新シリーズ 「職場から始めよう運動」取り組み事例ファイル
[File.3]連合群馬「クイズで学ぶ 高校生ワークルール講座〜アルバイト編」

「職場から始めよう運動」とは、連合がすべての働く者の処遇改善をめざして2010年からスタートした取り組みだ。「仲間を増やす」ことは労働組合活動の基本。でも、何から始めればいいのか分からないという現場からの声を受けて、「まずは同じ職場で働く非正規雇用の仲間の課題に向き合おう」と始まった。以来15年間、パートタイマー・契約社員の組合加入や処遇改善、関連企業での労働組合結成など様々な取り組みが積み重ねられ、「取り組み事例集」の作成やシンポジウムの開催を通じて共有してきたが、もっと広くタイムリーに発信していきたいとRENGO ONLINEでシリーズ化することに。第3回で紹介するのは、連合群馬の高校生を対象としたワークルール教育。2026年2月、県内の高校で1年生162名に向けて「クイズで学ぶ 高校生ワーク・ルール講座~アルバイト編~」を実施し、「ルールを学ぶとともに、働くことについて考える機会にもなった」と好評を得たという。どんな問題意識から実施に至ったのか、労働組合として高校生に何を伝えようとしたのか、労働組合がワークルール教育に取り組む意義とは何か。連合群馬の関根悟会長と、実際に講義を行った下妻良至副事務局長に話を聞いた。
連合群馬
群馬県内の353の労働組合・支部(組合員数約95,000名)が集まり、「すべての県民が安心して暮らせる地域社会の実現」をめざして活動している労働団体。県内に8つの地域協議会(地協)を置いている。
労働組合がワークルール教育に取り組む意義とは?

関根 悟(せきね さとる) 連合群馬会長
労働組合との最初の接点としてのワークルール教育
—群馬県の若者の雇用情勢は?
高卒者の県内就職率は7割を維持していますが、高校卒業後に首都圏の大学・専門学校等に進学し、そのまま県外に就職する若者は依然として多い。多くの県内企業で人手不足が深刻化し、若者の県外流出が大きな課題となっています。連合群馬では、若者の県外流出を食い止めるため、「政策・制度 要求と提言」において、地元企業への就職を促す施策や奨学金返還支援制度の拡充、リスキリング推進などを求めるとともに、賃金・労働条件の底上げに向けて、適正取引や最低賃金引き上げに継続的に取り組んできました。県の地域別最低賃金は、昨年ようやく1000円を超え1063円になりましたが、県政は連合群馬の提言を尊重し施策に反映してくれていると思います。「移住希望地ランキング」(ふるさと回帰支援センター)では 2年連続で 群馬県が1位となりましたが、これは県知事の積極的なトップセールスも奏功していると思います。
—労働組合がワークルール教育に取り組む意義とは?
その根本は「組織拡大」だと考えています。ワークルール教育は、労働組合を知ってもらう最初の接点、入口です。社会人講座やワークルール講座でも、県内の産業・企業を紹介するとともに、職場に労働組合があれば、あるいは労働組合をつくれば、労働条件や労働環境を良くしていくことができると伝えています。2026FIFAワールドカップの日本代表チームの善戦は記憶に新しいと思いますが、1993年のJリーグ設立を機に、全国各地で子どもたちがサッカーに親しみ、トップ選手をめざそうという環境がつくられていったからこそ、今、世界一をめざせるチームの活躍をみることができたのだと思います。人材育成は時間がかかりますが、疎かにすれば組織の衰退を招きます。労働組合も、若手の育成にもっと目を向け、資源を投入していくべきだと考え、会長就任後、「人材育成」をテーマに構成組織や地域協議会との対話活動(“関根会長が行く!”2026年対話活動)を始めました。活動がうまく回っている組織に共通しているのは、青年委員会など若手組合員の組織が健在で、その中でリーダーとなる人材が着実に育っていること。この裾野を広げていくためにも、労働組合との最初の接点となる「高校生を対象としたワークルール講座」は重要であり、連合群馬を挙げてしっかり広げていきたいと思っています。
高校生のアルバイト経験は社会との最初の接点

—高校生を対象としたワークルール講座を実施することになった経緯とは?
発端は、連合群馬が構成組織(8産別)の協力を得て、2024年に県内の公立高校で実施した「社会人講座」です。県内にはどんな産業・企業があり、どんな仕事をしているのか、自動車や電機、流通・小売、介護などの労働組合の役員が講師になり、職業紹介を行いました。群馬県は首都圏に近いこともあり県外に進学・就職する生徒も多いのですが、少しでも県内で一緒に働く仲間を増やしたいという思いで企画したものです。
この「社会人講座」はたいへん好評だったのですが、その振り返りをする中で担当教員から「高校に入るとアルバイトを始める生徒もいるが、時々アルバイト先でトラブルに巻き込まれたという相談を受ける。働く上で気をつけることやトラブルへの対処法などを伝えたいが、その機会がない」という投げかけがありました。実態を聞くと、学校としてアルバイトを推奨しているわけではないが、高校1年の夏頃から、学校の許可を得てコンビニなどでアルバイトを始める生徒が一定数いるとのこと。連合群馬として「アルバイトは高校生が社会とのつながりを持つ最初の経験。その時の経験は、その後の就業意識にも大きく影響する」と受けとめ、学校側に「クイズで学ぶ『高校生ワーク・ルール講座~アルバイト編~』」と題した出前授業を提案したというのが経緯です。

