事務局長談話

 
2015年05月26日
核不拡散条約(NPT)再検討会議の決裂に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1. ニューヨークの国際連合本部において約1ヵ月間にわたって開催されていた核不拡散条約(NPT)再検討会議は、2015年5月22日、最終文書が採択できないまま閉幕した。広島と長崎に原子爆弾が投下されてから70年の節目の年に、核兵器廃絶に向けた具体的な成果が得られなかったこと、更にはNPT体制が揺らぐ結果となったことは、極めて遺憾である。また、世界の指導者に広島、長崎への訪問を促すとの日本の提案が、地名が削除されるなどの大幅な修正が加えられたことについても、極めて残念な結果となった。

  2. 今会議では「核兵器の非人道性」が訴えられ、早期の核兵器禁止条約成立に関して議論がなされたが、中東の非核地帯化に向けた国際会議の開催手法の記述等について、核兵器保有国と非保有国の対立が浮き彫りになり採択には至らなかった。核兵器保有国の政治的な思惑によってNPTが形骸化に陥り、核兵器廃絶に向けた具体的な取り組みの進捗が阻まれることがあってはならない。今こそ核兵器保有国は、国際社会に真摯に向き合い、将来を見据えた対話を進めるべきである。

  3. 日本国政府は、唯一の被爆国の立場を通じ、核兵器保有国と非保有国との橋渡し役として、核兵器廃絶に向けた議論をリードする立場になければならない。政府に対し、今会議の結果を真摯に受け止め、核兵器廃絶の合意形成に向けた外交努力と情報発信を行うよう改めて強く要請するとともに、日本が主導する地域横断的な非核兵器国の「軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)」などの国際的な枠組みをより強固なものとするよう求めていく。

  4. 連合は、今会議にあわせて、原水禁、KAKKINの3団体で「核兵器廃絶1000万署名」に取り組み、最終的に約720万筆の署名を集約し、国連事務総長あてに提出するとともに、現地でのシンポジウムの開催やデモ行進への参加など、核兵器廃絶を国際社会に強く訴えた。連合は、これからも平和行動in広島、平和行動in長崎を運動の柱に据えつつ、ITUCを通じ核兵器による被爆の悲惨な体験を広く国際社会に訴えていくとともに、原水禁やKAKKINをはじめとする関係団体、更には平和首長会議とともに、あらゆる機会を通じて核兵器廃絶に対する国際社会の一致した行動を求めて、幅広い世論喚起を起こしていく。


以上