紙つぶて

 
2018年9月3日
仕事の土台 仕事の未来

 「あなたからは何も教わらなかった」と女子大生に告げられ、へこみました。もう少し丁寧に説明しましょう。あるパネル討論で、就活に挑むパネリストの彼女が「希望業種の状況やエントリーシートの書き方は勉強した。でも、働くとはどういうことか、働く時にはどんなルールや法律を知っておくべきか、学ぶ意識も機会もなかった」と語りました。さらりと述べたその一言が、私には、あたかも冒頭のように聞こえたのでした。
 若者の健全な雇用を促進するため、企業の有給休暇取得率や離職率など、働く上での情報開示は進んでいます。ただ、それだけでは彼女の発言に応えていません。日本の働き方のアップデートが急がれる今だからこそ、ブラックな働き方の一掃はもちろん、健全な労働を育む『仕事の土台』を整え、若者一人ひとりに届かせたいと思います。
 一方、先日、私は技術専攻の大学生を前に「みんなは、その手で新しい技術の扉を開くに違いない。その扉の先に、人にしかできない仕事、そう『仕事の未来』を見つけてほしい」と激励しました。
 人工知能やロボットと共存し、誰もがいきいきと働く姿とはいかなるものか、日本の発信を世界が見つめています。私たちは「仕事の土台と仕事の未来」を同時につくる時代を迎えています。若者だけにその役割を押し付けるわけにはいきません。みんなの力が必要です。

2018年9月3日の東京新聞・中日新聞夕刊に掲載