2022春季生活闘争まとめ ~評価と課題~

2022年8月25日

2022春季生活闘争まとめ ~評価と課題~

6月末時点の最終回答集計結果を踏まえ、「2022春季生活闘争まとめ」をとりまとめる。引き続き、2023春季生活闘争の方針策定に向けた議論を進めていく。

Ⅰ.評価

1.全体的な受け止め
〇産業による違いはあるものの、2,021組合・39.9%が賃上げを獲得し、割合では2014闘争に次いで高い数字となったことは評価できる。コロナ禍の影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻や燃料・資材価格の高騰等があった中での労使交渉となったが、中長期的視点を持って「人への投資」と月例賃金にこだわり、「働きの価値に見合った賃金水準」を意識して粘り強く交渉した結果であり、労働組合が社会を動かしていく「けん引役」として一定の役割を果たすことができたと受け止める。

〇今次闘争では、「未来づくり春闘」を掲げ、経済の後追いではなく経済・社会の活力の原動力となる「人への投資」を積極的に求めた。これに対し、経団連は「経営労働政策特別委員会報告」の中で一定の理解を示し、個別の交渉においても足下および将来の人材の確保・定着が焦点になるなど、問題意識を共有し認識が深まった労使も少なくないと見られる。20年以上にわたるデフレ経済から脱却し「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けた足掛かりをつくるとともに、集団的労使関係の深化・拡大につながる春季生活闘争となった。

〇状況が厳しい産業では全体として厳しい回答となっているが、デフレ経済下で傷んだ労働条件の回復をはかり「人への投資」の必要性などについて労使の認識を深めることができた組合もある。今次闘争を一つのステップとして、中期的に賃金引上げをめざす必要がある。

 

2.格差是正は進んだか
〇中小組合の賃上げについて、賃上げ分を分離した集計を開始した2015闘争以降で額・率ともに最も高くなったこと、定昇込みの金額の分布でみても上方にシフトしていることなど、全体として健闘したといえる。今後、労働組合の賃金調査や公的統計などで賃上げ後の個別賃金水準を把握し、規模間格差の是正について検証する必要がある。

〇有期・短時間・契約等労働者の賃上げは一般組合員を上回り、格差是正に向けて一歩前進した。「働きの価値に見合った賃金水準」をめざし、引き続き取り組む必要がある。

〇改正女性活躍推進法にもとづく指針を踏まえ、各組合で男女別の賃金実態の把握と分析に取り組んだ。取り組み状況を踏まえ、次年度の取り組みを検討する必要がある。

 

3.実質賃金の反転はできたか
〇毎月勤労統計調査の2021年度分結果確報によれば、所定内賃金は前年度比0.4%増(うち一般労働者0.5%増、パートタイム労働者0.9%増)、現金給与総額も同0.7%増であった。一方、2021年度の消費者物価指数は前年度比0.1%の上昇(総合指数)であったが、2021年5月以降はほぼ一貫して上昇を続け、2022年に入ってからはその上昇幅が拡大している。そのため物価を加味した実質では、所定内賃金は2月分から、現金給与総額では4月分から、前年度比マイナスで推移している。継続的な賃上げにより、「実質賃金の長期低下傾向を反転させる」ことをめざした方針の実現をはかる必要がある。

 

4.働き方の改善は進んだか
〇働き方の改善についても、産業・企業の特性を踏まえた要求と交渉が展開された。長時間労働の是正や労働時間の短縮、有期・短時間・契約等労働者の雇用安定と処遇改善、60歳以降の雇用確保と処遇改善、男性の育児休業取得促進など、これまで以上に様々な取り組みが行われ、一定の前進がはかられた。引き続き、「すべての労働者の立場にたった働き方」の改善に取り組む必要がある。

 

Ⅱ.課題

1.「人への投資」と月例賃金の改善の継続
〇超少子・高齢化により生産年齢人口の減少が不可避である中、将来にわたり人材を確保・定着させ、社会全体の生産性を高めていくには、継続的な「人への投資」が必要である。

〇国際的に見劣りのする日本の賃金水準、マクロの生産性と賃金の乖離、実質賃金の長期低下傾向、格差是正などの課題を解決するには、労働条件の根幹である月例賃金にこだわり、情勢の変化を踏まえた適切な賃上げを継続的に実現することが必要である。

 

2.情勢の見極めと「未来づくり春闘」
〇2023春季生活闘争をとりまく情勢は、国際情勢やコロナ禍の動向、輸入物価の上昇などによって大きく変化している。情勢を冷静に見極めつつ、政労使で中期的・マクロ的な視点から問題意識を共有し、国民経済を安定的な成長軌道に乗せ、デフレ経済に後戻りさせない状況をつくり、定着させていかなければならない。

〇経済の後追いではなく未来に向けて、経済・社会の活力の原動力となる「人への投資」を行うとともに、新しい技術の導入やカーボンニュートラルなど未来への投資および「公正な移行」にも取り組んでいく必要がある。政労使で認識を深め産業構造の変化に対応するとともに、生産性三原則を基本に雇用の安定と公正な成果分配を実現し、政策課題の取り組みとあわせ、「働くことを軸とする安心社会」に向けて前進をはかっていく必要がある。

〇企業規模間、雇用形態間、男女間の格差是正について、さらに前進させる必要がある。

 

3.基盤整備の取り組み強化

〇今次闘争における「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」の取り組みをさらに強化し、中小企業や有期・短時間・契約等で働く者の賃金を「働きの価値に見合った水準」に引き上げることをめざす。

〇そのためには、自らの賃金実態の把握と社会的な比較指標の整備が不可欠である。構成組織は、めざすべき賃金水準の設定などに取り組む。同時に、地方連合会・連合本部の地域ミニマム運動と連携しつつ、賃金実態を把握できていない組合の調査・分析・課題解決の取り組みを支援する。

 

4.共闘連絡会議の持ち方の工夫など
〇5つの部門別共闘連絡会議(金属、化学・食品・製造等、流通・サービス・金融、インフラ・公益、交通・運輸)は、2022春季生活闘争の枠組みにおいて、2023春季生活闘争方針策定に向けた情報・意見交換の場として活用する。

〇今次闘争の評価と課題を踏まえ「未来づくり春闘」をみんなでさらに前進させるべく、厳しい産業状況にある構成組織に配慮しつつ2023春季生活闘争の検討を進める。

その他データはこちら