連合群馬が高校を訪問した際に使用した説明資料
高校生も巻き込まれている「闇バイト」への注意喚起も
—ワークルール講座の内容は?
連合群馬からは、前任の中林真啓副事務局長が何度も学校に足を運び、担当教員と相談しながら講座の内容を具体化していきました。厚生労働省の調査(高校生に対するアルバイトに関する意識等調査(2016年))では、アルバイトをしたことのある高校生のうち、約32%がアルバイト先で何らかのトラブルがあったと回答。主なトラブルとしては、労働条件の明示がなかった、深夜残業させられた、試験期間に休みをもらえなかったなどがありますが、こうしたトラブルへの対応は「アルバイトを辞めた」「何もしなかった」など泣き寝入りに近いケースも。そこで、厚生労働省の資料や連合の『働くみんなにスターターBOOK』を参考にしながら、実際にアルバイト先で想定される事例をピックアップし、クイズ形式でわかりやすく知識を習得できるプログラムを作成することにしました。
この作業の最中、2025年10月の連合群馬定期大会で中林副事務局長が退任されたことから、私が新任副事務局長として担当を引き継ぎました。同校でアルバイトをしている生徒の比率は高くはありませんが、これからアルバイトをしたいと考えている生徒もいます。事前にワークルールを学ぶことはトラブルの未然防止につながるとの観点から、2026年2月に1年生全員(162名)を対象に実施することにしました。


連合群馬が出前授業で使用する設問と回答の一例
もう一つ、私から追加で提案したのが「闇バイト」への注意喚起です。高校生が「高額バイト」に応募して犯罪に巻き込まれる事件が相次ぎ、学校側も対策の必要性を感じていたことから、急きょプログラムに組み込みました。当日は、広い体育館で162人の生徒さんを前に私がひとりでお話ししたのですが、緊張しましたね。
自分事だと受けとめてもらえるように
—高校生にワークルールを知ってもらうために工夫したことは?
労働法や労働組合の専門用語を並べるだけでは理解してもらえません。生徒のみなさんが自分事だと受けとめてくれるよう、実際の事例をもとにクイズを作成しました。例えば[勉強に専念したいので、アルバイトを辞めたいと店長に言ったところ、「次の人を自分で見つけてこないと辞めさせない」と言われました。お店には迷惑をかけられないので、誰かを紹介しないといけませんよね?]と問いかける。答えはNOですが、なぜ紹介する必要がないのか、根拠となるルールや情報もできるだけかみくだいて解説しました。参考資料として連合『働くみんなにスターターBOOK』も全員に配布しました。
働く上で大事なことは何か
—特に伝えたかったことは?
労働組合は働く人たちの集合体。知識だけでなく、私たちは働くことを通して人とつながり、社会を支えているということを伝えたいという思いがありました。そこで、働く上で大事なことは何か、自分の経験も踏まえてお話ししました。私も学生時代にアルバイトをしましたが、困っていることがあっても「大人」には相談しづらかったと記憶しています。でも、そのままにしているとトラブルに発展することもある。だから、困ったことがあったら、店長でもいいし、学校の先生や家族でもいいので、すぐに大人に相談してほしいと伝えました。また、お客さまにとっては、社員もアルバイトも「お店の人」。自分の接客がお店の印象を良くすることもあれば、悪くすることもある。高校生であっても、働く以上は、その自覚をもって働いてほしいということも伝えました。

アルバイトは、たんにお金を稼ぐためだけではなく、将来自分がやりたいことは何かを見つけていくステップにもなります。私は、専門学校で機械工学を学び、電機関係の製造現場に就職しましたが、仕事の進め方や職場の人間関係に悩むようになり、思い切って流通・小売業のヤマダ電機に転職しました。内気な性格で接客には不安もありましたが、商品について一生懸命勉強し、「当たって砕けろ」の精神で日々お客さまに向き合う中で、仕事が面白い、もっと成長したいと思えるようになりました。そんな経験も交えながら、アルバイトといえども、自分の興味のある仕事にチャレンジし、その中で自分に向いている仕事を見極めることも意識しながら働いてみてほしいと。その上で、連合群馬の立場からは、できるだけ県内に就職してほしい、その時はぜひ労働組合のある会社を選んでほしいという呼びかけもさせていただきました。
働くことはすぐ近くにある未来
—生徒のみなさんの反応は?
ありがたいことに熱心に耳を傾けてくれました。解答用紙に「感想」欄をつくりましたが、アルバイトをしている生徒からは「クイズを通して自分の経験でおかしいと思ったことは、やはりおかしかったのだとわかった」「アルバイトでも社会の一員であるため、社会人としてのマナーをしっかり守ろうと思った」「困ったことがあったら大人に相談するようにしたい」などの書き込みがありました。これからアルバイトをしたいと考えている生徒からも「初めてアルバイトする人には不安でいっぱい。あらかじめ内容や労働時間、給料をしっかり確認してから面接を受けたい」「普段の授業ではやらないので、とてもためになった。就職したら今日のことを思い出したい」と…。私が伝えたいと思ったことは、しっかり伝わったのではないかと思います。
—これからの取り組みや課題は?
高校生を対象にしたワークルール教育をもっと広げたいと考え、現在、県内の高校をまわって提案しているところです。どの学校も、すごく興味は持ってくれるのですが、学校としてアルバイトを推奨していると受け取られることを懸念される。だから、「高校時代にアルバイトをしなくても、働くことはすぐ近くにある。その時に困らないよう最低限知っておくべきワークルールを身につけてほしいし、闇バイト対策も待ったなし」だと説得しているところです。 実際に今回の講座を実施してみて、ワークルールを学ぶ上でも、働くこととは何かを考える上でも、高校生になった時が最も重要なワークルール教育のタイミングだと改めて思っています。
(構成:落合けい)
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