事務局長談話

 
2015年01月30日
「技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇談会」 報告書に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1. 本日、技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者会議(座長:多賀谷一照 獨協大学法学部教授)は、「技能実習制度の見直しに関する報告書」(以下「報告書」)を取りまとめた。外国人技能実習制度は、国際貢献という制度本旨を逸脱した不適正な受入れ事案が多発し、国内外から多くの批判を浴びているが、報告書はこうした現状を真摯に受け止め、「制度の適正化」に向けた改革案を提示しており、概ね評価できる。他方、不適正な受入れ事案を助長しかねない「制度の拡充」に関する具体策も併記されており、課題が残る内容となっているのは残念である。

  2. 報告書は、「制度の適正化」の具体的方策として、 (1)制度管理運用機関の新設による管理体制の強化、(2)監理団体の許可制の導入をはじめとする実習受入れ機関のガバナンス強化、(3)不適正な実習受入れ機関に対する刑事罰の新設や名称公表制度の整備、(4)送出し国との政府間取り決めの作成、等を掲げている。
    外国人技能実習制度は、賃金不払い等の労働関係法令違反や旅券取り上げ等の人権侵害事案が多発し、連合にも実習生からの悲痛な労働相談が寄せられている。こうした状況を踏まえ、連合は、国の責任による一元的な管理体制の構築や不適正な実習受入れ・送出し機関への規制強化等を強く主張し、こうした点は報告書に概ね盛り込まれた。今後はこうした「制度の適正化」策を可及的速やかに実行に移すべきである。

  3. 一方で、報告書には、実習期間の延長や職種の拡大といった「制度の拡充」に関する方策についても言及がなされている。しかし、「制度の適正化」策の実効性が確認されない段階で「制度の拡充」を行うことは、実習生を低賃金労働者として扱う等の事案や人権侵害事案を助長しかねず、厳に慎むべきである。また、実習期間の延長や職種の拡大等は、人手不足を背景とするわが国のニーズに基づくもので、技能移転を通じて発展途上国等の発展に資するという制度本旨と整合性を欠くと言わざるを得ない。
      また、介護分野の対象職種への追加是非については、別途、厚生労働省に設置された検討会において議論がなされているが、「制度の適正化」策の検証を待たずに日本語能力や介護にかかる専門性の乏しい外国人労働者を受け入れることは適当ではなく、とりわけ介護人材不足の解を外国人技能実習制度に求めることは到底容認できない。

  4. 今後は報告書に基づき、通常国会に所要の法案が提出される見込みである。連合は、外国人技能実習制度が制度本旨を踏まえた適切な運営がなされ、実習生を低賃金労働者として扱う事案や人権侵害事案が発生することの無いよう、国会審議等の対応を図っていく。  


以 上