あなたのまちの「連合」
④連合沖縄

地域で働く人を支える「縁の下の力持ち」地方連合会の取り組みを紹介する本シリーズ。今回は、青年委員会のメンバーを「ピースガイド」に養成するなど、沖縄戦の実相や戦争の悲惨さ、そして平和の尊さを伝え続けている連合沖縄をご紹介します。活動に関わる組合役員やピースガイドたちは、世界各地で戦闘行為が起きている今こそ、県外の人も沖縄戦を学び、戦争を「自分ごと」として捉えてほしいと願っています。

連合沖縄のみなさん
左から石川修治副事務局長、知花優事務局長、仲村至弘副事務局長

「終わらない戦後」を生きる沖縄 県外との温度差に疎外感も

第二次世界大戦末期に激しい戦闘が行われた沖縄県。沖縄県出身の犠牲者は12万人を超え、実に県民の4人に1人が亡くなったと推計されます。こうした事実を風化させないため、連合は毎年、6月23日の沖縄「慰霊の日」に合わせて「平和行動in沖縄」を開催しており、全国から労働組合関係者ら、多くの人が訪れます。

連合2024平和行動in沖縄 「平和オキナワ集会」オープニング(沖縄市山里青年会によるエイサー演舞)

平和行動に訪れる人々を戦跡や米軍基地などに案内し、沖縄戦や基地問題について伝えるのが、連合沖縄が運営する「ピースガイド」です。知花優事務局長は「本土の人にとって第二次世界大戦は『歴史』かもしれませんが、沖縄県民にとっては今も、生活に深く関わる現在進行形の問題です。ピースガイドは私たちが自分たちの言葉で、遠くから訪れた人々にそれを伝える重要な取り組みです」と話します。

知花優 連合沖縄事務局長

沖縄では今も、米兵による性暴力事件など基地に絡む事件が頻発し、歴史教科書の沖縄戦に関する記述についても「日本兵を美化している」「事実を歪めている」といった批判の声が、毎年のように県民から上がります。市街地では今も不発弾が見つかり、交通機関がストップしたり地域住民が避難を強いられたりもします。しかし「県外の人の多くがこれらを『沖縄の問題』だと他人事のように捉えていることに、疎外感も覚えます」。

またかつて知花さんの職場では、営業用の車が飲酒運転の米兵に衝突される事故がありましたが、日米地位協定のため米兵が日本で罪に問われることはなく、米軍による補償もありませんでした。

「地位協定があることで罪を犯した人の権利が優先され、主権者であるはずの国民が不平等を押し付けられるのは納得できません。沖縄の戦後はまだ終わっていないことを、県外の人に広く知ってもらいたいのです」

若い世代が語り継ぐ ピースガイドの思い

2024年の平和行動では、連合沖縄の各産業別労働組合の若手役員ら30人超が、3回のピースガイド養成講座を受講し、ガイド本番に臨みました。中には沖縄で働く県外出身者や、連合大分から参加した人もいます。
当日は、ひめゆりの塔や平和祈念資料館などをバスで回って説明しつつ「ここは某有名タレントのマンション」といった軽いネタも織り込み、飽きさせない工夫も凝らしていました。
連合沖縄の青年委員会メンバーである中原さんは、公務員として文化振興などに関わっており「もし自分が沖縄戦の時に公務員だったら、戦闘に加担せざるを得なかったかもしれない。そんな状況に陥らないためにも平和を守らなければ」との思いから、活動に参加しました。

ピースガイド 中原さん

好田さんは富山県出身で、沖縄戦については大まかな知識しかなかったといいます。養成講座を通じて「悲惨さの度合いが、思っていたのと全く違う」と実感させられたそうです。
「チビチリガマ(集団自決が行われた鍾乳洞)も普段は明かりがついていますが、養成講座でライトを消すと何も見えず、水が滴る音だけが聞こえました。当時の人はこんな状況で何カ月も暮らしたんだと想像すると、ぐっと現実味が増しました」

チビチリガマを案内するピースガイドの好田さん

連合大分から参加した安部さんは「沖縄出身の皆さんとは知識に雲泥の差がありますが、県外の人間だから関係ないとは思わないし、理解を諦めるわけにもいかない」と話します。ガイドのために忙しい職場を抜けることにはジレンマもありましたが「人手不足を理由に、平和への取り組みを細らせてはいけない」と、沖縄入りを決めました。

嘉数高台を案内するピースガイドの名護さんと安部さん

また照屋さんは「青年部の参加者が年々減り、ピースガイドの活動を『面倒くさそう』と敬遠する声もあります。若い組合員に関心を持って参加してもらえるよう工夫したい」。同じ職場の好田さんも「戦争体験者がいなくなり完全に記憶が失われてしまったら、復活させるのは至難の業。若い世代が語り継がなければいけない、と思います」と語りました。

瀬嵩の浜を案内するピースガイドの照屋さん

中原さんは「ピースガイドの活動は重いばかりではなく、養成講座後の交流会などで、同世代と情報交換し励まし合える、楽しい場でもあります。ぜひ尻込みせず参加してほしい」と要望しました。

