて、保育所などの職員配置や賃金・労働条件の改善をはかる。こども基本法にもとづき、子どもの権利擁護、子ども・子育て政策の立案・実施、子どもに対する体罰の禁止などの周知徹底、児童相談所などの体制強化を支援する。
7
脱炭素社会実現に向けた「公正な移行」の具体化と予算措置
8
東日本大震災からの復興・再生と防災・減災対策の充実
- ○被災地などの農水産物や食品に関する風評対策として、安全証明や販路拡大の支援を徹底するとともに、国内外に向けて迅速かつ正確な情報発信を行う。
- ○被災による心的ストレスや特別な配慮など子どもの支援を充実させるため、スクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカーの常勤配置とすべての学校で養護教諭の配置・増員を行う。
- ○地域コミュニティの希薄化など、自然災害の被災地が抱える問題の複雑化・多様化を踏まえ、被災者が安心して生活を再建できるよう、アウトリーチ型の見守り機能や相談体制を含む重層的な支援を強化する。プッシュ型の防災情報がすべての人に届くよう複数の伝達手段を確保するとともに、個別避難計画の策定、避難所の運営などへの多様な意見の反映を促進するなど、人命を最優先にした防災・減災対策を推進する。
9
教育機会の均等実現と学校の働き方改革を通じた教育の質的向上
10
民主主義の基盤強化と国民の権利保障
- ○有権者の投票機会の確保を念頭に電子投票制度の導入を検討する。また、導入までの間は、共通投票所設置の拡大、期日前投票時間の弾力的な運用を検討するとともに、高齢者、障がい者、傷病者、妊婦、海外赴任者などの選挙権保障のため、郵便等投票制度の手続きの簡素化を進める。
- ○若者の政治意識の醸成に向けて、義務教育段階から主権者教育を行う。また、選挙権年齢にあわせて、被選挙権年齢も18歳以上とするなど、公職選挙法については時代の変化に応じた見直しを進める。
- ○参議院選挙の合区については、都道府県という単位の政治的重要性に鑑み、地方の事情に精通した全国民の代表としての活動など、参議院に二院制のもとでの独自の役割を定めることによって解消する。
- ○政治分野における男女共同参画推進のため、クオータ制導入および女性議員の割合に応じた政党交付金の傾斜配分について法整備を行う。また、候補者・議員の仕事と生活の両立を支える環境整備や、あらゆるハラスメントを対象とした対策の強化を行う。
11
未批准のILO中核条約の批准を通じたディーセント・ワーク実現