あなたのまちの「連合」
⑦連合高知

地域で働く人を支える「縁の下の力持ち」地方連合会の取り組みを紹介する本シリーズ。6回目は女性委員会の活動が盛んな連合高知を訪ねました。四役だけでなく多くのメンバーが、できる時に仕事を担うという分担の仕組みが、交流会の開催や労働組合へのヒアリングといった多彩な取り組みを支えています。

連合高知のみなさん
左から市川稔道事務局長、池澤研吉会長、丸山玲子副事務局長

一般組合員も委員会に参加 ワーママに祖母世代も

連合高知の女性委員会は、産業別労働組合の執行役員以外にも幅広い組合員に門戸を開いています。「連合高知を知ってもらい裾野を広げる場として、なるべく多くの組合員に参加してもらいたいと考えています」と、連合高知副事務局長の丸山玲子さん。メンバー24人も独身者やワーキングマザー、ベテラン世代までさまざまで、年齢も30~60代に及びます。イベントや定例会議の時、メンバーが連れてきた子どもと『おばあちゃん』世代のメンバーが一緒に遊ぶ光景も見られるそう。

委員会では毎年いくつかの産別・企業別労働組合を訪問し、ジェンダーに関する課題や女性たちのホンネなどをヒアリングしています。中にはヒアリングをきっかけに委員会の活動を知り、勉強会や交流会に組合員を送り出してくれる組織もあるといいます。執行部、青年委員会とともに有識者を招いた勉強会「ジェンダー平等リーダーセミナー」を開催したり、女性を対象とした電話での労働相談に対応したりもしています。

女性委員会メンバー対応による労働相談ホットライン

また年1回の情報交流会は、美味しいお弁当を囲みながら「女子会」感覚で職場での愚痴や苦労話、成功事例などを話し合う場となっています。「得られた意見を、2024年12月から始まる連合ジェンダー平等推進計画(フェーズ2)にも生かしたいと考えています」(丸山さん)

今年9月には、高知労働局へ仕事と育児や介護、不妊治療を両立できる環境整備などを求めた要請書も提出。メンバーが職場で受けたカスタマーハラスメントなど、リアルな事例も伝えたといいます。

メンバーが仕事や育児、介護などと盛りだくさんの組合活動を両立できるのは、「やれることを、その時やれる人が引き受ける」という業務分担が当たり前になっているから。委員長に仕事が偏らないよう、幹事会のレジュメや報告書の作成を四役が持ち回りでこなすほか、幹事の仕事をサポートする「サブ幹事」という役職も設けています。

「お互い様の精神で仕事を分担すれば、幹事が役員や委員長を引き受けることへの心理的なハードルも下がります」と、丸山さん。役割分担が功を奏し、独身時代に活動していたメンバーが結婚・出産を経て委員会に何人も「カムバック」しています。

連合高知女性委員会「女性の情報交流会」の様子

「イクメン化」進む青年委員会

市川稔道事務局長は「女性たちは現場で日々、男女の待遇の差などを体験しているだけに、『社会に働きかけたいこと』が明確です。このため目標意識を高く持って活動できていると思います」と評価します。池澤研吉会長も「女性委員会の頑張りが、男性中心の組織である青年委員会のジェンダー意識を引き上げる役割も果たしてくれています」と話しました。

青年委員会も毎年、組合員同士の交流の場として情報交流会やクリスマスパーティー、「ユースラリー」というイベントなどを開催しています。昨年のユースラリーは、誰でもできるスポーツ「モルック」の体験などを行い、産別の若手組合員や家族連れなど48人が参加しました。

クリスマスパーティーの様子

委員会メンバーもイベント参加者も、主力は30~40代。最近は育休を取ったメンバーが幹事会で体験談を話し、それに触発されて他のメンバーも相次いで育児休業を取得するという「イクメン」化が進んでいるそうです。育休復帰後、子育てしながらオンラインで幹事会に参加するパパたちの姿も見られるようになりました。

「職場でも、リモートワークを活用しているホワイトカラーの組合員が多いので、組合活動のオンライン化も比較的スムーズに進みました。育児をしながら活動に参加するメンバーが4人、5人と増えてきたのはとてもいいことだと思います」(丸山さん)

青年委員会も女性委員会も、業種を超えてさまざまな人と出会えることが参加の醍醐味です。青年委員会出身者には、市会議員で活躍している人もいます。

「若者の政治離れは、組織内でも選挙のたびに課題となっています。自分たちの仲間が議員になれば、遠かった政治の世界が身近に感じられるようになり、興味・関心も高まるのでは」と、市川さんは期待します。

ただ青年委員会は基本的に、産別が設定する年齢に達すると同時に卒業となります。丸山さんは「昔に比べて産別の役員交代の期間が早くなったこともあり、横のネットワークを作りづらくなっているのが課題です」とも指摘しました。

丸山玲子連合高知副事務局長

男女ともに低い所得水準 ダブルワーク、トリプルワークの女性も

高知県の労働環境を巡る最大の課題は、男女ともに所得が低いことです。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、高知県の事業所(従業員5人以上)に勤める労働者が毎月決まって支給される給与の額は約23万円と、全国平均の約27万円を大きく下回ります。

「企業に正社員として勤める労働者ですら低い水準なので、それ以外の労働者はさらに低いと推測できます。夫婦そろっていても共稼ぎでなければ生活を維持できないし、離婚率も高いためダブルワーク、トリプルワークで働くシングルマザーも多いのです」(市川さん)

