連合政治センター 川本秀幸局長に聞く!
労働組合は、なぜ政治活動に取り組むの?
衆院選の投票のしくみはどうなっているの?

8月14日に岸田前首相が総裁選不出馬を表明して以降、政治情勢はめまぐるしく動いてきた。9月12日告示の自民党総裁選には過去最多となる9人が立候補。同時期に行われた立憲民主党の代表選には4人が立候補し、9月24日、野田佳彦元首相が新代表に。その3日後の9月27日実施の自民党総裁選では、決戦投票を経て石破茂元幹事長が新総裁に。早期解散には慎重と見られていた石破新総裁は、10月1日の内閣総理大臣指名を前に「10月9日衆院解散/10月27日投開票」という日程を発表。10月15日公示で総選挙が行われることになった。
戦後最短のスピードで展開した解散総選挙を受けて、RENGO ONLINEでは、緊急特集を企画。まず、連合政治センターの川本秀幸局長に、労働組合はなぜ政治活動に取り組むのか、連合は今回の衆院選をどう位置付けるのか、衆院選の投票のしくみはどうなっているのか、解説をお願いした。

—10月27日投開票で第50回衆議院選挙が行われます。この間の動きをどう見ていますか?

9月中旬から自民党総裁選と立憲民主党代表選が同時期に行われました。過去最多の9候補が乱立して議論が噛み合わなかった自民党に比べて、立憲民主党は4候補による論戦が活発に行われ、新代表には、野田佳彦元首相が選出されました。自民党総裁選は決選投票にもつれ、石破茂候補が高市早苗候補を僅差で破る結果となりましたが、野田代表に対抗できるのは誰なのかが、最終判断に影響を与えたとの見方も一部にはあります。

石破新総裁は、総裁選で「解散は党利党略で行われるべきものではない。野党との論戦をしっかり行いたい」との考えを示していたにもかかわらず、総裁に就任するやいなや態度を一変させ、総理大臣指名前の9月30日に「10月27日投開票で解散・総選挙を行う」と表明しました。本来であれば、震災からの復旧途上で豪雨災害に見舞われた能登半島被災地対応として補正予算を組み、また新たな内閣や与野党が十分な国会論戦を行った上で解散の判断をすべきであったと思います。解散を急いだのは「自民党の党利党略を優先したから」としか思えません。

川本 秀幸 連合政治センター事務局局長

労働組合が政治活動に取り組む意義

—なぜ労働組合は政治活動に取り組むのか、教えてください。

労働組合の第1の役割は、組合員の雇用を守り、賃金・労働条件の維持・向上をはかること。そのために職場等で労使交渉や協議を行っています。

しかし、企業内の労使だけでは解決できない政治的課題も少なくありません。そこで、産業政策については、主に産業別労働組合が政治活動を通じてその実現に取り組んでいます。また、税制、社会保障、雇用対策、労働法制、教育・子育て支援、少子化対策、環境問題などの社会課題は、働く人の生活に深く関わるものであり、主に連合本部や地方連合会が「政策・制度」としてその決定プロセスなどに関わっています。他方、世界情勢が企業・産業に与える影響も大きく、外交問題にも無関心ではいられません。このように労働組合が働く人たちの生活を守るには、政治活動がますます重要になっているのです。

また、組合員は、労働者であると同時に国民・市民であり、民主主義国・日本の主権者です。その観点からも労働組合が政治活動に取り組むことが求められています。

—労働組合の組織内議員の役割とは?

政策・制度は、法律や条例の制定・改正として実現されます。働く者の立場にたった政策・制度をよく理解する労働組合の仲間を「組織内議員」として議会に送り、政策決定に参画していくことは、その実現に向けた大きなカギになります。

私は、JP労組の出身ですが、郵政事業の政治的課題をめぐる国会対応を経験する中で組織内議員の存在の大きさを実感しました。政府や政党、国会対応など、政治に働きかけていく大きな起点の一つとなるのが組織内議員なんです。

さらに組織内議員がいれば、組合員が政治を身近に感じる機会も広がります。国会見学や県政・市政見学で、自分たちの代表が堂々と発言している姿を見ると感動します。「自分たちの代表を議会へ」という気運が高まれば、政治への理解が深まり選挙運動にも力が入るはずです。

国民は納得も共感もしていない

—今回の衆院選の争点は?

やはり政治とカネの問題をはじめとした「政治改革」だと思います。

自民党は、旧統一教会問題や裏金事件で国民の信頼を失っていますが、総裁選では、誰も真摯に向き合っていると思えませんでした。そして、裏金事件の国会(政治倫理審査会)での説明責任も果たされないまま、真相解明も進まないまま、石破総裁は解散に踏み切り、裏金議員を「一部を非公認とし、一部は比例の重複立候補を認めない」という方針を打ち出しました。

石破総裁の誕生で自民党が変わることへの期待もあったと思いますが、結果はどうでしょう。総裁選の主張と首相就任後の言っていることとやっていることの違いや、女性大臣が2人という組閣の顔ぶれを見ても、「ああ、やっぱり誰が総裁をやっても自公政権では政治は変わらないんだ」と感じた国民は多いのではないでしょうか。

石破総裁は、自身の内閣を「納得と共感内閣」と名付けましたが、国民に何を納得し共感してほしいのか分かりません。「政治改革」をどれだけ本気で取り組んでいくのか、そこは最大の争点になるのではないでしょうか。

日本の政治を変えるには、これ以上自公に政権を任せてはいけない。その思いが国民に広がれば、「政権交代」の機運が高まる可能性もあるでしょう。

—衆院選に臨む連合の方針は?

