紙つぶて

 
2018年11月5日
刀の数

 中日ドラゴンズ与田新監督。各球団が恋い焦がれた根尾昂選手をグイッと引き寄せました。ドラファンをはじめ、どんなパフォーマンスを見せてくれるか今から待ち遠しい限りです。
 その根尾選手。投手、守備、打撃、走塁と、非凡な才能が甲子園で大輪を咲かせました。学業も優秀と聞けば二刀流、三刀流と数える指がすぐ一杯になります。彼の一球、一打は折り紙つき。それ以上に大谷翔平選手同様、これまでの野球のスタイルそのものを変えていく姿が私たちを惹きつけます。それは、二人のアスリートの活躍を通じて、人間の持つ可能性を実感したい、確かめたいという私たちの自然な感情の高まりと言えます。
 百六十キロの速球や球を芯で捉える快音は今後にお任せしましょう。一方で、私たちも人間の持つ可能性を最大限、広げることには参加できそうです。いやむしろ、大きく期待されています。それは、長年にわたり職場や社会に染み付いた働き方のスタイルを変える姿への期待でもあります。子育て、親の介護、自らの体を治療しながらのお勤め、中には、長年の引きこもりを脱し新たな仕事にも慣れてきたという若者もいるでしょう。どんな仕事、いかなる働き方に就いていようと、その人の可能性を狭める社会に魅力は感じません。自覚の有無はともかく、人それぞれ、腰に収めた刀の数は無限大なのですから。

2018年11月5日の東京新聞・中日新聞夕刊に掲載