会社の組織再編や倒産は、私たち労働者の雇用や労働条件に大きな影響を及ぼします。
グローバル化などによって、組織再編などが加速する中、
誰もが直面する可能性がある重要な問題です。
そのような中で、いま政府では、「動産」「債権」を担保として
会社の事業資金を確保しやすくするようなルールの検討も行われています。
組織再編等の労働者保護のルールは十分!?見直しは必要ないのでしょうか。

※本ページは、組織再編等による雇用・労働への影響について簡潔に説明しているものです。
実際に、組織再編等に直面し、働くことに関してお悩みの方は、連合にご相談ください。

組織再編時の労働者保護ってどうなってるの?

自分の働いている部署が来月から新しい会社に移るみたいなんだ…。
グローバル化などを受けて、会社が生き残るための会社分割や事業譲渡など、組織再編(いわゆるM&A)が進んでいるんだ。
職場では、このまま働き続けられるのか、労働条件はどうなるのかといった話題で持ちきりなんだ。新しい会社に雇用が引き継がれるかは、どのように決まるの?
新しい会社で雇用が確保されるかは、組織再編の方法によって違うんだ。
「事業譲渡」の場合
新しい会社に雇用が引き継がれるためには、元の会社、新しい会社、個別の労働者の同意が必要。(民法第625条第1項)
「会社分割」の場合
引き継がれる事業に主に従事している労働者の雇用は、新しい会社に引き継がれる。(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律[労働契約承継法]第3条)
新しい会社での労働条件はどのように決まるの?
労働条件がどうなるかも、組織再編の方法によって違うんだよ。
「事業譲渡」の場合
新しい会社と個々の労働者の個別の同意で労働条件は決定。これまでの労働条件が引き継がれるわけではないことに注意。
「会社分割」の場合
労働条件は新しい会社に引き継がれる。(労働契約承継法第3条)
労働条件などはこれから決まるみたいだから、今回の場合、「事業譲渡」なのかな…。でも、自分ひとりで新しい会社と労働条件を話し合うなんて、できるかな…
今より低い労働条件を新しい会社から提示されても、労働者ひとりで交渉するのは難しいよね…そんなとき、会社と対等に協議できる労働組合があると頼りになるよ!そもそも、こういったときに労働者を守るための法律の見直しも必要なんだ。
どうして?
組織再編の労働者保護に関するルールは、2000年に「労働契約承継法」が、2016年に「事業譲渡等指針」が整備されてきたけど、労働者保護はまだまだ不十分!どんな場合でも雇用が継続されるような見直しが必要なんだ!

倒産した時、未払賃金があったらどうなるの?

急に社員全員集められて、「明日倒産する」って言われたんだ…これからの生活どうしたらいいの…。
それは大変…!これからの生活とか不安だよね…。もしかして会社から支払われていない賃金もあるのかな?未払の賃金や退職金の一部などは「労働債権」として、ある程度は優先的に確保できる仕組みになっているんだよ。
実はここ何か月か、会社の資金繰りが悪いっていう理由で、もらっていない賃金があるんだ…。倒産するってことは、会社には借金がたくさんあるんだよね。ちゃんと払ってもらえるのかな。
確かに、会社にたくさん借金がある場合、労働債権は優先的に確保されると言っても、必ず確保できるとは限らないんだ。
「優先」だったら、最初に支払われるんじゃないの?
会社の借金や未払いの賃金などは、倒産したときに返す順番が法律などで決まっていて、賃金や退職金が最優先される訳じゃないんだ。そして、今、政府では労働債権の確保がもっと難しくなってしまうかもしれないような議論がされているんだよ。
どういう議論なの?
会社が「動産」や「債権」を担保にして、お金を借りやすくする制度を議論しているんだ。会社にとっては、融資が受けやすくなれば、事業を展開しやすくなるかもしれないけど、会社の色々な設備や債権に担保が付いていたら、労働債権の確保はもっと難しくなるんだよ。
どうして?
動産や債権に担保が付いている債権は労働債権よりも優先されるからだよ。未払い賃金があっても、設備などの動産や債権は担保として押さえられてしまうから、それを売って未払賃金の支払いに充てることが難しくなるんだ。
でも、会社の財産って、労働者が働いて会社が利益を上げることで成り立っているんじゃないの?
その通り!だから連合は、担保制度では労働者など一般債権者の保護や公平性の視点を重視したルールの見直しが必要だと主張しているんだ。
どうしたら労働債権を確保しやくすくできるの?
労働債権の優先順位を引き上げる見直しを行う必要があるね。賃金は労働者にとって、毎日の生活を送るための大切な糧だから、他のものより優先されるべきだとILO条約にも規定があるんだよ。

連合は、会社の組織再編、倒産などにおいて、労働者の雇用や労働条件、賃金などが確実に守られるよう、法律の整備と見直しを求めています