新シリーズ 「職場から始めよう運動」取り組み事例ファイル
[File.1]UAゼンセン・コーナン商事ユニオン
パートタイマー1万2389人を組合員に!

「職場から始めよう運動」とは、連合がすべての働く者の処遇改善をめざして2010年からスタートした取り組みだ。「仲間を増やす」ことは労働組合活動の基本。でも、何から始めればいいのか分からないという現場からの声を受けて、「まずは同じ職場で働く非正規雇用の仲間の課題に向き合おう」と始まった。以来約15年間、パートタイマー・契約社員の組合加入や処遇改善、関連企業での労働組合結成のみならず、若者や外国人労働など様々な取り組みが積み重ねられ、「取り組み事例集」の作成やシンポジウムの開催を通じて共有してきたが、もっと広くタイムリーに発信していきたいとRENGO ONLINEでシリーズ化することに。初回は、UAゼンセンの「コーナン商事ユニオン」の山口由紀子中央執行委員長にインタビュー。会社側にパート社員の組織化の必要性を粘り強く訴え、労使合意からわずか半年でほぼ100%の加入を達成した、その手腕に迫った。
コーナン商事ユニオン(UAゼンセン・流通部門住生活関連部会)
全国にホームセンターを展開するコーナン商事(本社・大阪)の労働組合として、2002年11月に結成。2024年9月に「パートナー」と呼ぶパート社員1万2389人を組合員の対象とするよう方針を改め、加入活動の結果総勢1万6000人を超える組織となる。同時に従来からあった正社員のみが対象だったユニオン・ショップ協定を、雇用区分に関わらず全従業員を対象とする内容に改定した。組合費は年齢・雇用区分を問わず全組合員同率の1.2%。

職場で求められる「過半数組合」
—パート社員を組織化するにあたっての問題意識とは?
職場では、正社員の4倍以上の数のパート社員(パートナー)が働いています。ユニオンには、パート社員からも職場の人間関係などの相談が多数寄せられ、できるだけ解決したいと対応するものの、「組合員ではない」ことを理由に会社の協力が得られないことが少なくありませんでした。また、全国に600ある店舗・事業所では、36協定締結や就業規則変更時の意見聴取など日常的に労働者代表機能が求められますが、労働組合は過半数組合の要件を満たしていませんでした。こうした状態が続けば、複雑かつ多様化している様々な労働問題に対して外部団体の介入や労働基準監督署への駆け込み相談が行われる可能性が高まります。パート社員の組織化を急ぐ必要があると考え、書記長であった数年前から、労使協議会の場で繰り返し「ユニオン・ショップ協定における組合員範囲の拡大」を求めてきました。
同業他社の動向や退職代行に対する危機感
—数年越しの説得で会社が合意に至る決め手になったのは?
これはパート社員のためだけではなく、「企業防衛」として必要なことだと説得しました。例えば、36協定を締結するには過半数代表者を選挙で選出する必要がありますが、本当に600事業所すべてでそれができているのか。もし、できていない事業所があり労働基準監督署に不備を指摘される事態になれば、会社にとって大きなダメージになります。また、最近当社でも退職代行業者を利用する社員が出ていることから、トラブルに発展した場合、労働組合としても会社に協力して対応できるよう組織拡大を進めたいと申し上げました。さらにUAゼンセンの流通部門生活関連部会に所属する同業他社組合の多くが、すでにパートタイマーの組織化を完了していることも伝えました。おそらくこれが最後の一押しになったのではないかと思いますが、2024年3月、ユニオン・ショップ協定改定の労使合意に至りました。
組合員である「店長」が加入説明会を開催
—そこからどう動いたのでしょう?
2024年6月、全国600店舗の店長を集めた会社の会議の場で時間をいただき、組織拡大の経緯とこれからの組織化方法について、私から説明を行いました。店長は、以前は非組合員でしたが、3年前、私が委員長になったタイミングで人事制度が改定され、組合員の範囲に含まれていたんです。そこで、まず店長に向けて協力を求めました。
続いて7月には「パートナーのユニオン組合員範囲拡大について」と題する、社長と委員長からのメッセージを全社に送信。8月からの1カ月間に各店舗で加入説明会を実施し、対象者一人ひとりに加入届の提出をお願いしました。そして、契約更新日である9月16日に新たなユニオン・ショップ協定を発効させ、同日パート社員全員に組合員の権利を付与しました。パート社員には無期転換を選択した人もいれば、労働時間も様々。契約期間や労働時間で区分すると混乱するので、新たな組合員の範囲は「①正社員管理職 ②65歳以上 ③学生アルバイト」を除く全従業員としました。

—加入説明会はどのように?
基本的には、店長がそれぞれの店舗の対象者を集めて説明会を行いました。器材として「ユニオンハンドブック」を作成・配布しましたが、店舗によって温度差があるとの声も聞こえてきて、急きょ「8分のアニメーション動画」を制作。ハンドブックと同じ内容ですが、動画にすると分かりやすいと好評でした。この説明会を1カ月間でやり切りました。



