”労働組合による未来づくり” トップリーダー座談会(後編)

2022年2月7日

働く場所を守ることは働く人を守ること

山根木 コロナ禍で各方面に痛みが広がっています。その対応は?

芳野 今すぐ始めたいのは、ひとり親家庭への支援です。コロナ禍は、非正規雇用で働く人たち、特に女性を直撃しました。中でもひとり親の困窮は深刻です。仕事を掛け持ちしても、食事に事欠くような世帯が増えています。給付付き税額控除などの政策的対応も必要ですが、連合として、地域で食事や食料を提供していくような直接的・継続的な支援活動もやりたいと思います。

松浦昭彦 連合会長代行

松浦 UAゼンセンにはコロナ禍の直撃を受けて傷んでいる業種が多数あるので、まずはその立て直しが課題です。連合の立場としては、それぞれの構成組織に悩みを聞きながら課題を統合し、政策対応につなげたいと思っています。UAゼンセンでは、産業雇用安定センターと連携して在籍型出向のマッチング事業などを行ってきましたが、やはり大切なのは「働く場所がある」ということ。それはひとり親の支援にもつながるはずです。
もう一つは、社会システムの脆弱性の克服です。行政のデジタル化やセーフティネットの再構築はもちろん、企業のDX推進も進めていく必要があります。中小の賃上げのカギは取引の適正化だと言われますが、同じくらい重要なのは技術革新です。新しいシステムを導入して収益性を高め、人手不足を解消する。そのための適切なコンサルティングが受けられるような支援策を求めていきたいと思います。

川本 コロナ禍で弱い立場の人にしわ寄せがいきましたが、労働組合にできることは少なくありません。全国一斉休校で非正規雇用の学校用務員や給食調理員が賃金カットや解雇の危機に直面しましたが、自治労はただちに厚労省・総務省・文科省に要請に行き、雇用維持を確認しました。連合の役割は、こうした行動を組合員だけでなく、すべての労働者に広げていくことだと思います。

清水秀行 連合事務局長

清水 コロナ禍では、命とくらしを守るセーフティネットや社会保障制度が十分でないことを痛感しました。その再構築に向けた重要な視点は、SDGsにも示されている「持続可能な社会」です。芳野会長が提起されたひとり親家庭への支援は、まさに未来への投資であり、持続可能な社会の基盤です。政府が「子ども家庭庁」の設置を進めていますが、その具体的な政策立案には、連合としてきちんと参画していきたいと思います。

山根木 連合運動のトップリーダーとして、これから取り組みたいことは?

松浦 なによりも1000万連合に向けた組織拡大です。労働組合活動の基本は、職場の声を聞き、労働条件や生活を良くしていくこと。そのことがもっと認識されるような運動をつくり仲間を増やしていきたいと思います。

川本 エッセンシャルワーカーの多くは最低賃金に近い待遇で働いています。公務では法律の壁があって同一労働同一賃金もままならないのですが、働きに見合った賃金を掲げて、連合としてあらゆる政策を動員していかなければならないと思います。

清水 コロナ禍で、テレワークが広がり、ワーク・ライフ・バランスが重視されるようになりました。政府の「働き方改革」で実現した、罰則付時間外労働規制や同一労働同一賃金などの法整備を職場で実現する取り組みも途上にあります。それらを含めて「働く」ことの未来を考え、新しい働き方をつくっていきたいと思います。

 

オール連合型運動の実現に向けて

山根木 そのためにも連合の組織力の発揮が必要です。

松浦 「核兵器廃絶1000万署名」は、連合本部が構成組織や地方連合会に要請し、単組の協力を得て目標に近い署名を集めています。連合本部、構成組織、地方連合会、単組が、相互に連関して一つの行動に取り組めば、一体感が生まれるし、700万連合の組織力を実感できる。そのような「つながる運動」を、労働条件の課題をテーマにつくれないかと思っています。例えば、賃金はこの20年上がらず、その水準は先進国で最下位レベル。今後、現役世代人口が急減する中にあって、社会保障制度を維持していくには、生産性向上と賃金上昇が不可欠であり、また、社会保険料の増加に対応するには、少なくとも2%程度のベアを15年続ける必要があると考えています。「中期的な賃上げ」もテーマになるかもしれません。

芳野友子 連合会長

芳野 いろいろな切口がありそうですね。私は、連合東京女性委員会で長く活動してきましたが、かつては頻繁に政策実現行動を展開していました。例えば、選択的夫婦別氏制度については、地方議会での意見書採択を求めて全会派に要請を行い、本部主催地方連合代表者会議で地方選出の国会議員を回りました。実際に行動を起こすことで、自分でも勉強するし、持ち帰って職場でも活動するようになる。議員要請を行うと、政治にも関心を持てるようになる。でも、コロナ前から、そういう行動が少なくなって、連合運動が見えにくくなっているように思います。心機一転、もう一度政策実現行動をやりましょう。

川本淳 連合会長代行

川本 自治労では、今も、医療や清掃など職種ごとに要求をまとめて、関係省庁などに要請行動を行っています。連合の政策・制度要求は、非常に幅が広くて、統一的な行動は難しい面がありますが、みんなが一緒に取り組めることが必ずあるはずです。

清水 連合結成30年の「連合ビジョン」のスローガンは「私たちが未来を変える」でした。未来づくりのポイントになる課題を見つけ出し運動をつくっていくことが必要ですね。

山根木 社会への発信力強化も欠かせません。

松浦 若い世代にはSNSによる発信が有効ですが、マスコミ報道を重視する世代も健在です。連合が社会的に影響力のある運動を展開すれば、マスコミは取り上げざるを得ない。そういう意味でマスコミを通じた発信も強化すべきではないでしょうか。

川本 「れんごうの日」の一斉行動の主体は地方連合会。地方紙やローカルテレビ局は、その取り組みを大きく取り上げてくれます。テーマを明確にして、全国キャラバンを展開すれば、地方における連合の存在感は必ず高まると思います。

芳野 政策実現に向けた行動が、組織外への発信にもつながるということですね。

清水 思い出されるのは、リーマンショックによる急激な雇用悪化に対して、連合が呼びかけた「雇用と就労・自立支援カンパ(トブ太カンパ)」です。日教組では、そこに子ども支援を絡めて「子ども救援カンパ」に取り組み、その運動を通じて出会ったNPOとは、今もつながっています。
そのような運動をつくり上げていくためにも、まずこれからの運動について連合構成組織の代表と語り合うこと。改めて「フェイス・トゥ・フェイス」の重要性が認識されていますが、私はそれに加えて、心を込めて言葉を伝えるという「ハート・トゥ・ハート」を大切にしたい。組織外への発信力を高めるためにも、組織内の対話は欠かせません。歴代の会長・事務局長のように、対話活動ができないかと思っています。

山根木 実は地方連合会からもリクエストがきています。

松浦 それは絶対にやったほうがいい。議題ありきの会議ではなく、フリー討論で意見を出し合えば、みんなで取り組めるテーマが見つかるはずです。

山根木 この2年、新しい運動のあり方を試行錯誤してきました。組織内の対話をさらに進めながら、リアルとオンラインを融合させた、あらゆる層の参加による社会運動を前進させていきます。

(進行)山根木晴久 連合副事務局長

 

※この記事は、連合が企画・編集する「月刊連合1・2月合併号」をWEB用に再編集したものです。

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