紙つぶて

 
2018年7月23日
路地のエール交換

 自宅前の路地。おしゃべりに夢中の小学校低学年らしき女の子二人組。玄関前を掃きながら「元気だねー」と私。ちょっと驚いた様子でこっちを振り返り「元気ーっ」と、若干音程が微妙な、でも見事なハーモニーを返してくれました。ぶら下げたサッカーボールを小さなつま先でこつこつと蹴りながらやってくる男の子。「今から練習?」と私。ボールから目を離さず、わずかに「うん」。意思表示の仕方はみんなそれぞれです。
 子供たちからすれば、怪しい声掛けおじさん。でも、何が私にそうさせているのか。頼まれた覚えもないのに。つながりが希薄化する日本社会を立て直す? いやいや、それでは後付け感が満載。それとも「良い人」感全開の自分に酔っているか。冷静な分析ですが、自己嫌悪に陥ります。
 小学生のとき、こんなことがありました。映画「ALWAYS三丁目の夕日」とも重なる自宅前の路地。プロ野球の投手をまねて放るボールは決まって隣の会計士宅の塀(トタン張り)に一直線。騒がしさはこの上ないのですが、不思議と「こらーっ」はありませんでした。つつましい中にも人生の輪郭がぼんやり描けた時代。寛容な大人たちからの「無言のエール」が私にも宿ったかもしれません。そして今。不確実な時代を皆で拓くには世代をつなぐ「エール交換」が必要。私に声掛けさせるルーツが解けました。

2018年7月23日の東京新聞・中日新聞夕刊に掲載