紙つぶて

 
2018年10月1日
時代の風

 毎週、何とか絞り出してきた私の夕刊コラムもいよいよ後半戦。胸突き八丁の突破には勢いが必要。今回は少し大きな視点からの一筆です。
 獲物を追い(狩猟)、作物の収穫を喜びあい(農業)、物を売り買いし(商業)、より良いものを作り上げ(工業)、そして、瞬時に世界がつながる(情報)。人類がたどった進歩の航跡です。私たちは次なる時代にどんな針路をとるべきか。
 少子高齢化など、課題先進国の日本で働き暮らす私たちであればこそ、世界に先駆け、誰もが共感できる新たな寄港先を海図上に発見しなくてはなりません。それは同時に、もうひと転がり、時代を前に進めることでもあります。そして、その転がる先に姿を現す新たな時代は、貧困や健康、性差(ジェンダー)など、あらゆる「社会課題」の解決が日本の活力に結びつく持続可能性豊かな時代でなくてはなりません。
 人類の英知を積み重ねた悠久の時代の営みも、労使の対話を基礎とした近現代の営みも、将来に向けてその重要性は色あせるどころか、なお一層輝きを増しています。なぜなら、昨日より今日、今日より明日をより良くしたいという精神が私たちのDNAに深く刻み込まれているからです。
 私が想像する次なる時代の寄港先には「働く」をより慈しむ風が吹いています。さあ、帆をあげましょう。希望の港に向けて。

2018年10月1日の東京新聞・中日新聞夕刊に掲載