高知の女性の強さと男性の「イクメン化」は、そうでなければ生活が成り立たないという厳しい現実の裏返しなのかもしれません。

しかしトリプルワークで週40時間以上働いていたとしても、勤め先1か所ごとの労働時間は20時間を下回ることが多いため、統計では実態を把握しづらいのが実状です。

「周囲を見ていればダブルワーカー、トリプルワーカーが『多い』ことは実感として分かりますが、統計などにはなかなか出てきません。組合としても何とか当事者の状況を把握し、サポートしていかなければなりません」と、市川さんは語ります。

所得を底支えするには、組合員の賃上げに加えて最賃の引き上げも不可欠です。高知県の最低賃金は時給952円と、最低額の951円をわずか1円上回る水準。2024年度の最賃決定に関わった公労使の審議会では、学識者からなる公益委員から「近い将来、相対的貧困ラインを上回る1500円を実現できるよう、公労使3者で取り組むべき」との見解も示されました。

しかし過去数年間にわたる大幅賃上げで人件費がかさむ中「来年以降、同じペースで賃上げするのは難しい」と考える地元企業も増えているといいます。市川さんは「高知県の企業は付加価値生産額が低く、持続的な賃上げを実現する経営体力に弱さがあります。しかし我々は支払い能力ではなく、労働者が貧困ラインから脱出できるだけの賃上げを求めていきます」と強調しました。

市川稔道連合高知事務局長

情報発信も課題

池澤会長が、連合高知という組織の課題として挙げるのが、情報発信の難しさです。ホームページとFacebookでの発信は会長以下三役が担当していますが、プライベートで活発にSNSを使っているとは言えない池澤さんたちにとって、多くの人の関心を引くような投稿はかなりハードルが高いそう。

「SNSで多くの人に情報を拡散し、組合外の人を巻き込むことの大事さは理解していますが、FacebookだけでなくInstagramやXでも発信するとなれば、本来業務に支障が出てしまいかねません」と、池澤さんは苦労を明かします。

丸山さんも「一部の記事は青年委員会や女性委員会のメンバーに書いてもらい、私たちがチェックした上で投稿しています。情報発信もできる人にできることを任せながら、やり繰りしていくしかないのが現状です」と話しました。

連合高知に限らず、マンパワーの少ない地方連合会では、SNSや動画を使って認知度を高めることは容易ではありません。誤字・脱字の校閲や写真を掲載する際のプライバシーの配慮、選挙関連の情報発信に関する法律面のチェックなども組織内で行わざるを得ず、リスクを伴うこともあります。SNSによる発信に長け、かつ連合の活動をよく知る専門人材を育成していくことは、連合本部にとっても多くの地方連合会にとっても、大きな課題と言えそうです。

池澤研吉連合高知会長

これがイチ押し!地元の名産・名所

池澤会長、市川事務局長おススメの「仁淀ブルー」

高知県の中央部を縦断する仁淀川は近年、透明度が高く川が真っ青に見える「仁淀ブルー」の川として知られるようになりました。水道局の労働組合出身の市川さんは「高知市の水がめでもあり、そこから引かれている水道水もとてもおいしいです」と大絶賛。清流を見られるスポットはいくつかあるので、仁淀ブルー観光協議会のサイトをチェックしてみてください。また観光の際は、水質が保たれるようマナーを守って行動を。
仁淀川より先に有名になった四万十川や、宿毛湾で11月初旬から2月中旬ごろに見られる真っ赤な「だるま夕日」など、見どころは他にもたくさんあります。また池澤会長は「心にゆとりができたら、88カ所の霊場巡りで自分を見つめ直すのはいかが」。高知県内の霊場巡りは道のりの厳しさから「修験の道場」と言われているそうです。

高知県咸陽島から見ただるま夕日

お酒好きにはたまらない!高知は銘酒の産地

高知は全国的にも知られた銘酒の産地。池澤会長のお勧めは土佐酒造の「桂月」で「さっぱりとしていながらフルーティーで飲みやすい」とのこと。焼酎なら栗を原料とする「ダバダ火振」(無手無冠)が有名です。また高知市のひろめ市場では、観光客も地元の人も朝からお酒を楽しんでいるとか。
グルメに関してもカツオのたたきや皿鉢料理が有名ですが、3人が「高知以外ではなかなか食べられない」とイチ押しなのが、8月中旬から9月下旬ごろに出回る「めじかのしんこ」です。「マルソウダ」というカツオの仲間の幼魚を刺身につくり、仏手柑(ぶしゅかん)をすりおろして一緒にいただくのが地元流。「傷みが早いので高知県民でもなかなか口に入らない。この季節に高知に来る機会があれば、ぜひ味わってみてください」(市川さん)

「芋けんぴ」「栗きんとん」 秋の味覚をお土産に

現地でしか食べられないものも味わいたいけれど、お土産だって買いたい。そんな方には、サツマイモを揚げて砂糖をまぶした芋屋金次郎の「芋けんぴ」がお勧めです。また丸山さんが「最近はまっている」というのが、四万十川流域で取れた栗を使った「ジグリキントン」(四万十ドラマ)。「高知は栗や梨などの果物もおいしい。(池澤会長の実家である)池澤農園の梨も絶品です(笑)」とのことでした。

芋屋金次郎の芋けんぴと芋チップ

(執筆:有馬知子)