連合は結成以来、「左右の全体主義を排し、健全な議会制民主主義が機能する政党政治の確立、生活者を優先する政治・政策の実現」を求め、「与野党が互いに政策で切磋琢磨する政権交代可能な二大政党的体制」をめざしてきました。

その上で、第50回衆院選については「与党を過半数割れに追い込み、今の政治をリセット」するために、「立憲民主党・国民民主党・連合が一体となって総力を挙げた取り組みを展開する。すべての地方連合会はもちろん、構成組織は自らの支援政党にかかわらず、小選挙区においては連合推薦候補者の当選に全力を尽くす」という方針を確認しました。

連合として連携する政党が立憲民主党と国民民主党の2つに分かれていることは、国会対応や選挙対応などに影響を及ぼしています。そこで今年8月、「連合出身議員政治懇談会」の議員と連携し、両党に連携強化の要請を行いました。「互いに『違い』を強調するのではなく、『一致』できるところを見いだして連携していく努力をしてほしい。そのために両党で協議を始めてほしい」と。

今回の衆院選は、「政権交代」を見据え、もう一度野党が大きなかたまりになるチャンスです。「与党の過半数割れ」という目標の先に「政権交代」が見えてくる。選挙戦を通じて立憲民主党・国民民主党・連合が一体となって、1つでも多くの議席を獲得することが必要だと思います。

衆議院選挙は「小選挙区比例代表並立制」

—衆議院選挙の仕組みはどうなっているんでしょう?

衆議院議員総選挙は「小選挙区比例代表並立制」(定数465 /小選挙区289、比例代表176)です。小選挙区は候補者名での投票で、1選挙区で1名当選します。トータルの得票率が拮抗していても獲得議席に大差がつくことがあり、政権交代が起こりやすい制度と言われています。

比例代表制は、全国を11ブロックに分けて政党名での投票を行い、得票数に応じて各政党に獲得議席数が割り振られ、あらかじめ提出された名簿の上位から順に当選者が確定します(拘束名簿式)。小選挙区との重複立候補も可能で、復活当選者は小選挙区での得票数にもとづく「惜敗率」で決定します。

投票日に投票に行けない、投票所が遠くて行けない場合でも、投票が可能な仕組みも整備されています。

期日前投票制度は、投票日に仕事や旅行などの予定のある人が期日前に投票できる制度。公示日翌日から選挙期日の前日までの期間に、選挙人名簿登録地の市区町村の期日前投票所で行います。投票の際には「投票用紙等請求書兼宣誓書」を提出します。

不在者投票制度は、選挙人名簿登録地以外の市区町村の選挙管理委員会や病院・老人ホーム等で期日前に投票できる制度です。滞在先で不在者投票を行う場合は、まず名簿登録地の選挙管理委員会に「不在者投票請求書兼宣誓書」を持参・郵送等で提出します。受理されると「投票用紙・投票用封筒・不在者投票証明書」が送付されるので、それを持参して滞在先の選挙管理委員会へ行き、投票を行います。

また、特定の障がいがある人や「要介護5」の人は、市区町村選挙管理委員会に届け出た上で、自宅で投票し郵便等で送る不在者投票(郵便投票)も可能です。

「わたしプラスもう1票」でより良い未来の選択を

—連合は「投票に行こう」と呼びかけていますが、若い世代の投票率は上がりません。

政治は、政党の獲得議席数によって方向性が左右し、政党の獲得議席数は有権者の投票行為によって決まります。その貴重な投票の権利を無駄にしてほしくないという思いで、連合は「投票に行こう!」運動(選挙での棄権防止運動)に取り組んできました。

「自分が投票に行っても、政治は変わらない」という声をよく聞きますが、そんなことはありません。過去に小選挙区ではたった105票差で当落が決まった事例もあります。投票に行けば、その結果が変わり、政治が変わる可能性は十分あるんです。

とはいえ、若い世代は学業や仕事で忙しい、プライベート時間も大事にしたい。だから、投票しやすく、投票したくなる環境づくりも進めようと、連合は被選挙権年齢の18歳引き下げや電子投票制度の導入、郵便投票の拡充も求めています。

インターネット選挙の比重も高まっています。年齢が下がれば下がるほど、情報源はYouTubeなどの動画という傾向が強くなっていますが、それゆえ有権者には情報を読み解く力が求められます。2022年参院選では、YouTuberが比例全国区で当選しましたが、一度も国会に登院せず失職しました。誰になら未来を託せるのか、判断する力を身につけるための主権者教育にも、もっと力を入れる必要があります。

—読者が選挙に行きたくなるメッセージを。

世界に目を向けると、強権的な政治の下で自由と民主主義を求めて命がけで闘っている人たちがいます。日本は、平和で民主主義が守られており、「当たり前」のように投票権を行使できる。そのことの重みを改めて噛みしめたいと思います。

物価上昇が続いて生活は厳しさを増し、少子化や気候変動、災害への対応も急がれる中で政治の役割はますます重要になっています。

投票は、私たちの未来の選択です。「わたしプラスもう1票」が積み重なれば、必ず政治は変わる。この衆院選を「信頼できる政治」を取り戻す一歩にしていきましょう。

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