働く人にも多くの課題 低賃金が若い世代を直撃

沖縄県は戦争や基地の問題だけでなく、働く人の環境についても多くの課題を抱えています。県内企業の多くは労働組合のない中小企業で、職場で労働問題が起きた際に解決が難しいこともその一つです。
連合沖縄は、労働相談ダイヤルなどを設けて非組合員の相談にも応じるほか、定時制高校や大学でワークルールの出前講座なども行い、学生のうちに労働者として身を守るための知識を学んでもらおうとしています。
県内に流通する製品の多くは、輸送費が上乗せされるため本土より値段が高くなります。にもかかわらず沖縄県の最低賃金は、全国で2番目に低い水準です。

「2024春季生活闘争で一定の賃上げは行われたものの、労働者から聞かれるのは『物価高に加えて税金や社会保険料も上がり、手取りが増えた実感はない』という嘆きばかり。持続的な賃上げへの取り組みは急務です」

特に打撃を受けているのが若年層だといいます。沖縄県は数十年にわたって出生率全国1位を記録していますが、出生率そのものは低下傾向にあり、2022年の人口動態推計では初めて、死亡者数が出生者数を上回る自然減に転じました。知花さんは「若年層の賃金が抑えられ、将来へのビジョンを描けない」ことが、出生率の低下を招いたと考えています。
若者への分配を増やすには、労働組合が当事者の声を、経営側や社会へ伝えることも不可欠です。しかし青年委員会の担い手不足、特に若い女性の少なさが悩みの種となっています。「大卒者の多くが奨学金を受けており、返済に追われて組合費を払う余裕がないことも、組織拡大のネックになっています。若者が社会に出る時すでに借金を負っているという現状を正さなければ、労働組合はおろか国も『じり貧』になってしまうのではないでしょうか」

戦争は他人ごとではない 不穏な世界情勢

近年はロシアとウクライナの戦争が長期化している上、イスラエルによるパレスチナへの攻撃などもあり、世界情勢は不穏さを増しています。一方、第二次大戦の終戦から79年が過ぎ、日本人の多くは戦争を、遠い国の出来事と感じるようになりました。

「79年前の沖縄では、海外で今起きているような戦闘が実際にありました。しかもそれは沖縄県民ではなく国が主導し、結果的に沖縄が戦場になったのです。戦場になった県の労働組合として、国家間の問題を戦争で解決してはいけないと訴え続けます」

知花さんは最後に、県外の人たちへも次のようなメッセージを送りました。

「政府は今、自衛隊増強や武器輸出など戦前にも通じる動きを見せ、戦争放棄、平和維持という国家の柱も揺らぎ始めています。国民自ら守ろうとしなければ平和は維持できないことを、皆さんも改めて認識し、行動していただきたいです」

これがイチ押し!地元の名産・名所

「歩いて離島の自然を堪能」知花さんおススメの過ごし方
沖縄には数々の美しい島が存在し、一つ一つに違った魅力があります。「離島の良さは何と言っても、海と自然。レンタカーもいいですができれば歩いて散策し、その美しさを堪能してほしい」と知花さん。個人的なおすすめは宮古島で「海の美しさはぴか一で、お酒をたくさん飲む土地柄も、好みに合っています(笑)」。
ちなみに最近「沖縄の人はお酒を飲んだ後、『締め』にステーキを食べる」という通説が広まっていますが、その発祥の地も宮古島のようです(所説あり)。「島内の喫茶店の多くはステーキを置いているし、飲み会の後にわざわざ喫茶店に寄って食べる人もいるとか」。

お勧めスポット「栄町市場」
最近、地元の人にも注目を集めているのがゆいレール安里駅にほど近い栄町市場です。
「昔市場だった地域が、今は若者向けのちょっとディープなお店が集まる場所になっています」(知花さん)
市場のたたずまいの中に、ぽつりとフランス料理店が現れる…といった面白さが魅力。そんな店に飛び込んで、地元の人とワインなど酌み交わしてみては。

栄町市場

定食屋巡りで好みの味を開拓
沖縄そばにゴーヤーチャンプル―、豚足といった沖縄料理は本土でもおなじみです。本場は店によって味が違うので「町の食堂を回って、好みの味を探してみては」と、副事務局長の仲村至弘さん。店探しのヒントは「タクシー運転手の集まる店」とか。
「運転手さんは美味しい店を良く知っているので、彼らの集まる店は『当たり』が多いかもしれません」

青い海が「映え」る伊良部大橋
仲村さんには、SNSの撮影にぴったりな「映え」ポイントも紹介してもらいました。ひとつは宮古島と伊良部島を結ぶ「伊良部大橋」。全長3540メートルと、無料で渡れる橋の中では日本最長とされ「橋を渡ると、青い海が広がる絶景を楽しめます」。

瀬長島ウミカジテラス

県南に位置する豊見城市の「瀬長島ウミカジテラス」も、白亜の建物が並びちょっとした地中海気分が味わえる観光・ショッピングスポット。
「海と白い建物のコントラストもきれいですが、那覇空港のすぐ近くなので飛行機の発着を間近で見られます。飛行機好きも一見の価値ありです」とのことでした。

ウミカジテラスで味わうことができるスイーツ

(執筆:有馬知子)