紙つぶて

 
2018年8月27日
「かなのう」がつなぐ夢

 第百回を数えた夏の甲子園。秋田県代表の金足農業高校、「かなのう」の全力が光りました。劇的なサヨナラ勝ちに続く校歌斉唱では、チーム全員で全力斉唱。投打の中心の吉田投手の全力投球。伸びやかなキレのあるボールに、口元にのぞく真っ白なマウスピースが爽やかさを倍増させました。決勝戦当日、秋田空港発、大阪行きの臨時便。「金足農業高校の健闘を祈ります」のアナウンスに機内は大盛り上がりだったそうです。
 勝ち進む吉田投手が「全国の『農業高校の代表』としても頑張りたい」。このキレのある一球に、私がバッターなら見送り三振といったところです。昭和四十年当時、全高校のうち、農業、工業、商業など、職業学科のある高校の割合は約四割。それが今では二割弱までに減少。生徒数も普通科の二百四十万人に対し、職業学科はわずか六十万人です。「かなのう」を取り巻く環境を考える時、吉田投手の一言からは、勝利への執念はもちろん、自分は何を代表しているのか、また、何をすべきなのか、その思いの確かさを感じます。
 後継者不足に見舞われる日本の農業。一方、高い農業技術と人工知能など加速する技術革新の融合は、日本の農業の強みを伸ばすと期待されています。「われら拓(ひら)かむ」と甲子園で五回も全力斉唱した「かなのう」の後輩たちが野球で、農業でどんな活躍をするか楽しみです。

2018年8月27日の東京新聞・中日新聞夕刊に掲載