—9月時点での加入状況は?
加入届を提出しなかった人は、想定より少ない百数十人ほど。そこで組合費徴収は半年後の2025年3月からとし、この「お試し期間」の間に執行部が全国の職場をまわって未加入者への再説明を行いました。ユニオン・ショップ協定とは「組合員でなければ雇用しない」という協定です。「強制なら仕方ない」という受け止めもありましたが、私は、執行部に「組合の側から『強制』という表現は絶対にしてはいけない」と伝えました。 実は、今回の組織化にあたっては、2023年に1万6000人を超えるパートナー社員を組織化したスギ薬局ユニオン(UAゼンセン)の委員長から、「加入を拒む方も一定数出るけれども、ていねいに説明・説得を行うことが大事」だというアドバイスをもらっていたんです。そのおかげで、組合費徴収が始まる3月までに、ほぼ全員から加入届を受け取ることができました。
店長のみなさんの協力があってこそ
—これほど短期間での組織拡大が可能だったのは?
私自身がこれは短期でやり切ろうと心に決めていました。ユニオン・ショップ協定の改定による組織化であっても、個々人の同意は重要です。ただ、加入促進に時間をかければかけるほど、否定的な受けとめが広がる余地が生まれてしまうと考え、集中的に説明会を実施しました。
それができたのは、やはり店長のみなさんの協力があったからこそ。これまでも、パート社員から労働組合に相談があると、その店舗の店長に対応をお願いすることが多々ありました。そういう経験から、店長自身にも組織化は必要なことだと納得してもらえたことが、短期間の組織拡大につながったと思います。
—店長が労働組合について説明できるのはなぜ?
十数年前から、毎年新入社員を対象に岡山にある「UAゼンセン友愛の丘」で1泊2日の組合員研修を実施してきたんです。私が組合の専従役員になった当時、執行部から職場委員やエリア長に活動を投げかけても反応が乏しいと感じました。それがトップダウンの限界であるなら、ボトムアップで最初に組合員であることを自覚する機会をつくったらどうか、そうすればその後の活動にも関わってもらえるのではないかと考えたんです。プログラムは、「労働組合とは何か」から始まり、UAゼンセンの講師による政治研修会、共済を知る人生ゲーム、そしてバーベキュー交流会をセット。グループに分けて開催するので、私は3日連続でバーベキューだったりしますが、現在の店長の多くも研修受講者。この十数年の積み重ねが、店長によるユニオン説明会を可能にしたと言えるのかもしれません。


UAゼンセン友愛の丘での「組合員研修」の様子(コーナン商事ユニオン「アエル」より)
組合費は同率、サービスも同等
—組合費や組合員サービスは?
パート組合員の組合費については、率を下げたり、定額にするところもあるのですが、全員一律1.2%とし、同じサービスを提供しています。ここは執行部としてこだわったところです。
—パート組合員の反応は?
実際に加入してみると、みんなそんなに労働組合なんてイヤだと思っている印象はないんです。なかには、「組合費の元を取るには?」と聞かれたりしますが、これは活動に参加してもらうのが一番。共済の慶弔金や「福利厚生倶楽部」などのお得なサービスの周知に努めたところ、最近の組合事務所は慶弔金申請の用紙に埋もれている状態に…。フォロー活動としては、執行部が1年間で600事業所を必ず1周すると決めました。
—賃金・労働条件の取り組みは?
実はコーナン商事はパート社員の待遇がすごくいいんです。定期昇給、一時金、退職慰労金があり、通勤費も全額支給。有給休暇の取得率はほぼ100%。パート社員の労働条件について何を要求すればいいのか分からなかったというのが、組織化が遅れた原因でもありました。ただ、ここ数年、地域別最低賃金の急激な上昇が続いて、定昇がそれにまったく追いついていない。2025賃闘では、UAゼンセンの要求基準に従って要求を提出し、多少の上乗せができたので、組合に加入して良かったと言ってくれる人もいました。
パート組合員の参画に向けて
—今後の課題は?
パート社員が多数を占める組織になりましたので、組合運営にその声を反映させていくためにも、次期改選に向けて執行部への参画を進めるための議論を始めたいと思います。また組合員の男女比率も変わりましたので、改めて女性参画にも取り組みたいと考えています。
労使協議で検討したいのは、65歳以上の再雇用者の組織化です。今回、対象外となりましたが、現状、体調等に問題がなければ75歳まで働けるので、「私たちも組合に入りたい」という要望が多数寄せられています。過半数組合を維持するためにも、ここは見直しを急ぎたいと思っています。
—あらためて組織拡大の意義とは?
流通業界は、どこも深刻な採用難・人手不足に悩んでいます。要員不足が職場の様々な問題の背景にあるとの指摘もあります。働く人たちが抱える問題について、職場に相談を受けるクッションになるところがないと貴重な人材が流出していまいかねません。今回の組織拡大が実現したのも、労使で人材確保・人材流出防止に取り組む必要があるという認識を共有できたからだと思っています。組合員のみなさんが「ここで働いていて良かった」と思えるように日々活動に取り組んでいきたいと思います。
(構成:落合けい)