事務局長談話

 
2014年06月13日
「改正地方教育行政法」の成立に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1.  本日、参議院本会議において、教育委員会制度を見直す「改正地方教育行政法」が賛成多数で可決、成立した。教育委員会が執行機関として存続するものの、首長の権限を強化する内容となっており、戦後の教育行政の趣旨である政治的中立性、継続性、安定性が損なわれる懸念が強く問題である。

  2.  法律の主な内容は、[1]首長が主宰し教育委員会との協議を行う「総合教育会議」で大綱的な方針を策定する、[2]教育委員長と教育長を一体化し首長が任命・罷免を行う新たな「教育長」を創設する、などである。首長の意向が、新たな「教育長」を通じて「総合教育会議」と教育委員会に直接反映される仕組みとなり、4年ごとに選挙で選ばれる首長の価値判断に大きく左右される可能性が高い。

  3.  教育委員会制度の見直し論議は、2011年から2012年にかけて起こった、いじめ・体罰による子どもの自殺事件がきっかけである。教育委員会が適切に対処できなかったため、隠蔽体質や組織の形骸化などの課題が指摘され、安倍総理が設置した教育再生実行会議で制度の見直しが検討された。教育再生実行会議は、首長が任命・罷免を行う教育長が、教育行政の責任者として教育事務を行うとする提言をまとめた。これを受けて中教審では、制度改革案と多くの委員が主張した別案の二案を答申、その後、自民党と公明党による協議が行われ、閣議決定された改正案が国会に上程されていた。

  4.  連合は、文部科学省や有識者による学習会や、教育委員会の視察などを通して議論を積み重ねた結果、教育委員会制度を存続させ、教育行政の政治的中立性、継続性、安定性を確保し、情報公開や教育委員の増員などによる運用の改善をはかるべきとの論点整理を行った。この論点整理を基に、中教審や政党などへの意見反映を行ってきた。しかし、本法律では、首長の任免権に対するチェック機能、総合教育会議と教育委員会の議事録の作成・公開は努力義務にとどまるなど、不十分である。

  5.  今後は、2015年4月1日に施行され、総合教育会議の新設や教育委員長の廃止など、教育委員会制度が大幅に変更されることになる。連合は、総合教育会議や教育委員会の議事録の作成・公開を義務化し透明性を確保すること、議会が教育長の任命・罷免を同意する際に教育長に対して所信表明を求めること、いじめや体罰などに迅速に対応できる体制を構築すること、より多くの地域住民や保護者を教育委員に選任することなどを通して、政治的中立性、継続性、安定性を引き続き確保するよう、教育行政に対する働きかけを強めていく。


以上