りきおのオピニオンスタジアム

 
2014年5月12日
第19回「株価を上げる秘策とは?」

 ここ最近株価が低迷をしています。安倍政権の成長戦略に対する受けとめが低調だからという見方もかなり広がっているようです。

~日本人はもっと株を買うべき~

 最近の株価の上がり下がりは、概ねのところ、外国人投資家の売り買いが影響していると言われています。
 私は、私たち日本人はこのような短期的な株価の上がり下がりに目を奪われたり、単なる「投機」にうつつをぬかすのではなく、もっと本質的な「投資」に関心を持ち、力を振り向けるべきではないかと思います。言うなれば、わが国の資本主義のメカニズムにおいて、「市場を育てる取り組み」を、もっと国民一人ひとりのものとして考えるべきなのではないか、ということです。

 具体的には、様々な情報をつきあわせながら、自分の信ずる企業の成長に向けて、お金を投資するということです。勿論そこには、「その企業は意欲のある従業員に支えられているか」、という観点や、その前提となる「人を大事にするスタンス」であるとか、積極的な人材育成、的確な人事処遇体系などの点も、重要な要素として考慮されるべきでしょう。反対に、ブラック企業的体質などは、回避されてしかるべきでしょう。
 そういう視点を含めて、日本人はもっと株を買うべきなのだと思います。

~肝腎なことは明日を信じていけるかどうか~

 しかし多くの場合、私たちには、そんな金もないしそんなヒマもない、そして無理してリスクを抱えるつもりもない、というのが一般的です。ただ、そうではあっても景気は良くなってほしいという気持ちだけは共通なので、株価の上がり下がりは気にしてみているわけです。つまり私たち日本人は、「他人任せ」的に株価の上昇を祈っているという図式であると言っても過言ではないように思えます。

 その一方で安倍政権の認識は、自らの高い支持率を維持している最大の要素は景気の問題であり、したがってそのバロメーターとしての株価に相当の神経を集中して施策を検討していることも間違いないと思います。
 問題なのは、そこでの「株価対策」は中長期の視点でとらまえようとされているのか、それとも目先の誘導でしかないのか、という点です。

 例えば今年の春闘、まだ連合全体でも目下7割方の回答率というところであり、まだ途半ばではありますが、しかし長い間下方に張り付いていた賃金水準をひきはがし、明確に上方修正しつつあることは、今後に向けて非常に意義のあることだと考えています。様々な見方はありますが、連合としてあくまでも「月例賃金」の引き上げにこだわり、そして中小企業で働く方々、非正規の形態で働く方々の水準底上げにこだわってきたことが、ここまでのところは成果につながっていると考えます。

 なぜ、私たち連合が徹底的に「月例賃金」と「底上げ」にこだわっているのか。それは、働く者一人ひとりが「明日を信じていけるか」ということこそが、重要だと思うからです。とりわけ、デフレしか知らず、賃上げの経験などない若い人たちに、明日を信じることができるかどうかは、この数年の賃上げの取り組みが結果につながるか否かが決定的に重要です。
 そしてもちろん、国民が明日を信じることなしに株価だけが上がるなどということは本来ありえないことだと思います。底の浅い短期的な株価の上昇だけでは、結局は投機筋に裏切られるだけのことでしかありません。

~筋悪案件の成長戦略盛り込みは経済の腰折れを招く~

 賃上げは経済の好循環を導き出していくために、大変重要な取り組みです。しかしその一方で、政府のつくっている様々な会議で、労働者保護ルールの改悪が論議され、なかには思いつき的な筋悪の問題提起もされています。

 賃上げに関わる問題がいわゆる「政労使会議」でとりあげられたのとは対照的に、こちらの労働者保護ルールに関しては、労働者代表が全く入らない委員構成の諸会議で重要な提案がなされつつあります。6月に想定されている成長戦略のとりまとめには、いったいどんな筋悪案件が、「株価対策的に」盛り込まれていくのでしょうか?
 今ちらちらと見え隠れしている内容は、なぜこれらが成長戦略と言えるものなのか、疑問だらけとしか言いようがありません。外資やベンチャー企業の受けを狙ったものだとも言われますが、こんな内容で投資にはずみがつくともとても思えません。そしてなにより働く者の意欲を削ぐようなことをしておいて、世界一ビジネスがやりやすい国にするなどという絵空事が、万一株価に影響したとしても、長続きのするものとは到底ならず、化けの皮がはがれた後には経済の腰折れが待っているのではないでしょうか。

 株価を上げる秘策なんてないのです。肝腎なことは日本の地力、働く者の地力、若い人たちの地力を引き出していくことであり、明日を信じるに足る政策を進めていくことしかないのだと思います。

(神津)

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