事務局長談話

 
2015年02月12日
「開発協力大綱」の閣議決定に関する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 神津 里季生

  1. 政府は10日、「開発協力大綱」(俗称:新「ODA大綱」以下「大綱」とする)を閣議決定した。今回は、2003年以来の見直しであり、名称も改められた。「人間一人ひとり、特に脆弱な立場に置かれやすい」者に焦点を合わせることを打ち出すなど、旧「政府開発援助大綱」から改善した部分については一定の評価をするが、いくつかの点で懸念を抱かせるものとなっている。

  2. まず、「非軍事的協力による平和と繁栄への貢献」を基本方針の第一に掲げながら、「民政目的、災害救助等非軍事目的の開発協力に相手国の軍又は軍籍を有する者が関係する場合には、その実質的意義に着目し、個別具体的に検討する。」として、軍隊や軍籍保有者を対象とした開発協力実施に含みを残した。そもそも、日本の開発協力は万が一にも軍事目的に転用されることがあってはならず、実施および検証には極めて慎重な運用が常に必要である。しかし、運用基準や歯止めとなる仕組みは不明のまま閣議決定されたことは問題であり、この種の事柄の一連の決定プロセスに対し、懸念を持たざるを得ない。

  3. 次に、重点課題の最初に置かれた「『質の高い成長』とそれを通じた貧困撲滅」という文言に現れているように、「大綱」はとりわけ民間部門における経済成長が開発途上国全体の発展に繋がることを唱えている。連合は、開発協力においては脆弱な立場に置かれている国・地域・人々への直接的支援も極めて重要であると考えており、政府に対し、開発途上国の「質の高い成長」の確保に寄与すると同時に、貧困層を直接対象とする社会開発支援にも力を注ぐべきであることをあらためて強調しておく。

  4. 連合は政府に対し、対国民総所得(GNI)比0.7%の国際的目標の達成を要求し続けていたが、これについて「念頭に置く」という表現に止まったことは残念である。また、市民社会との連携についても抽象的な書きぶりに止まっており、連携を具体化する何らかのメカニズムが必要である。連合は、開発途上国の労働組合および国際労働組合組織との連携を深めて現地の課題やニーズを探り、それらを開発協力の実施により良く反映させるとともに、開発協力事業において国際労働機関(ILO)の中核的労働基準をはじめとする労働者の権利が十分に保障されるようさらに努めていく。